破壊屋ブログ

ネタ系映画ブログです。管理人はこの人→http://hakaiya.com/giccho

最高に気持ちいい邦画

珍しく宣伝記事。今週発売の東京グラフティ「最高に気持ちいい邦画BEST75!!」に俺も参加しています。

http://grfft.com/uploads/contents/img_01_H1.jpg

「東京グラフティなんてオシャレな雑誌が選ぶ気持ちいい邦画って何だろう…」
と思っていたら、こんな邦画が選ばれていました↓

  • 仁義なき戦い
  • ゆきゆきて、神軍
  • 太陽を盗んだ男
  • GONIN

「それ映画秘宝じゃないの?確かにどれも気持ちいい邦画だけど、その気持ちよさって覚せい剤的な気持ちよさだろ!」
とツッコミ入れたくなるラインナップでした。いや、他のラインナップはちゃんとしていますよ。皆さんも是非確認してください。

ちなみに俺が選んだのはファンタジー邦画です。ファンタジー邦画ということで
「大林宣彦と相米慎二は外せないかなー」
と思っていたのですが、東京グラフティ編集部からは
「あなたが本当に好きな映画をお選びください」
という依頼でした。

大林宣彦は苦手なので外し、相米慎二もDVDにプレミアがついていたのでので外しました(簡単に入手できる映画にしたかった)。だから自分が本当に好きなファンタジー邦画を3本選びました。ちなみに他の人は大林宣彦や相米慎二を選んでいたので外して良かった。やっぱり大林宣彦と相米慎二は気持ちの良い邦画を作り続けてきたんだなぁ。

ハロウィン2016雑感

今年のハロウィンは29日~31日と毎日10時間は外出し続けてハロウィンを楽しんだ。そこで雑感。

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ハロウィンで商売に悪影響

渋谷ハロウィンだと俺はバーをハシゴする。例年だったらバー内の客も仮装で盛り上がっているんだけど、今年は驚くほど少ない!二軒目で店員さんに訪ねたところ歩行者天国が原因とのこと。そりゃそうだ。歩行者天国でみんなで楽しめるのに、わざわざバーに入る必要はない。店員さんは
「歩行者天国で儲かるのはコンビニと格安居酒屋だけ」
とも言っていた。歩行者天国を見たら、みんなコンビニで買ったお酒を飲んでいた。来年以降は他の自治体みたいにハロウィンで地域が儲かる形になればいいんだけどね。

中国人と台湾人

今年の渋谷ハロウィンは中国人と台湾人が多かった!彼らは仮装をしておらず、高級カメラでひたすら仮装客を撮っていた。そして意外なことにマナーがめっちゃ良い
仮装している俺は中国人や台湾人に声をかけられすぎて移動もできない状態だった。そういう時はちょっと無視したかったけど、彼らはたどたどしい敬語で礼儀正しくお願いしてくるので、ついつい応えてしまう。

常連コスプレ

ハロウィンを楽しむ人間には二種類いる。

  • 毎年仮装を変える人
  • 毎年同じ仮装な人

俺は後者だ。10年以上ハロウィンやっていると後者タイプは常連化するため、常連同士で再会できると
「あ、今年もお会いしましたね」
って会話が出て来る。俺たちは長年ハロウィンやっている戦友なのだ。お互いの素顔は知らないけどね。

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(基本的にヴェノムの格好する。子どもと会うときだけは怖がらせないためにスパイダーマン)

川崎ハロウィン

コンビニ本の『ハロウィン入門書』では「最高レベルの仮装が要求される」とまで書かれている川崎ハロウィン。ハロウィン嫌いの人でも映画好きなら観に行ったほうがいい。
例えば今年は『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』のネタバレコスプレがいた。また『スーサイド・スクワッド』のハーレクインとジョーカーが多かった。カタナもいたので記念写真。
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なんとマイナーキャラのキラークロックのコスプレまでいた。こうなったらスーサイド・スクワッド全員を探して写真撮りたかったけど、リック・フラッグとスリップノットはいても気が付かないよね。

世間の空気

世間の
「ハロウィンなんて嫌だ!」
という空気が一番強かったのは二年前で、今年は益々ハロウィンが受け入れられて来たと思う。仮設更衣室やゴミ拾いなども普及してきた。俺も
「もう仮装姿で街歩いても大丈夫な時代だろ」
と判断して、今年の俺は有料更衣室を使わずについに自宅から仮装することにした。マスク脱げばただのオッサンだし。

ただ俺が行こうと思っていた原宿や六本木のハロウィンパーティーが事前に中止になっていた。たぶんチケットが売れなかったり、公道か会場の使用許可が出なかったんだと思う。みんながハロウィンに手を出してきたので、試行錯誤の状態になってきた。

アンチハロウィン

アンチハロウィンの意見、二年前の時は
「ハロウィンは宗教イベントのはず!」
ってのが多かったんだけど、今年は
「ハロウィンは子どものためのイベントのはず!」
ってのが多かった。アンチハロウィンの中でもハロウィンの意識が変わってきている。

横浜ハロウィン

今年は横浜アリーナで大規模ハロウィンパーティーがあったので行ったんだけど、ファッションショーを模した芸能人パーティーで95%が女性客。ブースは美容関係だらけで、仮装客も少ない。男性トイレは笑えるほどガラガラ。俺のお目当てはDJダイノジのショーだったんだけど、こんなデカい状況でのDJダイノジは初めて。客の目当ては次に出て来る佐藤健なんだけど、そんなアウェイの中でDJダイノジが客をドッカンドッカンに盛り上げていた。

ハロウィンのトラブル

エグザイル系事務所のLDHがやっているハロウィンパーティーがあるんだけど、現在そのGOLD TICKETが払い戻し中である。公式サイトによると
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本イベント運営に関して事実確認を行わせていただきましたところ、 GOLD TICKETの特典の一部であります「グッズ販売専用レーン」「Bar専用レーン」が設営されていなかった

って書いてある。まさかの設営忘れ!

ちなみにこのハロウィンパーティー、他にもトラブルが続出したらしく、一番笑ったのは開場22時で開演も同時刻。しかも7000人以上いる客が整理番号順に10人づつ入場だったため、お目当てのアーティストが終わってから入場できる人が続出したらしい。
matome.naver.jp

今年のハロウィン最大級のトラブルだと思うんだけど、一切ニュースになっていない。さすがレコード大賞を買収したLDH、マスコミ対策は万全ですね!

地味で予想外のミステリー『ディスクローザー』

超地味なミステリー映画『ディスクローザー』を観た。セクハラを題材にしたデミ・ムーアの『ディスクロージャー』とは違う。今年日本で公開された2013年のオーストラリア映画だ。主演のジョエル・エドガートンジェイ・コートニーがハリウッドで活躍中なので、日本でも公開されたのだろう*1

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ジェイ・コートニーは『ターミネーター 新起動』の新カイルや、『ダイ・ハード5』のマクレーン刑事ジュニア、他にも『スーサイド・スクワッド(キャプテン・ブーメラン)』やアメリカのティーン女子に人気な『ダイバージェント』シリーズに出演するなどやたらゴリ押しされているハリウッドの山崎賢人だ。

設定

上記のポスターだと三人の男が陰謀を競うミステリーのように感じるけど、実際は

という地味なお話。と思ったら予想外のクライマックスとオチがあったので、今回はその解説。


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このシーンで主人公は正直に「少し飲酒している」と答える。調べてみてたら、オーストラリアは少量なら酒飲んでも運転できるらしい。

序盤

  • 主人公は麻薬組織を壊滅まで追い込んでいる優秀な刑事
  • 飲み会の帰りにホロ酔い気分で車を運転していると、隣の車線を走っていた自転車が軽く接触して転倒した
  • 自転車に乗っていた少年は意識が無い。主人公は救急車を呼ぶ。


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軽い接触だったので、車にも何も痕が残っていない。


中盤

  • 現場に駆けつけた上司は飲酒検知器の結果を捏造する。
  • 主人公もひき逃げの目撃情報をでっち上げてしまう。
  • 自転車に乗っていた少年はインド系の移民で、意識不明のまま死んでしまった。
  • 誰も主人公を疑わないが、若手刑事が疑いを持ち始める。若手刑事と上司が対立する。
  • その一方で主人公は自分の罪に耐えきれない


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一瞬の沈黙を見逃さない若手刑事。怖い。


加害者側の事情

飲酒運転に厳しい日本から観ればとんでもない話だ。だけどこの映画は加害者側にも同情できる要素が用意されている。

  • 主人公がいないと麻薬組織が野放しになる
  • 主人公がいないと家族がバラバラになる
  • 捏造した上司は過去に息子を交通事故で亡くしている。だが上司は罪の意識で発狂した加害者の姿を見ているので、交通事故の加害者を攻める気になれない

告解

こういう「白人の主人公がマイノリティに対して罪を犯す」という映画はよくあるパターンだ。オチはたいていこんな感じ↓

クライマックス、主人公にとって最も都合の悪いタイミングで、白人の主人公があえて自分の罪を告白。主人公は辛い贖罪の道を歩むが、人間としての正しさを取り戻したのだ…完。

これは罪を告白する「告解」という概念のあるキリスト教圏ならではのパターンだ。なので俺は『ディスクローザー』もそういうパターンの映画だと思いこんでいた。ところが予想外の展開を見せるのだ。ラストまでネタバレ。

終盤

  • 罪の意識に耐えられなくなった主人公は、上司と若手刑事を呼び出す。
  • 主人公は出頭して自供すると伝える。
  • 自暴自棄になった上司は、インド系の女性に惚れている若手刑事に「肌が黒い女とファックすると性病移されるぞ!」と人種差別発言する。
  • ブチ切れた若手刑事は、上司をヘッドロックする。
  • 上司は発作を起こして廃人になる
  • 主人公は若手刑事にヘッドロックの件は黙っておくよ」と伝える。
  • 主人公はインド系の母親の元に行き「俺がやった」と伝える。
  • 警察が集まるが、母親は「あの人は息子を介抱した人です」と伝える。



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若手刑事が主人公を迎えに来たところでラストシーン

解説

ツッコミたいところが3つある。
まずは、ほとんど不慮の事故とはいえ母親は息子を失っているじゃん!何で許すんだよ!と言いたいけど、これも前述の「告解」の概念だと思う。告解で許しを与えることができるのは神の代理人のみ。インド系の母親をそのような象徴として描いている。マイノリティが白人を救うのもよくあるパターンなのだ。

もう一つは廃人になってしまったヘッドロック事件だけど、欧米の映画界では人種差別する人は死んでOKというのが常識なので、むしろ廃人程度で済んだとも言える。

そしてラストシーンはどういう意味なんだよ!と思うけど、車の上に載っているコーヒーカップが答えだ。この映画では「自分のコップを渡す」行動に「相棒として繋がる」という意味がある。劇中にある若手刑事が上司からのコップを拒否するシーンもそういう意味だ。だから若手刑事が主人公のコップを用意するラストシーンは、お互いの罪を共有するという意味なのだろう。


最初から最後まで地味だったけど、予想外の展開に驚かされた作品だった。

*1:未体験ゾーンの映画たち

『L.A.コンフィデンシャル』のわかりにくい点を解説

「90年代最高のアメリカ映画は?」と聞かれたら、一番多い答えは『ショーシャンクの空に』かな。俺の場合は『L.A.コンフィデンシャル』だ*1。大学生のときに劇場で観て衝撃を受けて、原作も読むほどハマってしまった。

L.A.コンフィデンシャル 製作10周年記念 [DVD]


でも『L.A.コンフィデンシャル』の公開当時の感想には

  • 普通の刑事ドラマじゃない?
  • 物語が複雑すぎてわからない!

というのが多かった。まあその通りだと思う。

L.A.コンフィデンシャル』の物語はとにかく複雑だ。どれくらい複雑かというと、この映画を観た人に劇中の強盗事件の真犯人は結局誰だった?と聞いても答えられる人は少ないと思う。ググってネタバレ解説サイトを何個か読んだけど、どれも真犯人のことは無視していた。

最近『L.A.コンフィデンシャル』のカーティス・ハンソン監督が死んでしまったので、久しぶりに『L.A.コンフィデンシャル』を再見した。せっかくなのでこの映画の物語を時系列で解説しよう。時系列で解説するため、すぐネタバレしちゃうので未見の人は気をつけて。

和名表

映画をわかりやすく説明するために、登場人物には俺が勝手につけた和名を使います。

正しい役名 演じた人 和名
ホワイト刑事 ラッセル・クロウ 暴力刑事
ヴィンセンス刑事 ケビン・スペイシー 汚職刑事
エクスリー刑事 ガイ・ピアース 出世刑事
ステンスランド刑事 グレアム・ベッケル 悪徳刑事
シド ダニー・デヴィート マスコミ
ピアス デヴィッド・ストラザーン 億万長者
マット サイモン・ベイカー イケメン俳優
スーザン アンバー・スミス リタ・ヘイワースに似た娼婦
パオロ・セガンティ アンバー・スミス 用心棒
エリス検事 ロン・リフキン 検事


時系列解説

血のクリスマス事件

  • 映画のオープニングはクリスマス。
  • 主人公の一人:暴力刑事のホワイトは酒を買いに行く途中で以下のメンツと会う。
  • 主人公の一人:汚職刑事はマスコミと組んでイケメン俳優を逮捕する。そしてイケメン俳優の手帳から「白ユリの館」の名刺を手に入れる。
  • 警察官たちがメキシコ人をリンチにする「血のクリスマス」事件が勃発する。
  • 主人公の一人:出世刑事はリンチに関わった警察官たちを告発してクビにする。おかげで彼は出世したが署内で嫌われて孤立する。
わかりにくいポイント


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バズが黒幕の一人なのに序盤しか出てこないのがわかりにくいよね。


マフィア 対 警察

  • ミッキー・コーエン(実在のマフィア)が逮捕され、ロサンゼルスの縄張り争いが激化する。
  • ダドリー警部は地方からロサンジェルスにやってくるマフィアたちをリンチにすることでロサンゼルスを守ろうとする。リンチ担当は暴力刑事。
  • だがダドリー警部の真の目的はマフィアの商売を全て自分のモノにすることだった。
  • 殺し屋がマフィアの幹部を殺しまくる。殺し屋の正体はダドリー警部の命令を受けた暗殺部隊だ。
わかりにくいポイント


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マフィアの幹部を殺しまくっている暗殺部隊の正体がはっきり描かれない。悪徳刑事、バズ、ブルーニング刑事、カーライル刑事の4人が暗殺部隊です(他にもいる)。ブルーニング刑事、カーライル刑事とはこの画像の左の二名。

マフィアのヘロイン

  • 暗殺部隊の一人のバズがマフィアのヘロインを奪う。
  • 悪徳刑事とリタ・ヘイワースに似た娼婦は恋人同士だった。彼女の家で悪徳刑事とバズはヘロインを巡って争い、悪徳刑事はバスを殺す。
わかりにくいポイント


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ミッキー・コーエン→バズ→悪徳刑事→ダドリー警部の順序でヘロインの持ち主が変わっているのもわかりにくい。このセリフだけでバズと悪徳刑事の関係に気が付かなきゃいけないのも初見では厳しい。


ナイト・アウルの虐殺

  • 茶店ナイト・アウルで3人組の強盗が客を皆殺しにする。被害者には悪徳刑事とリタ・ヘイワースに似た娼婦がいた。
  • 真犯人はダドリーの部下のブルーニング刑事とカーライル刑事。強盗に見せかけて悪徳刑事を殺してヘロインを奪うのが目的だった。
  • ダドリー警部が用意した冤罪容疑者は黒人のチンピラ三人組だ。
わかりにくいポイント


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ブルーニング刑事とカーライル刑事がナイト・アウルの真犯人。でも各種ネタバレサイトですら、このことは書いてない。


ナイト・アウルの虐殺の捜査(汚職刑事)

  • 汚職刑事は独自の捜査でチンピラ三人組の居場所を知る。
  • ブルーニング刑事とカーライル刑事はチンピラ三人組を冤罪にハメるために、彼らの車にナイト・アウル事件の証拠を置く。
  • ブルーニング刑事とカーライル刑事はチンピラ三人組を殺そうとするが、そこに汚職刑事が到着してしまう。チンピラ三人組は普通に逮捕される。

ナイト・アウルの虐殺の捜査(暴力刑事)

  • 暴力刑事は、クリスマスの夜に犠牲者のリタ・ヘイワースに似た娼婦を見かけたことを思い出した。彼女と一緒にいた億万長者を尋問する。
  • 億万長者の正体は女優に似た娼婦を集めた売春組織「白ユリの館」のオーナーだった。
  • 暴力刑事は億万長者の用心棒と会う。

ナイト・アウルの虐殺の捜査(出世刑事)

  • チンピラ三人組にレイプされていた被害者が「ナイト・アウル事件のときにチンピラ三人組たちは外出していた」と証言した。
  • チンピラ三人組は逃走し、銃撃戦になる。カーライル刑事は殉職、容疑者たちを射殺した出世刑事は英雄となる。
  • 死んだチンピラ三人組がナイト・アウルの容疑者であることが確定。ナイト・アウルの虐殺事件は解決した。
わかりにくいポイント


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ここで真犯人の一人、カーライル刑事が死んでいるんだけど、俺も「あ、カーライルここで死んだのか」と最近気がついた


億万長者がロスを支配する

  • 億万長者はリンとマスコミを使って、政治家の淫行写真を撮る。
  • 億万長者はその淫行写真を使って政治家を脅迫。高速道路建設公共工事を牛耳ることに成功した。
わかりにくいポイント


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億万長者、警察、マスコミがグルになって政治家をコントロールして公共事業を牛耳っている。


イケメン俳優の末路

  • 汚職刑事は政治家のパーティでイケメン俳優と再開する。イケメン俳優を誘導尋問して「白ユリの館」の元締めが億万長者であることを知る。
  • 汚職刑事とマスコミはイケメン俳優を騙して、ゲイの検事のスキャンダル写真を撮ろうとする。
  • 億万長者はスキャンダル写真を使ってゲイの検事を脅迫する。それをうっかり聞いたイケメン俳優は殺される。
  • 汚職刑事は行きつけのバーで自分の汚職っぷりに嫌気が指した。彼はイケメン俳優を止めようとするが既に死体になっていた。

頑張る暴力刑事

  • ブルーニング刑事と暴力刑事は相変わらずマフィアをリンチにかける。
  • 暴力刑事はナイト・アウルの真犯人がチンピラ三人組でないと気がついていた。しかし捜査せずにマフィアをリンチしてばっかりの自分に嫌気が指す。
  • 暴力刑事は娼婦リンに「あなたもやれば出来るわ」と励まされて、ナイト・アウルの現場写真を再度検証する。

真相に近づく(暴力刑事)

  • 暴力刑事は喫茶店で悪徳刑事が真っ先に殺されていることに気がつく。
  • さらに喫茶店の食べ物の位置から悪徳刑事とリタ・ヘイワースに似た娼婦が恋人同士だったことに気づく。
  • 暴力刑事はリタ・ヘイワースに似た娼婦の家に行き、バズの死体を発見する。
  • 暴力刑事は億万長者の用心棒を拷問してバズがヘロインを持っていたことを知る。
わかりにくいポイント


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この映画で観客が一番混乱する原因は、重要人物のバズが死体になっているので、重要人物っぷりがイマイチわからないということ。


真相に近づく(出世刑事)

  • レイプ事件の被害者が「証言はレイプ犯たちを殺させるためのでっち上げ」と出世刑事に伝える。
  • 真犯人が別にいる可能性を疑った出世刑事はナイト・アウルの虐殺事件を再び捜査しようとする。
  • 出世刑事は汚職刑事にナイト・アウル捜査の助っ人を頼む。
  • 汚職刑事は出世刑事が自分の手柄をぶち壊そうとするのが理解できない。
  • 出世刑事はロロ・トマシについて語る。
逆にわかりやすいポイント


ここでは解説しないけど「ロロ・トマシ」は複雑な物語を一気にシンプルにする見事なトリック。

出世刑事と汚職刑事が手を組む

  • 汚職刑事は出世刑事に「白ユリの館」に関する情報を全て渡す。
  • 二人は用心棒を尋問しようとして、うっかりラナ・ターナー(実在の人物)を…。
  • 二人は億万長者を尋問する。空振りに終わるが、警戒した億万長者はマスコミに連絡する。
  • 出世刑事は娼婦リンの誘惑に引っかかり、セックスする。これをマスコミに撮られる。


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劇中何度も登場している用心棒のジョニー・ストンパナートだけど、彼が事件にあまり関係ないのもわかりにくいポイント。実はジョニー・ストンパナートは実在の人物。ギャングの用心棒だが、ラナ・ターナーの愛人でもある。この知識が無いと「誰これ?」状態になる。


真相に近づく(汚職刑事)

  • 汚職刑事は警察署内の12年前の記録を調べて悪徳刑事とバズが手を組んでいることに気づく。
  • 汚職刑事は出世刑事をバーで待つが、出世刑事は女と遊んでいる。
  • しょうがないので汚職刑事は悪徳刑事とバズの上司だったダドリー警部に会いに行く。
  • ロロ・トマシが登場する。
わかりにくいポイント


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12年前の記録がダドリー警部に繋がる記録だ。これがダドリー警部がわざわざ手を汚した動機。


ロロ・トマシの暗躍

  • ダドリー警部は12年前の記録を盗んで処分する。
  • ダドリー警部は暴力刑事にマスコミを拷問させる。でもこれはマスコミとダドリー警部の演技で、暴力刑事が娼婦リンを出世刑事に寝取られたことを気づかせるのが目的。
  • ダドリー警部とブリーニング刑事はマスコミを殺す。
わかりにくいポイント


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ダドリー警部が12年前の記録が盗んで処分しているのは、初見ではまずわからない。


暴力刑事と出世刑事が組む

  • 12年前の記録は無くなったが、出世刑事は過去の業務日報を調べることでダドリー警部、悪徳刑事、バズがグルだったことに気づく。
  • 12年前、彼らは億万長者のピアスを取り調べておきながら不起訴にする。そしてこのときにピアスやマスコミともグルになった。
  • 暴力刑事は悪徳刑事とバズの関係を出世刑事に伝える。
  • 出世刑事は汚職刑事が持っていた情報を暴力刑事に伝える。
  • 全ての情報が出揃い、彼らは組む。
わかりにくいポイント


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事件の真相である「刑事たちがグルになってマフィア化していた」という点にもうちょっと伏線貼って欲しかった…。でもロス市警とマフィアの癒着は有名な実話なので伏線がいらないのかも。


クライマックスへ

  • ゲイの検事が暴力刑事の拷問によって全ての情報を喋る。
  • 億万長者もダドリー警部に殺される。これで全てがダドリー警部のものになる。
  • そしてクライマックスへ…。
わかりにくいポイント


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もう一人の真犯人:ブルーニング刑事は暴力刑事に撃たれて死ぬ。クライマックスのブルーニング刑事は一番ハッキリ顔が写っている画像でこの程度。リピートしないと気がつくのは無理。

最後に

この映画のわかりにくさは欠点では無いと思う。情報が極端に多いからこそ、3人の刑事がそれぞれの情報を持ち寄るシーンにミステリー的な興奮が発生する。そもそもこの映画を理解するために今回解説したポイントを抑える必要はない。理解すべきなのは三人の刑事の行動原理だ。

  • 出世刑事:出世をふいにしても真犯人を捕まえたい→やっぱり出世のために全て利用してやる
  • 汚職刑事:汚職に疲れた→ちゃんと捜査することで償いたい
  • 暴力刑事:マフィアをリンチするのが嫌だ、俺も捜査したい→やっぱりぶっ殺してやる!

名演技を見せる三人の行動が少しづつ真相に近づいていく。これが90年代最高クラスのアメリカ映画たる所以だ。



アウトバーン 組織犯罪対策課 八神瑛子 (幻冬舎文庫)
L.A.コンフィデンシャル』の汚職刑事と暴力刑事を足して割らなかった女性警察官が主人公の作品。米倉涼子で映像化された。

*1:IMDBの映画史上最高の100本にもランクインしている

あぶない刑事はどれくらい危ないのか?

人間の危なさは数字で表現できると思う。どうやって表現するかというとキルカウントだ。というわけであぶない刑事全映画シリーズの殺害人数を数えてみた。

さらば あぶない刑事(通常版) [DVD]


これ、以前ブートレグの企画でやったネタなんだけど、最新作の『さらば、あぶない刑事』が公開されてキルカウントが増えたので追加。

あぶない刑事 殺害人数1人

あぶない刑事
タカとユージが殺すのは犯人一人のみ。

またまたあぶない刑事 殺害人数5人

またまたあぶない刑事 [DVD]

重要な証人であるラスボスをつい殺してしまうが、タカとユージが「まあいいか」と笑うのがラストシーン。

もっともあぶない刑事 殺害人数4人

もっともあぶない刑事 [DVD]
タカとユージが車を狙撃したら、うっかり運転手を殺してしまって、タカとユージが責任をなすりつけ合うシーンがある*1

あぶない刑事 リターンズ 殺害人数9人

あぶない刑事 リターンズ [DVD]
敵がテロリストグループなので殺害人数も増えた。タカとユージが銀行強盗するシーンもあり。

あぶない刑事 フォーエバー 殺害人数10人

あぶない刑事 フォーエヴァーTHE MOVIE [DVD]

劇中出てくる犯罪者を演じているのが庵野秀明!『シン・ゴジラ』ならぬ『シン・あぶない刑事』もやってくれないかしら。
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まだまだあぶない刑事 フェーエバー 殺害人数12人

まだまだあぶない刑事 デラックス [DVD]
女性を殺害する最初で最後の作品。

さらば、あぶない刑事 殺害人数2人

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銃撃シーンは派手だけど、ハッキリと殺すシーンが無い。明確な射殺を避けるようになったのは時代の変化か。ただし敵が凶悪マフィアなので死体の数は多い。



ちなみに「あぶない刑事」のタイトルの意味は、テレビドラマ版の『あぶない刑事』第一話にある。第一話の犯人は20歳直前の少年だったが、タカとユージは少年相手でも容赦しそうにない。ヒロインの浅野温子は少年課なので犯人を守りたい。そこで浅野温子がタカとユージを「あ・ぶ・な・い・デ・カ」とからかう。これがタイトルの由来だ。

*1:勘違いだと後に判明

三重構造のカルチャーギャップ『キンダガートン・コップ2』

キンダガートン・コップ 2 [DVD]

幼稚園に刑事再び!

キンダガートン・コップ』と言えば1990年に作られた大ヒットコメディ映画だ。アーノルド・シュワルツェネッガー演じるコワモテ刑事が、幼稚園に教師として潜入捜査。凶悪犯相手でも平然としているシュワちゃんが、園児にタジタジになる姿が面白い。

それが26年後の今になって続編が作られた。主役はドルフ・ラングレンに交代、アメリカでも日本でも劇場公開されていない低予算映画だ。低予算すぎて、FBI本部がどう見てもFBIには見えないし、クライマックスはそこらへんの公園だった。

カルチャーギャップ

キンダガートン・コップ2』の海外での評判は散々で、俺もイマイチだと思っている。しかし、この映画が持つ三重構造のカルチャーギャップだけはメッチャ面白かった。この映画には三つのカルチャーギャップがあるのだ。一つはコワモテ刑事と園児のカルチャーギャップ。まあこれは解説しなくてもわかるだろう。


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キンダガートン・コップ1』の画像だけど、コワモテ刑事のシュワちゃん

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幼稚園に行くカルチャーギャップ。

リベラルと保守

もう一つはリベラルと保守のカルチャーギャップだ。以前も紹介したけどアメリカ映画は
「リベラルな主人公が保守派の一家と会ってタジタジになる」
というパターンがめっちゃ多い。ところが『キンダガートン・コップ2』は逆のパターンで、保守派の主人公が超リベラルな幼稚園に入るというカルチャーギャップコメディなのだ。


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幼稚園の読書会で、園児相手にマジ切れする保守派のドルフ・ラングレン先生。

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リベラル幼稚園では、キリスト教的なイベントは変更対象。

キンダガートン・コップ2』に出てくる幼稚園&園児たちはこんな感じ。

  • エコロジーや安全なプラスチック製品に異常にこだわっている
  • 肉食禁止の日があって、砂糖は危険と教えられる
  • グルテンフリー(小麦粉を取らないようにしている)に取り組んでいる子供もいる

主人公はステーキとサンドイッチが大好きで「子供でも小学生になったら銃を撃っていい」という考えなので、リベラル幼稚園は異世界だ。


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主人公は、この幼女に豆腐を温めるようにお願いされて驚愕する。アメリカ映画における豆腐は「エリート層のリベラル」を意味する比喩表現だ。

この映画は教育現場で徹底されるポリティカル・コレクトネスを題材にしたギャグもある。ドルフ・ラングレンが園児たちに「あぐら」で座らせるために
「Indian style(インド式)」
と発言して怒られるシーンがある。政治的に正しい「あぐら」の英語表現は「Criss Cross Applesauce(すりおろしリンゴのお菓子)」なのだ。ちなみに「sitting Indian style」で検索すると「この言葉は政治的におかしいの?」って議論がたくさん登場してくる。

また『キンダガートン・コップ1』のヒロインは犯人の元妻だったけど、『キンダガートン・コップ2』のヒロインは行き過ぎたリベラルにウンザリしている女性教師だ。ドルフ・ラングレンとヒロインは意気投合し、保守的なカウボーイテイストの店でデートする。

1990年と2016年のカルチャーギャップ

そして三つめのカルチャーギャップは、俺が勝手に感じているだけなんだけど、1990年と2016年のカルチャーギャップだ。『キンダガートン・コップ』の1と2を比べるとポリティカル・コレクトネス(政治的正しさ)の追求が強くなっている。一番感じたのは虐待する親への接し方だ。

キンダガートン・コップ1』では虐待する親に対してシュワちゃんが鉄拳制裁するだけ。


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しかも生徒たちの目の前で!

対して『キンダガートン・コップ2』では、ドルフは暴力的な親に優しく接して一緒に問題を解決しようと提案する。


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政治的には正しくてもドルフが人を殴るシーンが見られないのが残念!


また子供たちの指導方法もだいぶ変わっている。

キンダガートン・コップ1』のシュワちゃんは園児たちを指導できず学級崩壊を起こしてしまう。そこでシュワちゃんは、笛の音を使って命令することで園児たちをおとなしくさせる。劇中の校長先生はこの指導方法を評価する。


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園児相手に警察学校式教育を取り入れるというコメディシーン。

キンダガートン・コップ2』でもやはりドルフは防災ホーンの音を使って子どもたちを従わせようとするんだけど、これは校長先生に「暴力的な方法」として批判される。


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リベラレル派の校長先生に「子どもたちに良い環境を提供して」と怒られるドルフ。


キンダガートン・コップ1』は全体的に軍隊チックな教育方法で成功する物語だったのに対して、『キンダガートン・コップ2』はドルフ・ラングレンが最新の教育方法を学んでいく物語なのだ。


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キンダガートン・コップ2』より。「才能を褒めるんじゃなくて努力を褒めろ!」というシーン。

他にも『キンダガートン・コップ1』では「男の幼稚園の先生なんて変人!」という扱いだったのに、『キンダガートン・コップ2』では「男女の区別なし」をやたら強調していた。26年の間に状況がだいぶ変わったのか。


最後に

やたらリベラルを強調していた『キンダガートン・コップ2』だけど、クライマックスはネタバレなので、リベラルとか政治的正しさとか気にしていると思いっきり裏切ってくる作品だ。というか酷いクライマックスだな。まあとにかく「リベラルは正しいけど、最近行き過ぎていてちょっとウンザリ」という風潮が透けて見える映画だった。


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ギャグマンガのネタが現実になった

手元にマンガが見つからなかったので記憶で書く。

三丁目防衛軍(1) (ヤングサンデーコミックス)

ロックマンガ家の喜国雅彦の名作『三丁目防衛軍』のラストは、主人公のハードロックバンドが出世に出世を重ねまくるというギャグだ。

  • 三丁目防衛軍を辞めた主人公はインディーズのハードロックバンドに加入
  • メンバーの脱退に悩まされながら何とかメジャーデビュー
  • 人気が爆発した彼らの国内ツアーは連日客が押し寄せてきて危険な状態になる
  • そして最後に東京ドームライブを成功させる

そんな主人公にマネージャーが語りかけてくる。
「いい知らせがあるぞ」
ドームライブに満足している主人公は言い返す。
「今日、この日よりもいい知らせなんてあるんですか?」
マネージャーはさらに言い返す
「ガンズ&ローゼズがワールドツアーの前座におまえたちを指名してきた!」

憧れのガンズ*1とのツアー、そして主人公のバンドはさらなる高みへ上り詰めていく…。


あまりにも都合の良すぎる展開に爆笑したが、このマンガから25年経った現在、このギャグが現実となった。

BABYMETAL東京ドーム!
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その後に、レッチリのUKツアーの前座でBABYMETAL!しかもレッチリからの指名!
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「いったい何処までいくんだBABYMETAL」
って、もうみんな何度も何度も心の中で呟いていると思う。吉田沙保里伊調馨と同じで、今我々の目の前で伝説が作られているのだ。

ちなみに日本人アーティストが超大物の海外ツアーの前座に指名されるのは、何度かある。

80年代には日本のE・Z・0がガンズ・アンド・ローゼズの前座でアメリカのクラブツアーをやっている。BABYMETALの活躍の系譜にはこういうジャパメタの存在があるのだ。
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ニルヴァーナの前座でアメリカツアーをやったのは少年ナイフ
少年ナイフ ゴールデン☆ベスト

ただレッチリのように大物状態が何十年も続くバンドからの前座指名は珍しい。

*1:マンガの中ではタンス&クローゼズ