破壊屋ブログ

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敗北した敵ヒロインと浮気するスーパーヒーロー!『宇宙の法 黎明編』

幸福の科学は、そんじょそこらの右寄り映画よりもさらに右を行く保守映画を作ってきたはずですが、彼らの最新作『宇宙の法 黎明編』がまさかのリベラル路線のストーリー!右を向き続けた結果、半周回って左になったのでしょうか。



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↓はアメリカ版ポスターなんだけど、このふたりは悪役!
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解説の前に謝罪

というわけで例によって完全ネタバレ解説しますが、解説前に一つ謝罪を。『宇宙の法 黎明編(The Laws of The Universe - Part 1)』は『UFO学園の秘密(The Laws of The Universe - Part 0』の続編なのですが、『UFO学園の秘密』公開当時に俺は「絶対に続編できない」とバカにしてきました。でも本当に続編作ってしまった。これが彼らの信じる力か!俺の発言を撤回してお詫びします。

前作の主人公たちのその後


スーパーヒーローに変身した主人公。
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  • 『UFO学園の秘密』で高校生だった主人公たちチーム・フューチャーは、ナスカ大学で学生生活を送っていた。どうでもいいけど「ナスカ」ってペルーの地名が日本の学校名になっているのって変だよな。
  • 前作では超絶カッコ良かった主人公が進路を決めずに八つ当たりする男で、前作ではダメ人間だったエイスケが配信で一発大当してモテモテキャラになっているという逆転ネタが良い。
  • 彼らは大学の勉強や進路の準備に備える一方で、アメリカにテレポートしてヒーロー活動も行っていた。ここから映画はいきなりスーパーヒーローものになる。

スーパーヒーロー登場


ヒロインのファントム・イリュージョン。スカートを使わず、胸の谷間を見せないというポリコレデザインだけど、今作でミニスカ巨乳女にヒロインの座を奪われる。
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チーム・フューチャーたちはギャラクシーフォースという力を使ってヒーローに変身するのだ。ギャラクシーフォースって何だよ!?とツッコミたくなるが、劇中では「力を目覚めさせる力」と説明になっていない説明がある。あと彼らのヒーロー名がカッコ良すぎて恥ずかしい

  • 主人公は、獣人になるスペース・コマンダー
  • 主人公の恋人は、幻影を見せるファントム・イリュージョン
  • 主人公のライバルは、騎士の格好をしたホワイトナイト
  • テレポート能力のあるアブソリュート・サンクチュアリ
  • 姿を消せるインビジブル・スピア

敵を殺すのが楽しいヒーロー、大虐殺する


ホワイトナイトは闇落ちして、ポスターにも出てくるブラックナイトに変身する。
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  • だがヒーローとして敵を虐待することが楽しくなっていたホワイトナイトは、悪の少年:ダハールにそそのかされ、悪の騎士ブラックナイトに変身してしまった。
  • どうでもいいけど「悪のブラックナイト」はアメリカで公開した時に人種的な意味で大丈夫だったのか?かといって「ダークナイト」にしちゃうと別の映画だしなぁ。
  • ブラックナイトはダハールと共に3億3千万年前にタイムスリップする。何で3億3千万年前かというと、幸福の科学の教義に「3億3千万年前に大川隆法が地球に登場した」というのがあるからだ。
  • そこはレプタリアンたちの星だった。ブラックナイトの出身星プレアデウスはレプタリアンによって虐殺されていた。ブラックナイトはその恨みを晴らそうとする。
  • ブラックナイトはレプタリアンの星の天地を逆にすることで星を滅ぼす。このシーンは大迫力の良シーン!

宇宙最強の戦士ザムザ登場


ザムザ。途中しか出てこないにも関わらず主人公以上のインパクトを残す。宇宙最強の戦士でミニスカ巨乳で残虐だけど純情という夢のようなキャラ。
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  • レプタリアンはほとんど死んだ。生き残ったレプタリアンたちは船に載って地球へ脱出する。彼らを指揮するのは宇宙最強の戦士ザムザだ。ザムザは凶暴で傲慢な性格な女性である。イラつくと部下を殺したりする。
  • 主人公はブラックナイトを連れ戻すために、宇宙連合(幸福の科学の教義に出てくる異星人集団)の力を借りて3億3千万年前にタイムスリップする。
  • 主人公は3億3千万年前の地球でザムザと遭遇。アニメ版ゴジラ並に強いザムザにあっという間に負けたので、彼女の奴隷になる。
  • 主人公もザムザも標的はダハールとブラックナイトなので、一緒に旅に出ることになった。
  • ここでヒロイン交代が発生して、なんとザムザがヒロインになる!凶暴で傲慢な戦士ザムザが光堕ちしていくギャップを楽しむ物語なのだ。

新ヒロイン誕生

  • 主人公とザムザは旅の道中で偶然怪物に襲われる村民を助ける。村民たちは当然ながら「ありがとう」という言葉を伝えるが、「ありがとう」という概念の無いザムザは戸惑う。
  • ザムザは村民たちの結婚式に出席することになった。主人公から「キス」という概念を説明され「愛って何だ?」と考えるようになるザムザ。
  • しかしザムザは村民たちにゴミ出しをお願いされたことで「私は宇宙最強の戦士だぞ!」と激怒。大暴れする。
  • 大暴れするザムザだが、そこに現れた地球の女神と戦って敗北、グルグルに縛られたザムザは「クッ、殺せ!」「だが部下の命だけは助けてやってくれ」と懇願する。
  • だがザムザの部下のレプタリアンたちは、敗北したザムザに興味を無くし裏切る。そしてザムザの代わりにもっと強い戦士であるブラックナイトの部下になる。えーと、レプタリアンたちは自分たちを虐殺したブラックナイトの味方になるっておかしくない?この映画の脚本はそれなりに良いけど、ここは大失敗だと思う。

幸福の科学の写輪眼発動


これが諸悪の根源ダハール。彼の正体はなんと…。
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  • ここからは『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』のソコヴィアみたいな展開なので、だいぶハショる。
  • 主人公はかつての親友だったブラックナイトに再会、戦いに勝利しブラックナイトを正気に戻す。
  • ブラックナイトをそそのかし、レプタリアンの星を滅ぼし地球征服を狙う少年:ダハール。彼の正体がついに明らかになった。ダハールの正体は宇宙の根源的な○であり彼の体は巨大な○○だったのだ!
  • ↑えーとこのオチって現在製作中の有名ハリウッド映画のオチと同じだよね?まさかまだ完成していない本家映画よりも先にこのネタをやるとは…。先にパクるというマンガ『NARUTO』でカカシが見せた写輪眼のような技だ。もしくは『スター・ウォーズ』が日本公開される前に大急ぎで作ったスター・ウォーズパクリ映画の『宇宙からのメッセージ』とか。ちなみにそのハリウッド映画とはコレです。

アルファ神が登場してリベラル演説

  • ダハールは主人公を殺そうとするが、実は主人公に惚れていたザムザが身代わりとなって死ぬ。ちなみに本当のヒロインであるファントム・イリュージョンは一度も出てきていない
  • ザムザは死ぬ前に「お前は奴隷で私が主人だ、お前を守るのは当たり前だ」とつぶやく。
  • ダハールを倒すために地球の神:アルファ神が登場する。アルファ神とは大川隆法が最初に地球に登場したときの形で超イケメン
  • ダハールとアルファ神の壮大な戦いの結果アルファ神が勝利し、ダハールは消える。
  • ここでアルファ神は地球に住む人々(3億年前に人は無いけどさ)に対して「自由に生きよう」「移民は受け入れよう」「移民受け入れは衝突が発生するけど、相手を尊重しよう」というリベラル演説をかます



追記:コメントで指摘されましたが、これはネオリベの意見ですね。

唐突にラストシーン

  • アルファ神はザムザを生き返らせる。
  • 生き返ったザムザを見て主人公は大喜び、思わず抱きつく。ザムザはビックリして「か、勘違いするんじゃない!」と慌ててかわいい。
  • 正気に戻ったホワイト・ナイトとザムザ。彼らはお互いがお互いに民族虐殺しているという仲だけど、「虐殺はどっちもどっち」ということで仲良く握手する。いいのか。
  • 主人公とホワイト・ナイトは3億3千年後に戻ることになった。永遠の別れとなるタイムスリップする直前、ザムザは「私はお前を夫にしても良かった」と主人公にキスする。
  • 映画はいきなりここで終了する!まあ続編作る予定なので、わざと尻切れトンボにしたのだろう。でも教祖が浮気して教義に変更があった宗教だけあって、別のヒロインと恋仲になる映画を作るとは…。


なぜリベラル路線になったのか

幸福の科学の映画は保守寄りだった。尖閣諸島に上陸して撮影して外交問題にまでなった『尖閣ロック』や、侵略から日本を取り戻す『ファイナル・ジャッジメント』などがある。そもそも前作の『UFO学園の秘密』のラストシーンは「真の悪は中国(レプタリアン)だった!続く!」という終わり方だった。しかし今作では保守思想は消え失せ、逆にレプタリアンを受け入れるという物語になっている。
まあ教祖はアレでも作っている人たちはマトモなアニメ作家たちなわけだし。とはいえやはりこの方針転換は衝撃的だ。どうしてこうなったのか?俺の憶測なんだけど…。

  1. 大川隆法が作った最初の原作があまりにも酷すぎて、使い物にならなかった(後述する)。
  2. それで大川隆法は別の原作を作ることにした。内容はザムザと呼ばれる男のレプタリアンが改心する物語。
  3. ザムザの設定が使えると判断した脚本家チーム(個人の名前は発表されていない)が、ザムザをヒロインに変更する。
  4. さらに最近のアメコミ映画(マイティ・ソー バトルロイヤルとかアベンジャーズとか)を参照した脚本を仕上げる。

今回リベラル路線になった最大の原因は、幸福の科学の敵であった「レプタリアン」を同じ地球の仲間として描いている点だ。さらにリベラル寄りのアメコミ映画の影響を受けて「敵と仲良くなる」「移民を受け入れる」というストーリーに仕上がったのだろう。アメコミ参照ネタもパクリにならないように上手く処理している。まあ『アバター』の影響がちょっと大きいけど、幸福の科学にとって『アバター』は重要な映画なので仕方ないかな(異星人との文明交流という映画の設定が教義とマッチしている)。
あと幸福の科学映画は毎回クライマックスで演説があるんだけど、今までの映画だと妄想系専門用語が一杯出てくるので眠いことこの上なし。でも今作はわかりやすい言葉しか使ってないのも特徴的。



追記:コメントで散々ツッコまれましたが、本作は移民政策を推し進めるネオリベ的見解で大川隆法が以前から主張していた内容と一致しています。今回の映画はレプタリアン(幸福の科学の敵)との和解を描いている点が斬新です。

大川隆法が作った最初の原作はどれくらい酷いのか

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手塚治虫の影響を受けたという原作買って読んだけど本当に酷い。

  • 地球にグレイ型宇宙人がやってきて地球人を誘拐する。その対策を金星人たちが会議で考える。
  • グレイ型宇宙人は地球人を誘拐するときに、無重力光線を発射する。だから無重量光線を無効化する警備ロボットを開発する。その警備ロボットは全長20メートルで透明になれる。
  • 唐突に東北に大震災が発生するが、偉大なる日本人(大川隆法)が千葉を襲った大津波を念力で跳ね返す
  • その日本人はアメリカ人の美女とコンビを組む。
  • 二人は世界から支持されて、全世界の権力を手に入れて防衛兵器を開発する

これはちょっと使えない…。というわけで大川隆法はもう一回原作を作り直す。それがレプタリアンの物語だ。映画はこれが下敷きになっている。


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地球の全権限を手に入れて兵器開発。中二でも思いつかないストーリーだ。

その他雑感

  • 幸福の科学映画としては間違いなく上位にくる良作だった。
  • 「え?何でここ1,2年のアメコミ映画の影響があるの?」と思ったけど、本作の製作が本格スタートしたのは2018年春という超過密スケジュール。そりゃ確かに最近の映画の影響を受けるのも可能だわ。
  • 過密スケジュールのせいか、アクションシーンはちょっと物足りなさがある。
  • 本職の声優たちを使っているだけあって声優演技は充実。ザムザの声優を担当した千眼美子は芸能人枠とはいえ彼女もノリノリの名演技!
  • 大川隆法は金髪の白人に過剰な思い入れがあるらしく、偉大な人はたいてい金髪の白人なのだ。大川隆法の著作でも「金髪の白人」と外見に言及ある。

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  • 二週連続ナンバー1という大ヒットとなった本作。でも俺は映画が始まる前に座席一覧をキャプチャして実際の映画館の中と比較したけど、埋まってるはずの連席に人がいなかった。

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(これは客が少ない横浜ムービルなので、これでも混んでいるほう。ただし実際の劇場はさらに人が少なかった)

死亡フラグのお話

俺のこのツイート↓がバズりました。配役だけで誰が死んで誰が犯人なのかわかる「配役デスノート」「死兆星キャスティング」とか名付けたい現象ですね。

でも「深刻な問題」と書きましたがこれは取り消したい。死亡フラグや配役から展開を予測するのも映画を観る楽しみです。


死亡フラグが立ちまくる男

映画『ホットショット』より、出撃前に死亡フラグが立ちまくる夫婦。超好きなギャグです。

黒猫がよぎる

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マイホームを購入する

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子どもたちが待っている

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鏡が割れる

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家に帰ったら重要なサインすると約束する

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地球を救う方法を思いつく

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ついでにケネディ暗殺も

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大事なものを渡さずにポケットに入れたままにする

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お前はすでに死んでいる…と言いたくなるほど死亡フラグ立ちまくり。


案の定、夫は派手に事故死。主人公であるチャーリー・シーンが
「奥さん、見ちゃダメだ!」
と彼女を後ろ向きにするけど、後ろが鏡だったので夫の墜落をバッチリ目撃する。
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最初に死ぬキャラの法則

↑のツイートはリプライや引用RTなんかに
「あの映画で有名な○○が最初に死んだのは驚いた!」
的な意見がめっちゃ多くついています。

でもそれは一番最初に死ぬのは一番ギャラが高い人という全世界共通の法則なんです。最近の例だとテレビ朝日版の『そして誰もいなくなった』で向井理が、ケネス・ブラナー版の『オリエント急行殺人事件』ではジョニー・デップが最初に死亡退場します。ちなみに両方共アガサ・クリスティ原作です。

というわけで今回は死亡フラグ(海外では「クリシェ」と言う)の話。ネタがネタだけにネタバレ多数です。

定番死亡フラグ

有名な死亡フラグは
「結婚の予定を自分から喋り始めたキャラクターは死ぬ」
「イチャついているカップルは死ぬ」

ですね。マニアックな死亡フラグだと
「靴紐を結ぶシーンがあるキャラクターは死ぬ」
とかあります。逆死亡フラグでは
「処女・童貞は生き残る」
がありますね。ホラー映画ではこのフラグを逆手に取って
「どう見ても童貞のアイツが死んだ!なんと実は童貞じゃなかった!」
という展開もあったりします。死亡フラグの法則をきちんと守りながら「あいつ童貞じゃなかったのか」と観客を驚かせる見事な手腕です。

ジュラシック・ワールドの例

アメリカ映画は日本映画よりも死亡フラグを強く主張してきます。例えばジュラシック・ワールド・シリーズでは
「イギリス英語を話す人は死ぬ」
という死亡フラグがあります。劇中でイギリス英語を喋って結婚の予定があるという死亡フラグが複数たつ女性ザラは、そりゃもう無残な死に方をする。

もちろん俺にはイギリス英語とアメリカ英語の違いなんてわかりませんが、現在公開中の『ジュラシック・ワールド/炎の王国』でもイギリス英語ネタはちゃんとセリフ・字幕で説明されて、死亡フラグの上げ下げが観客にわかるようになっています。*1

人種による死亡フラグ

他にもアメリカ映画だと、死亡フラグには人種が絡んできます。黒人やメキシコ人たちのサブキャラクターが死んでいって、最後に白人たちが生き残ってハッピーエンドというのが娯楽映画の王道です。昔のジュラシック・パークシリーズなんかがその例ですね。
ちなみに最新作『ジュラシック・ワールド/炎の王国』はマイノリティが生き残る一方で動物愛護精神が無い人たちがバンバン死んでいく展開です(恐竜が思想を選んで人を殺すわけじゃないのに!)。人種差別を乗り越えた結果、思想差別が生まれた感があって興味深いです。

死亡フラグを逆手に取った映画

俺のツイートへのリプライで
「ディープ・ブルーでサミュエル・L・ジャクソンが死ぬのが驚いた!」
というのが多かったですが、『ディープ・ブルー』のサミュエル・L・ジャクソン死亡ネタは、公開当時の宣伝ネタだったんです。『ディープ・ブルー』で本当に驚かされたのはサミュエル・L・ジャクソンではなくて死亡フラグを逆手に取った展開です。ホラー映画は途中で黒人が殺されて最後に白人ヒロインが勝利する。というのが定番ですが、『ディープ・ブルー』は死亡フラグが立っている黒人男性のLL・クール・Jが何度もピンチになっても死なないで結局生存。逆に白人ヒロインがいきなり死にます。
ちなみに『ディープ・ブルー』のレニー・ハーリン監督とLL・クール・Jは映画『マインドハンター』でも人種の法則を逆手に取ります。連続殺人鬼モノの真犯人は白人男性という法則を逆手に取って、黒人男性のLL・クール・Jと白人女性が生き残ってどっちかが犯人という展開。「真犯人は白人男性」という法則を知っていると逆に混乱するという仕掛けです。

日本映画の場合

日本映画はアメリカ映画よりは死亡フラグの主張が弱いですが、配役で何となく予想がついてしまう。また誰が生き残るのか何となくわかる逆死亡フラグも日本映画によくある現象です。今は収束気味ですが、アイドルたちが大量出演するサバイバルホラーが何本も作られていました。それらの作品はくだらなくも微妙に面白くて、誰かが死んで退場という緊張感が見どころ。ところがアイドルに疎い俺でも
「どっちが生き残るか全く読めないすげえ展開だ!あ、でもこっちが推されているっぽいから、こっちが生き残るんじゃないかな?」
と予想ついてしまう。去年の誰映画でも書きましたが、全員生き残るホラー邦画が増えているのも、映画はアイドル俳優たちのプロモという側面が影響しているんじゃないかなと思ってます。

ただ読めるから悪い!というわけじゃなくて、そういうのも映画を観る楽しみです。



オマケ:日本映画の死亡フラグ ベスト3

最後に日本映画の配役からわかる死亡フラグベスト3を紹介します。

1位:新垣結衣の結婚相手

新垣結衣との婚約はデスノートに名前も書かれたも同然の死亡フラグです。『恋空』『トワイライト』みたいに結婚相手が死ぬことをウリにしている映画や、『麒麟の翼』『BALLAD 名もなき恋のうた』みたいに結婚相手にあからさまに死亡フラグが立っている映画ならまあわかるんですがね。新垣結衣が学校の音楽教師を演じて合唱チームを率いる青春映画『くちびるに歌を』みたいに死亡要素が全くない映画でも新垣結衣の結婚相手は死にます。新垣結衣の出演作を追っていると、まるで保険金目当ての夫殺人に見えてくる。

2位:主人公が20代~30代の映画のご両親役のどちらか

主人公は20代~30代で自身に悩みを抱えていて、親のことをちゃんと考えていない。親を演じるのは知名度の低い演技派の俳優。これはもう死亡フラグです。中盤で実家から親が亡くなったと連絡が来るのがお約束。
この展開の日本映画があまりにも多すぎるため、この死亡フラグを逆手に取った映画も存在します。『WOOD JOB!(ウッジョブ) 神去なあなあ日常』は明らかに死亡展開の親に結局何も起きないで健康!というギャグがあります。ベテラン監督の作品はこういうところがお見事。

3位:大沢たかお

大沢たかおはフラグじゃねーよ!というツッコミするなかれ。2000年代の大沢たかおは映画の中でとにかく死にまくりました。一流男性芸能人たちって死ぬイメージが無い人が多いのに(キムタクとか福山雅治とか)、大沢たかおはどことなく死のイメージがある。だから2000年代のお涙頂戴日本映画ブームの中で重宝されたのでしょう。俺も友達に
「この映画ってどういう映画なの?」
って聞かれたら
「大沢たかおが死ぬ映画だよ」
「なるほど!」
という会話が成立しました。

*1:発音ではわからないけどファッションで何となくわかる

日本映画の夏祭り展開でサイコーなやつ

日本映画(+アニメ)は夏祭り展開がメッチャ多いんだけど、俺のお気に入りは『HOME 愛しの座敷わらし』。以下ネタバレ。

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主人公(左端)は小学生の少年。東京から田舎に引っ越して友達がいないので、サッカーに混ぜてもらおうとするが実は彼らは強豪校。サッカー少年のリーダー:カッちゃんに説教される。

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主人公はサッカーを全くやったことないため何もできない。そんなダメダメな主人公に、何だかんだでリーダー:カッちゃんは気を使って仲良くしてくれる。顔も中身もイケメン!

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主人公はサッカー仲間と仲良くなって夏祭りに行く。そこで主人公が見たものは!

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イケメンリーダー、実は女子だった。今まで知らなかった主人公は驚愕し、惚れてしまう。オス堕ち!



このシーンは何かドキドキするので凄く好き。

イケメン女子を演じた沢木ルカは他の映画でも男子役で出ていたりする。残念ながら引退してしまった。

ここ10年で一番面白い日本映画『カメラを止めるな!』

現在公開中の『カメラを止めるな!』という低予算映画があるんだけど、ここ10年で一番面白い日本映画だ(当たり前だけど俺個人の基準でね)。


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一般上映で観たんだけど、上映終了後には拍手も起きていた。
ものすごく面倒臭い性格の映画監督が、映画を作ろうとする。だけどロケで選んだ場所は旧日本軍の...。この映画に関する情報はそれ以外シャットアウトして、予告編も公式サイトもネット記事も読まずに映画館に行って欲しい。実際に俺はそうしたので、おかげで映画館で凄まじい衝撃を味わった。

ちょっと話変わって、数年前からTSUTAYAが新作X枚1000円キャンペーンをやっているので利用しまくっている。その結果、俺は映画館に行く本数が減った一方で、新作映画を観る量は二倍以上になり新作映画だけで年間200本近く観ている。そのうちの3割くらいは低予算の日本映画で、微妙な出来や駄作が多い(名作もあるよ!)。単に俺が映画が好きだから観ているだけであって、そこに感動は無い。

話を戻して『カメラを止めるな!』だけど、実は『カメラを止めるな!』自体にはそんなに感動していない。伏線マニアなので大量の伏線で構成された展開にシビれまくっただけだ。でも『カメラを止めるな!』の後半を観ていたら
「俺が今まで観てきたあの駄作映画たちも『カメラを止めるな!』みたいに、みんなで頑張って作った結果なんだよなぁ」
と思って何か感動してきた。傑作『カメラを止めるな!』の内容からじゃなくて、今までの駄作映画から感動が押し寄せてきた。

マニア受けを狙った映画じゃないし、ネタバレを避けるために内容を明らかにしていないだけで、凄くわかりやすい映画です(三谷幸喜がやりそうなネタでもある)。低予算映画だけど多くの人にオススメできます。

サタデー・ナイト・ライブの傑作動画

最近、サタデー・ナイト・ライブの動画を見るのにハマっている。英語わからなくても面白い。以下は俺のオススメ動画。

『スター・ウォーズ』のCM、大きなお友だち含む編。
www.youtube.com


母親のオナニー中に子どもたちが乱入。母親のオカズは『フィフティ・シェイズ』。電マで遊ぶ子どものシーンは日本でやったら絶対炎上だね。
www.youtube.com


ハーマイオニーがエロく成長してドキドキする男連中。
https://www.youtube.com/watch?v=uwfdFCP3KYM


トランプ支持者たちの感動的なCM!政治的に正しい形で政治的に間違っているギャグをカマすという現代に相応しい傑作ギャグ。
www.youtube.com


ブラック・ウィドウの単独映画の予告編。
https://www.youtube.com/watch?v=j_5KgpN38hM


ワイルド・スピードなバンビ。
https://www.youtube.com/watch?v=uFJz2IMUeDE


10歳以下の少女に子宮頸がんワクチンを打ちまくる
www.youtube.com


ディズニーキャラクターとの触れ合いコーナー。『美女と野獣』のガストンは大人気。ところがジョン・スミス(ポカホンタスの恋人、不人気な上に政治的にも問題あり)が出てくると…。
https://www.youtube.com/watch?v=-DBIkOVYqes


嫌な男上司のモノマネで盛り上がる人たち。でもとある男性が嫌な男上司と性的関係だった。性行為のモノマネでドン引き。
https://www.youtube.com/watch?v=Gx-dJnKIa9U


アナルにダース・ベイダー
https://www.youtube.com/watch?v=9dgUck8K_H4


ヒラリー・クリントンのモノマネ芸人、御本人+(オマケの夫)が登場。
https://www.youtube.com/watch?v=6Jh2n5ki0KE


毒蛇に噛まれた男たちがお互いの体を吸い合う、それに混ざりたい女性
https://www.youtube.com/watch?v=wHxEOgTFc_0


女たちのハロウィーン。『独身OLのすべて』みたい。
https://www.youtube.com/watch?v=TVueoznrt9Y


銃のCM。
https://www.youtube.com/watch?v=SwEyBItsXkw


空港セキュリティ。難癖つけて女性客を脱がして行く。
https://www.youtube.com/watch?v=_6Y52JHN-LA


また空港セキュリティ。時代が変わって男女逆転。
https://www.youtube.com/watch?v=WA_RamRRS5o


絵描きクイズ。第一問は『ゴーン・ガール』、第二問が…
https://www.youtube.com/watch?v=X_kuC35F06E&t=176s


貞子と同居するコメディ。
https://www.youtube.com/watch?v=6qIdMrwimwE

反日認定と『焼肉ドラゴン』

万引き家族』が公開されたので
「この映画は万引きを肯定している!」
と勘違いしていた人たちも、色々と間違いに気づくだろう…。と思っていたけどそんなことは無かった。今だにネット上では「万引き肯定映画だ!」と騒いでいる連中がいる。
「映画観ろよ!」
とまでは言わないが、せめてネタバレサイトくらい読んでから議論に参加してくれ。

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そんな万引き家族』以上に酷いバッシングを受けている映画がある。今週公開された『焼肉ドラゴン』だ。



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大泉洋演じるニート在日韓国人が自分の学歴を鼻にかけるので
「キムチはキムチ!」
とブチ切れる井上真央ちゃん。このシーンは動画でも見れます。『焼肉ドラゴン』はこんな感じのドギツい人情コメディ映画です。特に井上真央の演技は最高!


ネット上では『焼肉ドラゴン』が反日認定されて、右寄りからバッシングを受けている。こんなツイートが大量リツイートされているのだ。

注:ツイート内には中盤のネタバレがあるので、真剣に読まなくていいです!


https://twitter.com/Yuu14Sunplas/status/1008488529398132736


https://twitter.com/Yuu14Sunplas/status/1009456212734197760



もちろんリプライ欄にはヘイトが満載。リプライ欄を読んでいると次に大震災が起きたときにデマを信じた日本人が在日外国人に危害を加える様子が目に浮かんでくるよ。

反日認定

反日認定」はネトウヨが使うジャッジメントで、俺も「破壊屋は反日!」ということで2ちゃんとかでフルボッコにされた経験がある。ネトウヨから反日認定というのは光栄だと感じるけどね。しかし『焼肉ドラゴン』を反日認定するのはおかしいぞ!

リンク先は『焼肉ドラゴン』の主人公の一人、龍吉の部分だけを抜き出したネタバレだ。

序盤のネタバレ

中盤のネタバレ

後半のネタバレ

ラストのネタバレ

これのどこが反日なの?国史上最大のタブーとも言われている済州島の虐殺事件を扱っているんだぞ?しかも日本の助成金で。むしろ右寄りの人たちが大喜びして映画館に駆けつけるべきだろ。『焼肉ドラゴン』はどんな政治思想の人でも楽しめる作品なんだよ。

でもネトウヨたちの言う「日本人が在日を虐めるシーンがあるから反日映画!」というのは、俺も心底賛成するぜ。真に美しい日本人なら在日虐めなんてしないはずだからな。在日虐めで反日認定なら良いことだ。

おまけ:ネトウヨにお薦めする鄭義信の映画

『焼肉ドラゴン』は俺が大好きな脚本家:鄭義信の初監督作品だ。鄭義信の脚本作品はネトウヨにこそオススメしたい。鄭義信在日社会をハードに描く作風なので、右でも左でも極端な政治思想の持ち主のほうがむしろ楽しめるはず。

月はどっちに出ている

月はどっちに出ている
俺のオールタイム邦画ベストにも入る大傑作。在日朝鮮人慰安婦問題とか全然気にしてません!という激ヤバなコメディシーンがある。公開当時、慰安婦問題で盛り上がっていたこともあり、このシーンはかなり注目された。

血と骨

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戦前から戦後にかけて在日朝鮮人社会を描く。ビートたけし演じる主人公は同胞の在日朝鮮人たちから金を巻き上げていく。

信さん

信さん・炭坑町のセレナーデ [DVD]
これは以前、破壊屋でも取り上げた。炭鉱労働者たちは誰も朝鮮人差別をしていないんだけど、朝鮮人労働者のリーさんがみんなを裏切ってスト破りをする。日本人労働者が「リーさん、何でや!」と絶叫するシーンはかなり辛い。


いずれも日本人には絶対に描けないシーンばかりだ…。

万引き家族より酷い映画

貧困だからといって犯罪していいわけじゃない!

万引き家族』に関する評論で↑こんなのが溢れかえっている。もちろん観ていない人たちの妄想評論だ。映画本編を観ればわかるけど、『万引き家族』は万引きを美化も正当化もしていない。でも彼らの妄想評論通りな映画は実在する。日本って治安が良いな…と思わせる作品の数々だ。

アメリカ『ジーサンズ はじめての強盗

ジーサンズ はじめての強盗(字幕版)
年金が少ないから老人たちが強盗するという日本でやったら老害批判が爆発するであろう映画。一応
「勤め先が積み立てていた年金を買収によって銀行に奪われた。だから強盗で銀行から取り返す。」
という設定なので筋はちゃんと成立しているけど、そんなこと言ったら旧:社会保険庁が年金食い荒らしまくった日本ではクーデターでも物足りないぜ。
元々アメリカでは銀行強盗が庶民の英雄になる現象があった。南北戦争当時のジェシー・ジェームズや、大恐慌時代のジョン・デリンジャー、ボニー&クライドとかね。だから今でも銀行強盗が主役の映画が多い。

イギリス『天使の分け前

天使の分け前(字幕版)
左翼監督の代表的存在であるケン・ローチの作品。ケン・ローチは日本の高松宮殿下記念世界文化賞から賞金貰ったときに、スポンサーのフジサンケイグループに反発して国鉄労働組合に賞金を寄付したこともある。もし『万引き家族』が助成金の返金で似たようなことやったら大炎上だな。
天使の分け前』は日本では
「更生中の不良がウイスキーテイスティングを学ぶ映画」
として宣伝されていたけど、実際は
「更生中の不良がやっぱり更生せずにウイスキーを盗む映画」
という酷い映画だった。貧困層の犯罪者が更生するにはお金が必要で、そのお金を犯罪で得ても、まーしょーがない、それが「天使の分け前*1」でしょ。というケン・ローチの左翼的優しさが溢れる作品。ケン・ローチを尊敬している俺でも、さすがにこの作品は批判しました。

中国(香港)『奪命金

奪命金 ≪特別版≫【Blu-ray】(2枚組:BD+DVD)
これは以前庶民視点がおもしろい! 老舗映画サイト「破壊屋」の人が厳選したハズさない「金融映画」4本 | マネ会 趣味 by Amebaで紹介したので、そっち参照してください。貧困じゃなくて一般庶民の話なんだけど、ラストシーンの庶民のとある行動は善悪の判断が別れるところ。俺も
「え?これは犯罪でしょ?」
と思った。
HKmoviefan💉💉 (@HKmoviefan) | Twitterさんに教わったけど、中国ではラストシーンに「この行為で逮捕された」という追加ナレーションが入るらしい。あのラストシーンは香港的にはOKでも、中国共産党的にはNGなのだろう。

フランス・ベルギー『ある子供』

ある子供 [DVD]
生活保護を受けながら窃盗を繰り返す若いカップを描いた映画。主人公が14歳の少年に窃盗を手伝わせるシーンもあり『万引き家族』に一番近い映画。『万引き家族』と同様にパルム・ドールを受賞している。でも映画的な技巧をわざと排除した作風なのであまりオススメできない。犯罪をまったく美化しておらず、むしろ窃盗シーンがホラー映画みたいに怖い。

南アフリカツォツィ

ツォツィ スペシャル・プライス [DVD]
2006年のアカデミー外国語映画賞の受賞作。極悪不良少年が、うっかり赤ちゃんを誘拐。その過程で人間性を学んでいく。これも犯罪を美化していないけど、アフリカ映画は極悪不良少年(たいていは少年兵)が極悪な行為をしたあとに、観客に
「この少年犯罪をどうするか?」
という問いかけしてくるので、ついていけないことがある。

ブラジル『シティ・オブ・ゴッド

シティ・オブ・ゴッド(字幕版)
貧困だから犯罪に走る。という映画は腐るほどあるので代表的な作品を。ストリート・チルドレンを描いた傑作。面白半分で子どもを銃で射抜くシーンはトラウマもの。


万引き家族』の劇中で描かれているのは「犯罪行為で家族の絆が生まれる」様子であり、犯罪を美化も正当化もしていない。むしろ「犯罪=悪い」という実に当たり前のことが描かれている。是枝監督が『万引き家族』で暴きたかったのは、日本人の貧困層への無理解だ。まさかタイトルだけで暴かれることになるとは思わなかっただろうけど。

*1:ウイスキーがちょっと減る現象