破壊屋ブログ

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地味で予想外のミステリー『ディスクローザー』

超地味なミステリー映画『ディスクローザー』を観た。セクハラを題材にしたデミ・ムーアの『ディスクロージャー』とは違う。今年日本で公開された2013年のオーストラリア映画だ。主演のジョエル・エドガートンとジェイ・コートニーがハリウッドで活躍中なので、日本でも公開されたのだろう*1

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ジェイ・コートニーは『ターミネーター 新起動』の新カイルや、『ダイ・ハード5』のマクレーン刑事ジュニア、他にも『スーサイド・スクワッド(キャプテン・ブーメラン)』やアメリカのティーン女子に人気な『ダイバージェント』シリーズに出演するなどやたらゴリ押しされているハリウッドの山崎賢人だ。

設定

上記のポスターだと三人の男が陰謀を競うミステリーのように感じるけど、実際は

  • 飲酒運転で事故った主人公(ジョエル・エドガートン)
  • それをもみ消そうとする上司(トム・ウィルキンソン)
  • 空気読まずに事故の真相を追求する若手刑事(ジェイ・コートニー)

という地味なお話。と思ったら予想外のクライマックスとオチがあったので、今回はその解説。


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このシーンで主人公は正直に「少し飲酒している」と答える。調べてみてたら、オーストラリアは少量なら酒飲んでも運転できるらしい。

序盤

  • 主人公は麻薬組織を壊滅まで追い込んでいる優秀な刑事
  • 飲み会の帰りにホロ酔い気分で車を運転していると、隣の車線を走っていた自転車が軽く接触して転倒した
  • 自転車に乗っていた少年は意識が無い。主人公は救急車を呼ぶ。


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軽い接触だったので、車にも何も痕が残っていない。


中盤

  • 現場に駆けつけた上司は飲酒検知器の結果を捏造する。
  • 主人公もひき逃げの目撃情報をでっち上げてしまう。
  • 自転車に乗っていた少年はインド系の移民で、意識不明のまま死んでしまった。
  • 誰も主人公を疑わないが、若手刑事が疑いを持ち始める。若手刑事と上司が対立する。
  • その一方で主人公は自分の罪に耐えきれない


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一瞬の沈黙を見逃さない若手刑事。怖い。


加害者側の事情

飲酒運転に厳しい日本から観ればとんでもない話だ。だけどこの映画は加害者側にも同情できる要素が用意されている。

  • 主人公がいないと麻薬組織が野放しになる
  • 主人公がいないと家族がバラバラになる
  • 捏造した上司は過去に息子を交通事故で亡くしている。だが上司は罪の意識で発狂した加害者の姿を見ているので、交通事故の加害者を攻める気になれない

告解

こういう「白人の主人公がマイノリティに対して罪を犯す」という映画はよくあるパターンだ。オチはたいていこんな感じ↓

クライマックス、主人公にとって最も都合の悪いタイミングで、白人の主人公があえて自分の罪を告白。主人公は辛い贖罪の道を歩むが、人間としての正しさを取り戻したのだ…完。

これは罪を告白する「告解」という概念のあるキリスト教圏ならではのパターンだ。なので俺は『ディスクローザー』もそういうパターンの映画だと思いこんでいた。ところが予想外の展開を見せるのだ。ラストまでネタバレ。

終盤

  • 罪の意識に耐えられなくなった主人公は、上司と若手刑事を呼び出す。
  • 主人公は出頭して自供すると伝える。
  • 自暴自棄になった上司は、インド系の女性に惚れている若手刑事に「肌が黒い女とファックすると性病移されるぞ!」と人種差別発言する。
  • ブチ切れた若手刑事は、上司をヘッドロックする。
  • 上司は発作を起こして廃人になる
  • 主人公は若手刑事に「ヘッドロックの件は黙っておくよ」と伝える。
  • 主人公はインド系の母親の元に行き「俺がやった」と伝える。
  • 警察が集まるが、母親は「あの人は息子を介抱した人です」と伝える。



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若手刑事が主人公を迎えに来たところでラストシーン

解説

ツッコミたいところが3つある。
まずは、ほとんど不慮の事故とはいえ母親は息子を失っているじゃん!何で許すんだよ!と言いたいけど、これも前述の「告解」の概念だと思う。告解で許しを与えることができるのは神の代理人のみ。インド系の母親をそのような象徴として描いている。マイノリティが白人を救うのもよくあるパターンなのだ。

もう一つは廃人になってしまったヘッドロック事件だけど、欧米の映画界では人種差別する人は死んでOKというのが常識なので、むしろ廃人程度で済んだとも言える。

そしてラストシーンはどういう意味なんだよ!と思うけど、車の上に載っているコーヒーカップが答えだ。この映画では「自分のコップを渡す」行動に「相棒として繋がる」という意味がある。劇中にある若手刑事が上司からのコップを拒否するシーンもそういう意味だ。だから若手刑事が主人公のコップを用意するラストシーンは、お互いの罪を共有するという意味なのだろう。


最初から最後まで地味だったけど、予想外の展開に驚かされた作品だった。

*1:未体験ゾーンの映画たち