パトレイバーが実写化!と発表されたのは2013年の3月。当時のまとめサイトの反応を読んでみると見事なまでに「剛力彩芽はヤメてくれ」の大合唱だった。
マンガやアニメがテレビドラマになると、主人公キャラは人気芸能人がブチ壊して、脚本や演出は改悪されるというイメージがある。視聴者層を広げるためには仕方のないことだ。でもパトレイバーの実写化の際にファンたちの頭によぎったのは改悪の恐怖であり、その象徴が剛力彩芽だった。
ところがパトレイバーの実写企画『THE NEXT GENERATION パトレイバー(以降はTNGパトレイバーと表記)』は一般的な「テレビ化」とは真逆の方向に突き進んでいる。俺はエピソード2とエピソード3を観たけど良い意味でも悪い意味でもオタクっぽさが全開だった。まずパロディネタが多い。そもそも『機動警察パトレイバー』自体が特撮やロボットアニメのパロディから生まれたのでこれは当然だ。
エピソード2のストーリーは、警視総監の前でレイバーが礼砲を撃たなくてはいけないのだが、故障が多すぎてもはや立つことすらおぼつかないレイバーが果たして礼砲を撃てるのか?というもの。
実写化が発表されたときに「レイバーってちゃんと実写で動くのかよ!」というツッコミがたくさんあったけれど、それを逆手に取って「レイバーがちゃんと動かない」を追及した良アイデア。
エピソード2のオチは(リンク先ネタバレ)。この瞬間、劇場内ではオッサンたちによる大爆笑&拍手が巻き起こっていた。
エピソード3はゲームの『鉄拳』とのコラボネタが多い。『鉄拳』知らない俺でもコラボネタは楽しめた。ところがエピソード3は中盤から文学色が強くなりヒロインを演じる真野恵里菜と竹中直人の会話が延々と続く。監督&脚本は湯浅弘章という押井守とよく一緒に仕事している人で、押井守テイストを出しつつ話が難しくなりすぎないように上手く配慮している。でも残念ながら恐ろしいほど退屈だった。これは評価が分かれるエピソードだと思う。
テレビアニメ版の『パトレイバー』には「特車二課壊滅す」という伝説的なエピソードがある。今だったら神回というんだっけ?「特車二課壊滅す」は放映時間の半分が出前を注文しているだけというテレビ放映されたのが信じられない内容なんだけど、『TNGパトレイバー』は毎エピソードが「特車二課壊滅す」のような路線だ。キー局によるテレビ放映では無いとはいえ実写化作品がここまで冒険してくれたのは嬉しい。
『TNGパトレイバー』は視聴者層を絞ってしまうパロディネタやゲームネタを積極的に織り込んで来て、イギリスの低予算ドラマ『SPACED ~俺たちルームシェアリング~』を連想させる。『SPACED』もアメリカ映画や日本のゲームネタをガンガン取り込んでいた。