ワールドカップに便乗して、ワールドカップをトリックにしたアニメ映画『マウス・タウン ロディとリタの大冒険』を紹介する。2006年の英米合作映画で、莫大な製作費をかけたにも関わらず日本ではいったん公開が決まったあとに中止になった。原因は不明だけどアメリカで大コケしたのが一因だと思われる。
本作は子ども向けのアニメとは思えないほど人種ギャグが多くて
- イギリス人 → マズい飯を食っている
- アメリカ人 → ロンドンではしゃぐバカ観光客、サッカーは理解できない
- ドイツ人 → サッカーの敵
- フランス人 → イギリスの敵
- 中国人 → 英語が下手クソ
という風に描かれている。さらに言うとイギリスの労働者階級の人々を粗野でがさつに描いておりそれがメインの要素にもなっている。まあみんなネズミだけど。
以下、ストーリー解説。

映画のファーストカット。ワールドカップ決勝を控えたロンドンだ。

主人公のロディはケンジントン(ロンドンの王立特別区で高級住宅街)の豪邸でペットとして生活しているネズミだ。声優はヒュー・ジャックマン。

ところがロディの豪華な生活は、下水からやってきたサッカーファンの下品なネズミに奪われる(サッカー好きなのは主にイギリスの労働者階級)。

下品なネズミの目的は豪邸の大型ディスプレイでワールドカップ決勝を見ることだ。

ロディは下品なネズミを下水に流すために水洗トイレを「高級ジャグジーでございます」とウソつく。ところがウソはバレてロディが水洗トイレでジャーっと流される。

ロディはトイレに流される途中でファインディング・ニモに出会う。

下水の中ではネズミたちが廃材を使ってロンドンの街を再現していた。ちなみにさっきのニモは屋台で焼き魚にされる。

ロディはケンジントンに帰るためにリタという下水船の船長と組むが、そこでリタとギャングたちの下水の水門操作を巡る戦いに巻き込まれる。リタは粗野でがさつでコックニー・アクセント(ロンドンの労働者階級の訛り)で喋る女性だ。声優はケイト・ウィンスレット。
以下はネタバレです!

ギャングネズミは研究所で働いていたらしい。それって実験用…。もしかして小保方さんから逃げ出したSTAP細胞ネズミかも。

ギャングたちのボスはチャールズ皇太子のペットのヒキガエルだったが、チャールズ皇太子に捨てられた。ヒキガエルはケンジントン出身のロディと仲良くなる。

ヒキガエルの宝物であるヴィクトリア女王の胸像だが、このあとロディが壊してしまうのでロディとヒキガエルは決裂する。ヴィクトリア女王の画像はなぜか幸福の科学のサイトに置いてあった→http://www.are-you-happy.com/wp-content/uploads/2013/04/16982513f90047f56a5e475ee70afe45.jpg
日本はこういうギャグはできないよな。

冷蔵庫に閉じ込められるロディとリタ。後ろにいるのは『スターウォーズ』のハン・ソロ。

ヒキガエルはワールドカップの決勝戦を使って何か罠をしかけたようだが…

色々あってケンジントンに戻れたロディだが、ワールドカップ決勝を観ている人々がハーフタイムまでトイレを我慢していることに気がつく。もしロンドン中の人がハーフタイムにトイレを一斉に流したら!その時に下水の水門が開いていたら!ネズミはみんな死んでカエルたちの世界がやってくる。ロディはリタを救うために、再びトイレを使って下水の街に戻る。
ストーリー解説はここまで。悪役声優たちにイアン・マッケラン、ビル・ナイ、アンディ・サーキスとイギリスの大物俳優が揃っている。さらにフランスの悪のカエルはジャン・レノが声優をしている。
王室や階級といったイギリスの要素が大げさに描かれいて楽しい。「上流社会よりもみんなとワイワイできる労働者階級のほうがずっといいよ!」というのは、同じケイト・ウィンスレットの『タイタニック』でも描かれていたテーマだね。
中盤で名曲『Bohemian Like You』とともに船でチェイスするのは屈指の名シーン。ドリームワークスなのでアンチ・ディズニーなギャグもある。
作風は観てわかるとおり粘土アニメ『ウォレスとグルミット』のアードマンスタジオだが、実際にはシュレックシリーズのドリームワークスが製作している。もともとは粘土アニメの映画にする予定だったけど水の描写はCGじゃないと出来ない。そのためイギリスのアードマンスタジオがアメリカのドリームワークスに企画を持ち込んだ。
原題は『Flushed Away(トイレにジャーって流す)』で「主人公がトイレに流される」って意味だと思ったら、ワールドカップ時のトイレの水流を利用した陰謀というのが上手い。こういう社会現象を利用したトリックだとマンガの『スケバン刑事』でも高校野球やアイドルのコンサートを利用して日本の消費電力をあげていくというのがあった。
無数にある「不遇の映画」の一つだ。ディズニーアニメのお利口さん加減が気に食わない人にオススメできる。