破壊屋ブログ

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2014年最悪のハリウッド映画『ニューヨーク冬物語』

久しぶりに底抜けハリウッド映画を観た。『ニューヨーク冬物語』だ。映画批評サイトのロッテン・トマトでは最悪級の低評価である13%を記録。海外の複数の映画情報サイトでも2014年のワーストテンに入っている。『ニューヨーク冬物語』が何でここまで嫌われたのかというと、とにかく狂った展開だらけの恋愛映画なのだ。以下全てネタバレ。

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虐待される赤ちゃん

  • 映画が始まると
    夜空の星とは惑星の光ではありません。天使になった人の翼なのです」
    というぶっ飛んだ解説が出てくる。人間が死ぬと星になれるので、昔は夜空に星が無かったらしい。
  • 映画の舞台は1895年のニューヨーク。ある移民の夫婦が結核を理由にアメリカから追放された。夫婦には生まれたばかりの赤ちゃんがいた。「この子だけはアメリカで生きて欲しい」。そう考えた夫婦は船の模型を盗んで、赤ちゃんを模型に載せて海に流すことにした。その赤ちゃん絶対に死ぬよね。
  • しかし赤ちゃんは死ななかった。ニューヨークにまで流れ着いた赤ちゃんは大人になって立派なゴロツキになった。こいつがコリン・ファレル演じる主人公だ。主な仕事は窃盗というクズ。
  • 主人公と両親をつなぐのは模型についていた金属製のネームプレートだ。このネームプレートがめっちゃ酷い伏線なので覚えておいてください。
  • 主人公はギャング仲間からも命を狙われるような人間のクズなので、ギャングから逃げるために白馬を盗む。その白馬はジャンプすると高さ5メートルは飛べる名馬だった。いや飛びすぎだろ!
  • 主人公は白馬の異常な運動能力に疑問を持ちつつも、逃走資金を手に入れるため白馬に乗った泥棒になる。


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両親の深い愛情が故に海に流される赤ちゃんです。虐待ではありません。

高熱のヒロイン

  • ニューヨークのとある豪邸には若い赤毛の美女がいた(ヒロイン)。赤毛の美女は結核のためいつも高熱を出していた。
  • この映画の前半ではヒロインが高熱を下げるためにあらゆる努力をしているんだけど、その努力が異常である。以下が解熱のための彼女の努力。

    • ヒロインの部屋の窓は真冬でも常に開けっ放し。だから家族は家の中でもコートを着ている。
    • 熱が出るとヒロインは池に潜って体熱を下げる(注:雪が積もるくらいの真冬)。
    • 積雪でも薄着で外出するのは当然のこと。さらに裸足で雪道を歩く
    • 豪邸の屋上にテントを作ってそこで暮らしている。そのためヒロインの着替えは公開ストリップショーと化す。


  • その豪邸に主人公が強盗目的で拳銃を持って押しこむ。そこにいたのは当然赤毛のヒロイン。ところが彼女は怯えるどころか、「私21歳なのにキスもしたことない」ということで強盗にお茶を出す。強盗の主人公はラッキー!

  • 主人公は赤毛のヒロインに惚れてしまい、「俺は泥棒だが最高の盗品(ヒロイン)はまだ盗めていないぜ」とヒロインに告白する。

  • だが主人公はギャングから命を狙われているし、ヒロインは結核だ。悩んだ主人公はネイティブアメリカンに相談する。ネイティブアメリカンは「ヒロインはきっとオマエの運命の人だ。それとオマエの白馬だけど、あれは魂の案内役だ」とアドバイス

  • 主人公はヒロインと付き合う決意をする。


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主人公とヒロインの雪道デート。靴を履かずに素足でやってきた彼女に気を使う主人公の粋なセリフ。

ギャングのボス登場

  • ギャングのボスを演じるのはラッセル・クロウだ。ボスは主人公のような手下を使って強盗を繰り返し宝石を集めていた。宝石を集める理由は財産目的じゃなくて、宝石の光がGPSみたいな機能を持っていて人探しに便利だからだ。多くの観客はこの瞬間「あ、この映画狂っている」って気が付きます。
  • ギャングのボスはレストランに行って「フクロウ料理を出してくれ」とジョークを飛ばす。「フクロウ料理はございません」と答えたウェイターはその瞬間に殺された
  • ボスはウェイターの血を使ってテーブルクロスに絵を描いた。そして赤毛の女を探しだせ!と命令を出す。あまりにも展開が急すぎる上に、絵が抽象的すぎる。

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この絵だけでニューヨークで人探ししなきゃいけないギャングがかわいそう。

白馬に乗った王子様の実写化

  • でもヒロインはすぐにギャングに見つかってしまった。ボスはなぜか赤毛の女を殺す理由があるらしい。ボスは「俺の好物は処女の鮮血だ!」と最低のセリフを吐きながらヒロインを切り殺そうとする!
  • そのとき白馬に乗った王子様ならぬ白馬に乗った泥棒様の主人公が登場!ヒロインをかっさらって助ける。
  • 白馬に乗って逃げる主人公とヒロイン、ギャングは車で追ってくる。もう逃げられない!ってときに白馬に翼が映えて主人公とヒロインは空を飛んで逃げた
  • ギャングのボスはなぜかニューヨークの郊外に出ることが出来ないらしい。ちなみにボスはこのとき「ヒロインを逃した部下」を射殺するんだけど、どう考えてもヒロインを逃したのはボス本人で、部下は何も失敗していない。


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ここは真面目なシーンのはずだけど爆笑できる。パカラッパカラッという蹄の音だけで笑える。

ようやく映画の設定が明らかになる!

  • ギャングのボスは魔王に会いに行く。え、魔王ってどういうこと?
  • ここでこの映画の狂った設定の秘密が明らかになる。ギャングの正体は悪魔の軍団で、ギャングのボスは悪魔デーモン。悪が勝利するためには愛の奇跡がジャマなので、悪の軍団はひたすら他人の恋愛を妨害しているのだ。
  • ついに魔王ルシファーが登場!でも魔王ルシファーの外見がウィル・スミス
  • 魔王ルシファーが言うには「ニューヨーク郊外はデーモンの管轄じゃないから、奇跡をジャマしたらダメ」ということ。
  • ボス(デーモン)は堕天使(外見はただのオッサン)を呼び出してヒロインのカクテルに毒を入れるように命令する。


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ルシファーを演じるのはウィル・スミス。

初めてのエッチでイってしまうヒロイン(性的な意味ではありません)

  • 主人公はヒロインの父親と会うことにした。まだ二回しか会ってないのに、愛を宣言する主人公。二人の会話が直球の応酬で笑ってしまう。
    主「僕は娘さんを愛しています!」
    父「キミの職業は?」
    主「泥棒です」
    父「娘の病気のことは知っているな?」
    主「愛の力で死を避けられるのではないでしょうか!」
    父「無理だ」
  • ヒロインの別荘には小学生たちが作った「お姫様のベッド」がある。ベッドに女性の死体を載せて男がキスすると生き返るらしい。
  • ヒロインの豪邸の暖房が暴走して爆発寸前となった。豪邸なのでボイラーも巨大なのだ。ヒロインの父親は「最後まで残るのが船長の役目」と言って家から出ようとしない。主人公が勇気と機転を効かせてボイラーの蒸気を抜いて暖房のメルトダウンは免れた。
  • ヒロインの父親からも認められた主人公は正式にヒロインとデートすることになった。その夜、ふたりは初体験をした。セックスが終わると彼女はイッてしまった。性的な意味ではなく生的な意味で。ヒロインはデートの最中に毒のカクテルを飲んだので死んでしまったのだ。
  • 主人公は大急ぎで「お姫様のベッド」にヒロインを運んでキスするが、彼女は生き返らない。悲劇的なシーンだけど、ハダカの男女がベットでキスしているのでエロいシーンにも見える。


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腹下死したヒロイン。このシーンはかなりビックリする。

100年後

  • ヒロインの葬式が終わり、主人公が白馬に乗ってニューヨークに戻ると彼は50人くらいのギャングに取り囲まれた。意外にも主人公は50人相手に互角に戦う!しかしギャングのボスから頭突きを食らうと主人公は海に転落する。ちなみに白馬は飛んで逃げていった(主人公乗せて逃げろよ!)。
  • 主人公はそのショックで記憶喪失になった。それから100年近くの時が流れて2014年。主人公はまったく年を経っていなかった。主人公は100年間、浮浪者として生きていたのだ。
  • 「主人公はなぜ年をとらないのか?」と激しく疑問に思うが、劇中「ヒロインに愛されているから年を取らない」と説明がある。説明になっていない。
  • 主人公は新聞社の100年前の記事を読んで記憶喪失から回復する。そして今はおばあちゃんになったヒロインの妹に会う。この妹さん、設定上100歳オーバーのはずなんだけど、そうには見えない。ちなみに妹さんを演じるのは『北北西に進路を取れ』のエヴァ・マリー・セイント。

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ギャングから逃げるために空を飛ぶ白馬。主人公乗せてやれよ。

真の戦いはこれからだ!

  • デーモンであるギャングのボス同じく100年間、年を経っていなかった。ボスは主人公が死んでいなかったことに気がつくと「殺す赤毛を間違えた!」と言う。悪の軍団のジャマとなる赤毛の美女は別にいるとのこと。もう映画は後半なんだけど誰だよ!
  • 魔王ルシファーとデーモンが善と悪の戦いについて語り合う。
    「どんだけ善の奇跡を潰しても希望が消えない。まるで幼稚園のインフルエンザだ。」
    善と悪の戦いのわりには例えがショボい。
  • 主人公は後半初登場キャラの幼女が赤毛なことに気がつく。幼女は末期ガンだった。主人公は「ボクはこの幼女を助けるために生きて来たのだ!」だとキモい使命に生きる。
  • そこにギャングたちが追ってくるが、100年ぶりに登場した白馬が助けてくれた。白馬は2014年のニューヨークをひとっ飛びする。
  • 主人公は氷の湖の上にギャングたちをおびき出し、白馬が蹄で氷を割った。20人くらいのギャングは凍った湖の中で全員溺れ死んだ。一人の少女を助けるために皆殺し!
  • 主人公の前にギャングのボスが立ちはだかる。ボコボコ殴りあう二人。絵的にはショボいが善と悪の最終決戦である
  • 前半で死んだヒロインは星になっていたので、キラキラ光ることでギャングのボスの視界をジャマして主人公を応援する。
  • 主人公はネームプレートをナイフ代わりにしてボスを刺し殺す!だったら殴りあってないで最初からソレ使えよ!っつーかネームプレートの伏線ってこれかよ!あとネームプレートが丸いんだけど、どうやって刺したの?

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ニューヨークの空を飛ぶ白馬。

そしてラストシーン

  • ギャングのボスは死んだが、ガンの幼女も死んでしまった。だが主人公は幼女を「お姫様のベッド」に寝かせて「愛しているよ、ボクがキミを救ってあげるからね」とキモいことを言いながらオデコにキスをする。そうすると幼女は蘇ったしガンも治った
  • 映画のラストシーン。ナレーションで「人間は誰もが平等に愛されている」「誰もがかけがえのない存在」とか言っているが、ギャングを皆殺しにしたインパクトが強すぎてナレーションが胡散臭い。
  • ラストシーン。主人公は星になったヒロインに会うために白馬に乗って宇宙を目指すのだった

解説

監督はこれがデビューとなるアキヴァ・ゴールズマン。アキヴァ・ゴールズマンは傑作『ビューティフル・マインド』の脚本家で、ラッセル・クロウジェニファー・コネリーが『ニューヨーク冬物語』に出演しているのもその縁だろう。原作は文芸ファンタジーの長編小説で、原作をズタズタに省略して映画化した。そのため原作ファンも怒っているらしい。
とにかく「愛があれば何でもできる」な主人公側とリア充爆発しろ」を実践する悪側のどーしょうもない戦いを描いた作品であった。


「皆殺し映画通信」でもこの映画は取り上げられています!

『ニューヨーク 冬物語』 光のシーンでは常に「キラーン☆彡」 [♪akiraのスットコ映画の夕べ] -3,900文字- | 柳下毅一郎の皆殺し映画通信