破壊屋ブログ

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『TNGパトレイバー 首都決戦』のクライマックスを解説する

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『THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』を観てきた。押井守の実写映画と言えば数々の大事故作品があるけど、『首都決戦』はそのような事故作品ではなかったので一安心した。
そして予想通りというか情報通りというか『機動警察パトレイバー 2 the Movie(以下P2)』の実写版だった。

P2で何故主人公たちはヘルハウンドと戦わないのか?

『P2』といえば、今年のアニメ映画ベストテン:結果発表 - 男の魂に火をつけろ!の企画であらゆるアニメを押しのけて2位になった映画。そして『P2』で有名なシーンといえば、10分近くも繰り広げられる戦闘ヘリ(ヘルハウンド)による東京襲撃シーンだ。このシーンにはものすごい特徴がある。主人公たちがヘルハウンドと戦わない。それ以前にヘルハウンドとの絡みすらほとんどない。何故なら戦闘ヘリ:ヘルハウンドは神が与えた罰だから。神の罰と戦うことはできない。


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『P2』で畳み掛けるように何度も鳥が出てくるシーン。「鳥=神の視点を持つもの」として解釈する。

首都決戦のグレイゴースト

ところが首都決戦は「戦闘ヘリ=神の罰」から「戦闘ヘリ=幽霊」に変更された。『首都決戦』で出てくるヘリは明らかに幽霊だ。名前が『グレイゴースト』だし、パイロットは「存在しない人」だ。『P2』と違って神の罰ではないので主人公たちは直接対決できる。この「幽霊と戦う」「物理的に見えない相手と戦う」というのは押井守映画で何度も描かれている要素だ。
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『攻殻機動隊』で見えない敵と戦うシーン。右下のキャラが一人でナイフを振り回している。


ここからネタバレ
















なぜ最後の攻撃は当たったのか?

『首都決戦』は『P2』と違って娯楽映画路線なので、見えない敵とどうやって戦うか?というのは戦術的に盛り上げる要素だ。じゃあどうやって戦うのか?
その答えは目視で戦うだ。見えないのに目視で戦うというのは変なように感じるかもしれないけど、「レーダーを使って戦う」というのは押井守的には不正解だ。
押井守はずっと昔から虚構の世界を描いてきた。そして虚構に対抗できるのは自分を信じることと自分の目だけ。だからモニターのスイッチを切ってコックピットから飛び出した泉野明なら幽霊でも倒すことができるのだ。

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ちなみに警察や自衛隊が手も足も出なかったグレイゴーストなのに、女性3人だけはアッサリと銃を命中させることができる。虚構とか幽霊を打ち破れるのは常に女性というのも押井守作品の常である。ゲームばっかりやってて母ちゃんやガールフレンドや嫁に怒られた経験でもあるのだろうか。
あ、でも『うる星やつら2』だとあたるが欲望だけで虚構を打ち破っていたな。


パトレイバーと虚構については以前Cakesで書いたのでそちらを参照してください。cakes.mu