恵まれているとは言えない製作状況と権力が強すぎる芸能事務所、そして日本映画はとにかく製作本数が多い。だから日本映画はよく展開が被る。ということは破壊屋でよくネタにしている。
(本文とはまったく関係ないけど、とりあえずピンク・レディー)
テン年代は地方活性化を取り上げる映画が大量に製作された。政府も地方活性化を目指していた(もはや過去形)。下の画像は『初恋スケッチ まいっちんぐマチコ先生』の1シーンで、背後には「郷土愛」「絶対反対」「I LOVE 地元」といった文字が見える。主人公たちは地元の開発に反対するグループで、東京から来た開発側が悪人だ。
2016年、地方活性化を目指す人は悪人
2016年には地方活性化を目指している人が実は悪人だった!というオチの映画が、俺が観ただけでも4本も公開された。ネタバレになるけど下記は全部同じ悪人トリックの2016年の映画だ。
- 白鳥麗子でございます!THE MOVIE
- 探偵ミタライの事件簿 星籠の海
- ヒーローマニア 生活
- セーラー服と機関銃 卒業
これらの映画は東京から来た地方活性化を訴える人が、結局は地方を搾取していく現状を映し出している。
2018年、地方はイラストで盛り上げる
で、2018年にまたオチ被りの映画が登場した。そのオチとは
「主人公が書くイラストが地方を盛り上げる」
という映画だ。下記の映画が被った。
- 初恋スケッチ まいっちんぐマチコ先生
- 青夏 きみに恋した30日
実際に2018年からイラストを使った地方活性化イベントが増えてきているのだ。ゆるキャラブームが終わりつつあるので、今度はイラストで盛り上げようとしている。ゆるキャラって結構制限多いのでイラストのほうが自由に展開できるのだろう。
これらのオチ被りは作り手の手抜きではなく、むしろその逆。地方の持つ問題と可能性を映画で表現しようと真剣に取り組んだ結果、同じ展開になる。
2019年、地方はUFOを待つ
そして2019年にまた新しいオチ被りの地方活性化映画があった。ネタバレになるからタイトルは書かないけど、当該シーンの画像がコレ↓
この映画たちのクライマックスは何をやっているのかというと、地方在住の人たちがUFOを待っているのだ。
地方で住む人たちのちょっとしたお祭りとしてUFOが使われている。UFOが本当に来るかどうかじゃなくて、UFOをみんなで待つ一体感をお祭りのように楽しんでいる。ほとんどの地方映画が「地元のお祭りをクライマックス」というのをやっているので、作り手たちがあえて違う展開にしようとしたらオチが被ってしまったのだ。
日本映画とUFO
一応言っておくけど、突然UFOネタをぶっこんでくるのは昔から日本映画の得意技だ(『北の国から』もやっていたよね…)。無神論者が多く、島国で、深刻な治安問題もない日本では「人知を超えた異邦人」や「非日常」を表現するのにUFOは最適だった。で、そのうちUFOは人間同士の信頼関係を表現するときに使われるようになった。「UFOを信じるか?」じゃなくて「UFOを信じる人を友として信じるか?」という表現に使われてきた。同時にUFOは人間の孤独を表現する時にも使われてきた。UFOを信じる人は周りから浮いている人みたいな扱い。
ところが2019年にUFOが一体感の表現として使われるようになったのは興味深い。これからの時代は人々の一体感がキーワードになるのかも。UFOは世相を映す鏡だと思う。
↑映画『ウォータームーン』。このシーンはUFOに乗って日本にやってきた修行僧宇宙人の長渕剛が捕獲されて合掌するシーン。このぐらいメチャクチャなことやらないとオチ被りは避けられない。もちろん駄作。