このエントリが素晴らしかったです↓。解説も分かりやすくて面白いし、私でも知らない作品が結構ありました。
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ちょっと便乗して、私からもループものについて補足紹介します。
12:01 PM
1978年 アメリカの小説

パクられ続けた元祖ループもの
前述のエントリでは映画『タイムアクセル12:01』として紹介されていた作品です。『タイムアクセル12:01』は二回目の映画化で内容は原作から大幅に変わっています。原作に忠実な一回目の映画化は1990年の短編映画でYOUTUBEで見ることが出来ます。
平凡なサラリーマンが同じ日の午後12時1分に戻り続ける。という設定で、ループものの大傑作『恋はデジャ・ブ』は『12:01 PM』の盗作では?と問題になったこともあります。また日本の『世にも奇妙な物語』でも『12:01 PM』と同じ設定の作品は複数あります。
オリジナルのネタバレ
短編なのでネタバレまで書いてしまいます。毎日が午後12時1分に戻り続けていることに気が付いた主人公は、この生き地獄を終わらせるために自殺を選ぶ………と午後12時1分に戻った!という究極の絶望です。
リバース
1997年 アメリカ映画

DV夫の殺人事件がループ!
原題の『Retroactive』は「遡及的」という意味です、アメリカの砂漠でDV夫(ジェームズ・ベルーシが「実生活でも女性殴ってそう」と思わせるレベルの熱演)が20分の間に殺人事件を起こす。ヒロインは通りすがりで偶然巻き込まれただけなので、砂漠の中を逃げる。しかしその砂漠ではタイムマシンの実験が行われていた!ヒロインは殺人事件が起きる20分前に戻るが、その後の悲劇を避けることはできるのか?
90年代アクション映画にもループものがあった
派手さが売りだった90年代のアクション映画にも、まさかのループものがあったのです。ループ描写は秀逸です。セリフを使わずに実験ネズミの動きで観客に説明する手法や、観客をヒロインに感情移入させておいてループの視点をヒロイン以外にするツイストもお見事です。
その一方でアクション描写はかなりの大味で雑。予告編を貼っておきますが、これだけでお腹いっぱいになります。90年代に製作されたループものという斬新すぎる作品なのに、世間で語られることも後続への影響もない不幸な作品です。
ラン・ローラ・ラン
後続への影響が大きすぎる作品
20分後にギャングに殺されてしまう恋人男性のために、ローラという女性が何とか(例:強盗)しようとする。この20分を三回繰り返す。
20分後に死ぬという緊張感、街の中を走る疾走感、ビビッドカラーの髪型、アニメを使った演出の切替など『リバース』とは打って変わって後続への影響が大きすぎる作品です。本作を真似したミュージックビデオは複数存在します。
これはループものなのか?
『ラン・ローラ・ラン』がループものなのか?は議論が別れるところです。ループものというよりも、一つの事件を三つのパターンで見せているだけ。と解釈すればループものではありません。これをループものとして扱ってしまうと、例えば黒澤明の映画『羅生門』や芥川龍之介の小説『藪の中』もループものになってしまう。
ややこしいことに、ローラがループを経験することで銃の扱いが上手くなっている描写があり、そういう意味ではループものの条件を満たしています。
ネイキッド
2017年 アメリカ映画

デジャ・ヴな設定
『恋はデジャ・ヴ』の影響を受けて作られた2000年のスウェーデン映画に『Naken』があって、そのハリウッドリメイクなので逆輸入的な作品です。
新郎が結婚式の数時間前にループし続ける…という設定ですが、大きな特徴はループのスタート地点が全裸だということ!主人公は結婚式会場に急ぐ前に股間を隠さなければならない!そしてループを繰り返すうちに結婚式に色々と問題があることも判明していくミステリーとしての面白さもあります。
全裸タイム
『ターミネーター』の影響なのかタイムスリップと全裸は相性が良いです。「服がタイムスリップできないなら、何で無機質のターミネーターはタイムスリップできるんだよ!」というツッコミも定番ですが。
日本映画の『見たものの記録』では全裸の男性がパンツを履くとタイムスリップが発動するので、また全裸の状態に戻ってしまう。というネタがありました。他にはタイムスリップして妻の少女時代に会いに行くという素敵な設定にも関わらずタイムスリップ時が全裸なので、性犯罪者にしか見えない『きみがぼくを見つけた日』があります。
シー・ユー・イエスタデイ
2019年 アメリカ映画

ループものなのに現実的な映画
科学大好きな高校生たちがうっかりタイムマシンを開発する…という設定とポスターやタイトルから判断すると非現実的で楽しそうな映画です。でも実は現実的で辛い映画です。お兄さんが警察に誤射で射殺される事件が起きており、高校生たちはこの過去を変えるためにループするのですが、全く改善しません。何度ループしても改善せずに黒人が犠牲になり続ける映画です。観客は観ていて戸惑います。ループを繰り返すうちに警察が悪いわけでもない事が判明するので、原因が不明瞭になり益々戸惑います。
どうして解決しないのか?
これはアメリカで黒人や学生がすぐに射殺される現状があるのに、何も出来ずに今も犠牲が出続けている。という状況を観客に突きつける映画です。どうして劇中で問題が解決しないのか?それは現実で問題が解決していないからです。
MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない
デスマーチがループ
ループものの面白いところはどんな設定でも斬新さを感じるところですが、この映画の設定は斬新すぎるにもほどがあります。その設定とは職場がタイムループしている事実を上司に順次報告していくというもの!面白いのかソレ?と疑いの気持ちしか無いタイトルですが、これが面白い!上司に報告はあくまでも「掴み」の部分であって、本筋はもちろんタイムループの謎解きです。
日本映画の欠点を克服
日本映画は予算もスケジュールも厳しく、延々と同じ場所で撮影するので場面転換が乏しい。破壊屋で何度か指摘してきた日本映画の欠点ですが、ループものはこの欠点を克服できます。ここ数年、日本映画のループものが作られているのはそんな事情もあると思います。
もう一つ指摘してきた欠点で、日本映画は「みんなで徹夜して仕事を頑張る」という高市早苗総裁の馬車馬精神をクライマックスにしている映画が多いです*1。これは過重労働で苦しんできた日本人には感情移入しやすい一方で、過重労働を肯定的に描いてしまっているという欠点がありました。この映画はその欠点を肯定も否定もしていて、日本人好みの作品に仕上がっています。
*1:『舟を編む』とか

