破壊屋ブログ

ネタ系映画ブログです。管理人はこの人→http://hakaiya.com/giccho

映画冤罪事件とスリー・ビルボードの真犯人騒動

三行で結論

ネット上によくある「あの映画の真犯人はアイツだ!!」という記事ですが、

ほぼ確実に真犯人も映画の解釈も間違えているトンデモ記事です。

あの類の記事を真に受けるのはやめましょう。


というわけで今回はこのような映画冤罪事件Twitter上で話題になったスリー・ビルボード』の真犯人騒動を解説します。ネタバレはありませんが、ネタバレに敏感な人は気に障ると思うので後半まで読み飛ばしてください。あとリンクは貼りませんが、ググればすぐに当該記事が出てきます。

まずは過去に起きた映画の真犯人間違えている事件です。まあ私も真犯人の解説記事書いたことあるんですけどね。

『セブン』の真犯人はモーガン・フリーマン

f:id:hakaiya:20190112101724j:plain
映画『セブン』はトンデモ解釈ネタの宝庫で、誤読映画の王様とも言えます。特に根強いのは「モーガン・フリーマンが真犯人だった」説です。もちろんバカバカしいトンデモ理論なんですが、あの手この手でモーガン・フリーマン真犯人説を力説している記事が複数あります。

『シャッター・アイランド』の放火犯はレオナルド・ディカプリオ

シャッター アイランド (字幕版)
この説は某映画評論の記事です。これは流石に公開当時に私が反論記事を書きました。ただこの誤読はちょっと同情できる側面もあって、90年代後半からゼロ年代にかけて主人公が真犯人だったというアメリカ映画がたくさん作られていたんですね。『シャッター・アイランド』もその路線だと匂わせておいて、別のトリックを仕掛けた意欲作だったので誤読を招きました。

『怒り』の真犯人は3人の中にいない説

怒り
『怒り』は3人の男性の中に殺人犯がいるというミステリーで、もちろん3人の内の誰かが真犯人です。しかしこれを否定する映画評論が実際に存在しており
「劇中の犯人や沖縄の「怒り」の意味をぜんぜん理解してねーじゃねーか!」
と怒りたくなります。ちなみにその記事を書いた人が主張する真犯人は
「取り調べしていた警察官」
だそうです。しかもあの警察官は劇中の犯人と実は双子だったからDNA鑑定もごまかせたってトンデモな根拠を出しています。

スネーク・アイズ』のヒロインは犯人の仲間説

スネーク・アイズ [DVD]

ヒロインであるジュリアが犯人の仲間というのは、映画のパンフレットに載っていた珍解説です。下の画像がそのパンフレットの文章です。
f:id:hakaiya:20190112102323p:plain
公開当時別の映画ライターが
「何であんなデタラメな映画評をパンフレットに載せるんだ!」
と怒っていました。 もちろんヒロインは犯人ではありません。
ただ『スネーク・アイズ』には誤読を誘発させる仕掛けがあるのです。映画のエンドクレジットは5分間ずっと工事現場が写っているだけ。映画を最後まで観ると工事現場の意味がわかるのですが、この終わり方を深読みしてトンデモ解釈する人を続出させました。
ちなみにブライアン・デ・パルマ監督のミステリー映画は映画が終わる瞬間に真相が判明したりするので、エンドクレジット周辺をカットするテレビ放映だと映画の真相が完全にカットされていたりします。


交渉人 真下正義』の真犯人は小泉孝太郎

交渉人 真下正義

これは非常に珍しい
「映画のトンデモ解釈よりも映画本編のトリックのほうが遥かにトンデモ」
という物件です。『交渉人 真下正義』は押井守監督の『機動警察パトレイバー 劇場版』の帆場暎一のトリック、つまり
「真犯人が既に存在しない」
をやろうとしたんですね。『機動警察パトレイバー 劇場版』は映画のオープニングで真犯人がいきなり自殺するので観客が納得できる形です。しかし『交渉人 真下正義』は
「犯人は幽霊だけど存在する。存在するけど幽霊だから正体はわからない」
というメチャクチャな理論を観客に押し付けたのです。ゼロ年代のフジテレビはこういう暴走した映画を連発していました。
その結果戸惑った観客たちが
「真犯人は小泉孝太郎じゃないか?だってアクセサリーとか怪しい」
という謎理論で盛り上がりました。

ちなみに
「犯人は存在するけど幽霊」
というトリックですが、何と本家本元の押井守監督が某実写映画でこのトリックを見事に使いました。

『スリー・ビルボード』の真犯人は署長説

スリー・ビルボード (字幕版)
上記にあげてきた珍説記事たちは、当たり前ですが賛同者はほとんどいません
それに『スリー・ビルボード』を観た人なら
「署長が真犯人だなんてデマだよ」
とすぐにわかるはずです。ところが現在、Twitter上で大勢の人がデマを信じているんですね。

どうして真犯人を間違えるのか?

真犯人を間違えた記事を書く人は基本的に頭が良い人です。彼らをネタにしている私ですが、記事を読んでいると実は
「俺より頭いいなー」
と思ってます。そして彼らは自分が頭が良いことをアピールしたい気持ちが文章に思いっきり出ています。だから
「誰も知らない自分だけが気づいた真相」
というのを勝手に作り出してしまうんですね。勝手に作り出せるほど頭が良いのです。私はこれをシャッター・アイランド現象って呼んでます。



『スリー・ビルボード』の解説がTwitter上で話題になった現象について

記事の内容

okaemonblog.jugem.jp
↑この『スリー・ビルボード』の解説記事の中から、特にメチャクチャな部分を私が抽出してみました。

  • 署長は騎乗位好きだ。騎乗位でレイプすれば署長が吐血しても被害者に血がかからない。これは署長犯人説のヒントだ。
  • 娘は母親のことを「腐れマ〇コ」と呼んでいたのだろう。だから殺された娘は母親のデート相手に憑依して「チーズ臭い」食べ物を選んだ

f:id:hakaiya:20190112103937p:plain

  • セドリックという名前の登場人物がいるが、セドリックは日産の車だ。そして「ニサン」はユダヤ教の暦で1月という意味。ユダヤ教の1月はキリスト教だと復活祭の時期。だから映画に復活祭のシーンがある。
  • 母親の元に鹿が来るシーンは、鹿が広告の間違いを正そうとしているのに母親が気づかない大爆笑シーン
  • 虫がひっくり返っている(BACK)のは、母親の背後(BACK)に警察署があって、警察署に犯人がいると虫が伝えようとしたから。

f:id:hakaiya:20190112111205p:plain

  • 殺された娘は最後に成仏できた。『ゴースト ニューヨークの幻』の幽霊の名前が「サム」だ。だから『ゴースト ニューヨークの幻』を想起させるために同じ「サム」という名前の俳優のサム・ロックウェルが『スリー・ビルボード』に出演している。
  • 娘が成仏できた理由は、母親がサム・ロックウェルに「ありがとう」と言ったから。母親は娘に「ありがとう」と言ったことがない。
  • 女性が動物臭いとバカにされているのは、殺された娘が動物に憑依したあとに女性に憑依したので動物の匂いがするから。
  • この映画の登場人物がABBAの『チキチータ』を聴いている理由は、新約聖書にある「ABBA, Father」という一説を観客に想起させるため。
  • ラストシーンの意味はセカンドバージン喪失旅行

今回の現象のヤバいところ

この『スリー・ビルボード』の解説記事は明らかな怪文書です。深読みというか、まるでバカ読みです。でも書いた人は
「私はこういう芸です」
「信じるも信じないも全てあなた次第」
ときちんと明言していて、ネタ系解説の書き手として誠実な方で好感が持てます。知識もあります。しかも今後は署長真犯人説を自分で否定するそうです。

私がヤバいと思ったのは、あの怪文書を信じる人がTwitter上で続出した現象です。

なぜデマ解説を大勢が信じた?

解説の文字数が多いからです。数えてみましたが15万文字ありました。あれが140文字だったら誰も信じません。試しに140文字にして私がツイートしてみました。

1万人近い私のフォロワーのうち数人しかRTしていない上に、RTした人はあの記事信じていない。

情報を多くして信頼性を高めるというのはよくあるテクニックです。投資信託詐欺に騙される人は「年利20%!」とかに騙されたのではなくて、投資信託の情報をちゃんと調べるからこそ騙されているのです。このテクニックは私もたった今使っています。このエントリの最初にある「過去の映画冤罪」は本来『スリー・ビルボード』騒動とは関係のない情報なのに、私の記事の信頼性を高めるためにわざと載せている。

あとTwitterは感情が伝播しやすいツールだというのも大きいはずです。「こんな視点があったんだ!」という驚きの感情がTwitterで伝播したのであって、書いてある内容は関係なかったりするんですね。


ウロコを落としただけなのに

例の『スリー・ビルボード』の真犯人解説記事は「目から鱗が落ちる」という表現を使っているため、あのエントリを読んだ大勢の人が「目から鱗が落ちました!」とTwitter上に感想書いてます。
f:id:hakaiya:20190112104759p:plain
私からあなた達にアドバイスがあります。その鱗はあなたにとって大切なものです。決して落とさないでください。



オマケ

鑑賞後に観客が推理する映画

隠された記憶 [DVD]
真犯人が設定されているが、劇中では明示されず、観客が推理する。という映画は実在します。フランソワ・オゾン監督やミヒャエル・ハネケ監督が使うテクニックです。 一番有名なのはミヒャエル・ハネケ監督の『隠された記憶』。劇中では真犯人の断定がないのですが、ラストシーンを集中して見ているとおぼろげながら真犯人がわかります。

逆に鑑賞後に観客が推理する必要のない映画

イニシエーション・ラブ
堤幸彦監督の『イニシエーション・ラブ』は衝撃的なトリックを使った映画ですが、映画のラストシーン5分使って全シーンのトリックを解説するという超親切設計の映画です。巻き戻し再生する必要も、ググってトリックを調べる必要もありません。
「あなたは必ず2回観る」
というキャッチコピーも
「2回観る必要がない」
とネタにされました。

敗北した敵ヒロインと浮気するスーパーヒーロー!『宇宙の法 黎明編』

幸福の科学は、そんじょそこらの右寄り映画よりもさらに右を行く保守映画を作ってきたはずですが、彼らの最新作『宇宙の法 黎明編』がまさかのリベラル路線のストーリー!右を向き続けた結果、半周回って左になったのでしょうか。



f:id:hakaiya:20181020064735p:plain
↓はアメリカ版ポスターなんだけど、このふたりは悪役!
f:id:hakaiya:20181020062153j:plain

解説の前に謝罪

というわけで例によって完全ネタバレ解説しますが、解説前に一つ謝罪を。『宇宙の法 黎明編(The Laws of The Universe - Part 1)』は『UFO学園の秘密(The Laws of The Universe - Part 0』の続編なのですが、『UFO学園の秘密』公開当時に俺は「絶対に続編できない」とバカにしてきました。でも本当に続編作ってしまった。これが彼らの信じる力か!俺の発言を撤回してお詫びします。

前作の主人公たちのその後


スーパーヒーローに変身した主人公。
https://laws-of-universe.hspicturesstudio.jp/img/part1/page/character/character/rey_02.jpg

  • 『UFO学園の秘密』で高校生だった主人公たちチーム・フューチャーは、ナスカ大学で学生生活を送っていた。どうでもいいけど「ナスカ」ってペルーの地名が日本の学校名になっているのって変だよな。
  • 前作では超絶カッコ良かった主人公が進路を決めずに八つ当たりする男で、前作ではダメ人間だったエイスケが配信で一発大当してモテモテキャラになっているという逆転ネタが良い。
  • 彼らは大学の勉強や進路の準備に備える一方で、アメリカにテレポートしてヒーロー活動も行っていた。ここから映画はいきなりスーパーヒーローものになる。

スーパーヒーロー登場


ヒロインのファントム・イリュージョン。スカートを使わず、胸の谷間を見せないというポリコレデザインだけど、今作でミニスカ巨乳女にヒロインの座を奪われる。
https://laws-of-universe.hspicturesstudio.jp/img/part1/page/character/character/anna_02.jpg
チーム・フューチャーたちはギャラクシーフォースという力を使ってヒーローに変身するのだ。ギャラクシーフォースって何だよ!?とツッコミたくなるが、劇中では「力を目覚めさせる力」と説明になっていない説明がある。あと彼らのヒーロー名がカッコ良すぎて恥ずかしい

  • 主人公は、獣人になるスペース・コマンダー
  • 主人公の恋人は、幻影を見せるファントム・イリュージョン
  • 主人公のライバルは、騎士の格好をしたホワイトナイト
  • テレポート能力のあるアブソリュート・サンクチュアリ
  • 姿を消せるインビジブル・スピア

敵を殺すのが楽しいヒーロー、大虐殺する


ホワイトナイトは闇落ちして、ポスターにも出てくるブラックナイトに変身する。
https://laws-of-universe.hspicturesstudio.jp/img/part1/page/character/character/tyler_02.jpg

  • だがヒーローとして敵を虐待することが楽しくなっていたホワイトナイトは、悪の少年:ダハールにそそのかされ、悪の騎士ブラックナイトに変身してしまった。
  • どうでもいいけど「悪のブラックナイト」はアメリカで公開した時に人種的な意味で大丈夫だったのか?かといって「ダークナイト」にしちゃうと別の映画だしなぁ。
  • ブラックナイトはダハールと共に3億3千万年前にタイムスリップする。何で3億3千万年前かというと、幸福の科学の教義に「3億3千万年前に大川隆法が地球に登場した」というのがあるからだ。
  • そこはレプタリアンたちの星だった。ブラックナイトの出身星プレアデウスはレプタリアンによって虐殺されていた。ブラックナイトはその恨みを晴らそうとする。
  • ブラックナイトはレプタリアンの星の天地を逆にすることで星を滅ぼす。このシーンは大迫力の良シーン!

宇宙最強の戦士ザムザ登場


ザムザ。途中しか出てこないにも関わらず主人公以上のインパクトを残す。宇宙最強の戦士でミニスカ巨乳で残虐だけど純情という夢のようなキャラ。
https://laws-of-universe.hspicturesstudio.jp/img/part1/page/character/character/zamuza_01.jpg

  • レプタリアンはほとんど死んだ。生き残ったレプタリアンたちは船に載って地球へ脱出する。彼らを指揮するのは宇宙最強の戦士ザムザだ。ザムザは凶暴で傲慢な性格な女性である。イラつくと部下を殺したりする。
  • 主人公はブラックナイトを連れ戻すために、宇宙連合(幸福の科学の教義に出てくる異星人集団)の力を借りて3億3千万年前にタイムスリップする。
  • 主人公は3億3千万年前の地球でザムザと遭遇。アニメ版ゴジラ並に強いザムザにあっという間に負けたので、彼女の奴隷になる。
  • 主人公もザムザも標的はダハールとブラックナイトなので、一緒に旅に出ることになった。
  • ここでヒロイン交代が発生して、なんとザムザがヒロインになる!凶暴で傲慢な戦士ザムザが光堕ちしていくギャップを楽しむ物語なのだ。

新ヒロイン誕生

  • 主人公とザムザは旅の道中で偶然怪物に襲われる村民を助ける。村民たちは当然ながら「ありがとう」という言葉を伝えるが、「ありがとう」という概念の無いザムザは戸惑う。
  • ザムザは村民たちの結婚式に出席することになった。主人公から「キス」という概念を説明され「愛って何だ?」と考えるようになるザムザ。
  • しかしザムザは村民たちにゴミ出しをお願いされたことで「私は宇宙最強の戦士だぞ!」と激怒。大暴れする。
  • 大暴れするザムザだが、そこに現れた地球の女神と戦って敗北、グルグルに縛られたザムザは「クッ、殺せ!」「だが部下の命だけは助けてやってくれ」と懇願する。
  • だがザムザの部下のレプタリアンたちは、敗北したザムザに興味を無くし裏切る。そしてザムザの代わりにもっと強い戦士であるブラックナイトの部下になる。えーと、レプタリアンたちは自分たちを虐殺したブラックナイトの味方になるっておかしくない?この映画の脚本はそれなりに良いけど、ここは大失敗だと思う。

幸福の科学の写輪眼発動


これが諸悪の根源ダハール。彼の正体はなんと…。
https://laws-of-universe.hspicturesstudio.jp/img/part1/page/character/character/dahar_01.jpg

  • ここからは『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』のソコヴィアみたいな展開なので、だいぶハショる。
  • 主人公はかつての親友だったブラックナイトに再会、戦いに勝利しブラックナイトを正気に戻す。
  • ブラックナイトをそそのかし、レプタリアンの星を滅ぼし地球征服を狙う少年:ダハール。彼の正体がついに明らかになった。ダハールの正体は宇宙の根源的な○であり彼の体は巨大な○○だったのだ!
  • ↑えーとこのオチって現在製作中の有名ハリウッド映画のオチと同じだよね?まさかまだ完成していない本家映画よりも先にこのネタをやるとは…。先にパクるというマンガ『NARUTO』でカカシが見せた写輪眼のような技だ。もしくは『スター・ウォーズ』が日本公開される前に大急ぎで作ったスター・ウォーズパクリ映画の『宇宙からのメッセージ』とか。ちなみにそのハリウッド映画とはコレです。

アルファ神が登場してリベラル演説

  • ダハールは主人公を殺そうとするが、実は主人公に惚れていたザムザが身代わりとなって死ぬ。ちなみに本当のヒロインであるファントム・イリュージョンは一度も出てきていない
  • ザムザは死ぬ前に「お前は奴隷で私が主人だ、お前を守るのは当たり前だ」とつぶやく。
  • ダハールを倒すために地球の神:アルファ神が登場する。アルファ神とは大川隆法が最初に地球に登場したときの形で超イケメン
  • ダハールとアルファ神の壮大な戦いの結果アルファ神が勝利し、ダハールは消える。
  • ここでアルファ神は地球に住む人々(3億年前に人は無いけどさ)に対して「自由に生きよう」「移民は受け入れよう」「移民受け入れは衝突が発生するけど、相手を尊重しよう」というリベラル演説をかます



追記:コメントで指摘されましたが、これはネオリベの意見ですね。

唐突にラストシーン

  • アルファ神はザムザを生き返らせる。
  • 生き返ったザムザを見て主人公は大喜び、思わず抱きつく。ザムザはビックリして「か、勘違いするんじゃない!」と慌ててかわいい。
  • 正気に戻ったホワイト・ナイトとザムザ。彼らはお互いがお互いに民族虐殺しているという仲だけど、「虐殺はどっちもどっち」ということで仲良く握手する。いいのか。
  • 主人公とホワイト・ナイトは3億3千年後に戻ることになった。永遠の別れとなるタイムスリップする直前、ザムザは「私はお前を夫にしても良かった」と主人公にキスする。
  • 映画はいきなりここで終了する!まあ続編作る予定なので、わざと尻切れトンボにしたのだろう。でも教祖が浮気して教義に変更があった宗教だけあって、別のヒロインと恋仲になる映画を作るとは…。


なぜリベラル路線になったのか

幸福の科学の映画は保守寄りだった。尖閣諸島に上陸して撮影して外交問題にまでなった『尖閣ロック』や、侵略から日本を取り戻す『ファイナル・ジャッジメント』などがある。そもそも前作の『UFO学園の秘密』のラストシーンは「真の悪は中国(レプタリアン)だった!続く!」という終わり方だった。しかし今作では保守思想は消え失せ、逆にレプタリアンを受け入れるという物語になっている。
まあ教祖はアレでも作っている人たちはマトモなアニメ作家たちなわけだし。とはいえやはりこの方針転換は衝撃的だ。どうしてこうなったのか?俺の憶測なんだけど…。

  1. 大川隆法が作った最初の原作があまりにも酷すぎて、使い物にならなかった(後述する)。
  2. それで大川隆法は別の原作を作ることにした。内容はザムザと呼ばれる男のレプタリアンが改心する物語。
  3. ザムザの設定が使えると判断した脚本家チーム(個人の名前は発表されていない)が、ザムザをヒロインに変更する。
  4. さらに最近のアメコミ映画(マイティ・ソー バトルロイヤルとかアベンジャーズとか)を参照した脚本を仕上げる。

今回リベラル路線になった最大の原因は、幸福の科学の敵であった「レプタリアン」を同じ地球の仲間として描いている点だ。さらにリベラル寄りのアメコミ映画の影響を受けて「敵と仲良くなる」「移民を受け入れる」というストーリーに仕上がったのだろう。アメコミ参照ネタもパクリにならないように上手く処理している。まあ『アバター』の影響がちょっと大きいけど、幸福の科学にとって『アバター』は重要な映画なので仕方ないかな(異星人との文明交流という映画の設定が教義とマッチしている)。
あと幸福の科学映画は毎回クライマックスで演説があるんだけど、今までの映画だと妄想系専門用語が一杯出てくるので眠いことこの上なし。でも今作はわかりやすい言葉しか使ってないのも特徴的。



追記:コメントで散々ツッコまれましたが、本作は移民政策を推し進めるネオリベ的見解で大川隆法が以前から主張していた内容と一致しています。今回の映画はレプタリアン(幸福の科学の敵)との和解を描いている点が斬新です。

大川隆法が作った最初の原作はどれくらい酷いのか

f:id:hakaiya:20181020063730j:plain
手塚治虫の影響を受けたという原作買って読んだけど本当に酷い。

  • 地球にグレイ型宇宙人がやってきて地球人を誘拐する。その対策を金星人たちが会議で考える。
  • グレイ型宇宙人は地球人を誘拐するときに、無重力光線を発射する。だから無重量光線を無効化する警備ロボットを開発する。その警備ロボットは全長20メートルで透明になれる。
  • 唐突に東北に大震災が発生するが、偉大なる日本人(大川隆法)が千葉を襲った大津波を念力で跳ね返す
  • その日本人はアメリカ人の美女とコンビを組む。
  • 二人は世界から支持されて、全世界の権力を手に入れて防衛兵器を開発する

これはちょっと使えない…。というわけで大川隆法はもう一回原作を作り直す。それがレプタリアンの物語だ。映画はこれが下敷きになっている。


f:id:hakaiya:20181028052740j:plain
地球の全権限を手に入れて兵器開発。中二でも思いつかないストーリーだ。

その他雑感

  • 幸福の科学映画としては間違いなく上位にくる良作だった。
  • 「え?何でここ1,2年のアメコミ映画の影響があるの?」と思ったけど、本作の製作が本格スタートしたのは2018年春という超過密スケジュール。そりゃ確かに最近の映画の影響を受けるのも可能だわ。
  • 過密スケジュールのせいか、アクションシーンはちょっと物足りなさがある。
  • 本職の声優たちを使っているだけあって声優演技は充実。ザムザの声優を担当した千眼美子は芸能人枠とはいえ彼女もノリノリの名演技!
  • 大川隆法は金髪の白人に過剰な思い入れがあるらしく、偉大な人はたいてい金髪の白人なのだ。大川隆法の著作でも「金髪の白人」と外見に言及ある。

https://laws-of-universe.hspicturesstudio.jp/img/part1/page/character/character/alpha_01.jpg
https://laws-of-universe.hspicturesstudio.jp/img/part1/page/character/character/elos_01.jpg
https://laws-of-universe.hspicturesstudio.jp/img/part1/page/character/character/inkar_01.jpg

  • 二週連続ナンバー1という大ヒットとなった本作。でも俺は映画が始まる前に座席一覧をキャプチャして実際の映画館の中と比較したけど、埋まってるはずの連席に人がいなかった。

f:id:hakaiya:20181028055123p:plain
(これは客が少ない横浜ムービルなので、これでも混んでいるほう。ただし実際の劇場はさらに人が少なかった)

君の名はエル・カンターレ『君のまなざし』

この「君」とは当然ながら

万人の上に立って天下に号令する人。天子・帝王・諸侯。また人の上に立つべき徳のある人

という意味の「君」です。つまり『君のまなざし』とは幸福の科学総裁であるエル・カンターレが全世界を見守っているということ!


https://cdn.happy-science.jp/media/happy-science.jp/2016/11/23193923/mz7c7kyl.jpg
左が大川隆法の息子、真ん中が主人公、右がヒロイン。


幸福の科学最新作がまたやって来ました。よく映画を評価するサイトなんかで「この映画の鑑賞料金の価値は○○円」ってありますが、史上最高額がここに誕生しました。『君のまなざし』の鑑賞料金の価値はあなたの全財産です!証拠は↓の画像。


f:id:hakaiya:20170722111250j:plain
大川隆法の最近の霊言本より。
「映画館の入り口に賽銭箱を置いて、全財産をそこに放り込んでから入って」
と無茶苦茶なことが書かれています。あと俺は一般料金の1800円で入ったので間違いなく俺にも後光が挿している。

最近の霊言本は妄言が酷くなっていて、幸福の科学信者のインタビュアーも対応に困っているのが読み取れる。

『君のまなざし』は『君の名は。』に便乗したように見せかけて、実はボ○○○○○を取り入れた作品です。なかなかの意欲作で今までの幸福の科学映画の中でも上位の作品。今から完全ネタバレ解説します。ついでに言うと『君の名は。』もネタバレするから気をつけて!


OPエピソード1

主人公:神代(かみしろ)はバイト漬けの生活を送る苦学生。川で溺れている少女を見つけた主人公は彼女を助ける。
このシーンはドローンを使って派手にカメラが動くオープニングだった。ドローンのおかげで低予算映画でも派手な絵が撮れるようになっている。


OPエピソード2

主人公:神代は神社に行き、そこで見かけた巫女(ヒロイン)に運命的な出会いを感じる。神代は巫女に声をかける。
「どこかで会いましたっけ?」

これって『君の名は。』のラストシーンと同じなんだけど、『君の名は。』のラストシーンも含めてどう考えてもナンパの手口だよな。『君のまなざし』では、ヒロインは神代を頭のおかしいナンパだと思って警察を呼ぼうとする。調書に書くので君の名は?


主人公の親友:朝飛登場

主人公はある日親友の朝飛(アサヒ:演じるのは大川隆法の息子:大川宏洋)からペンションのバイトに誘われる。


f:id:hakaiya:20170722110443j:plain
『君のまなざし』のメイキングブックより、大川宏洋の背後にUFOが現れたと無理な主張している幸福の科学。でも捏造写真を作ったわけじゃないのでTBSよりは誠実ですね。

巨大な森の中にあるペンションに向かうと、そこには同じくバイトで雇われたヒロインがいた。オープニングのこともあって二人は気まずい。というか偶然の再会とはいえ主人公はまたストーカー扱いされる。

ただのバイトかと思いきや、主人公達はなぜか敷地内にある社にお参りさせられる。このペンションはなんだ?

幽霊登場

ペンションには女性の幽霊がうろついていた。ビビる主人公だが、ヒロインは巫女で降霊術の使い手だったので幽霊を召喚する。

召喚された幽霊が語るには、幽霊はペンションのオーナーの子どもを交通事故で死なせてしまったのだ。幽霊はその交通事故のことを悔やんで、ペンションに現れていた。とりあえずヒロインは幽霊を成仏させる。

ペンションの秘密

実はペンション近くに地獄に通じる門があり、ペンションのオーナー一族は代々門を守ってきたのだ。

しかし地獄の力が強くなり、オーナーが取り憑かれる。このシーン、撮影ミスだと思うんだけどカメラの写線を役者の足が邪魔している。でもこれが実に効果的。映像の視界が塞がれているのでかなり不安な画面構成にかっている。撮影ミスじゃなくて狙ってやっていたとしたら凄い。

朝飛の正体

神代はペンションの異常な事実を親友の朝飛に伝えようとするが、ヒロインは
「そんなバイトいないよ」
と言い放つ。呆然とする神代。そしてペンションのオーナー家族写真を見ると、そこに朝飛がいた。

つまり交通事故で死んだ息子とは朝飛だった!朝飛は幽霊として神代と一緒に大学生活を送っていたのだ。そして朝飛の死は交通事故ではなく、飛び込み自殺だった。朝飛はペンションのオーナー一族としての呪われた運命に絶望したのだっった。


「主人公が出会った人が幽霊だった」ってのはよくあるトリックだけど、「主人公の昔からの友人が幽霊だった」というのは斬新。良い意味で驚いた。

前前前世に戻る

地獄の門の影響で鬼と化した朝飛は神代を襲う。だがヒロインは彼らの過去世を呼び覚ます。


http://kimimana-movie.jp/img/home/top-catch-sp.jpg
注:幸福の科学の映画は輪廻転生が重要な思想なので、彼らの映画には必ず過去に戻って冒険するシーンがあります。『君の名は。』みたいに口寄せ酒なんてアイテムいらないぜ。

で、ここで平安時代をの森を舞台にして、神代と朝飛の冒険が始まる。神代と朝飛は平安時代からの熱い親友だった。しかし平安時代の朝飛は権力者に子どもたちを殺され復讐のために鬼となったのだ。

ストーリーの展開的にはたいしたことないので平安時代の部分は省略するけど、アクション描写はかなりのもの!低予算映画なので肉弾アクションを連発している。気合入っているシーンばっかりで嬉しい。平安時代を舞台にしたアクションというのも新鮮だ。


最後の戦い

神代と朝飛の長い戦いが始まる。最終的に神代は鬼と化した朝飛を成仏させた。親友を死なせてしまったことになった神代は後悔する。ちなみに鬼となった朝飛をどうやって倒したかというと、ヒロインから貰った七支刀で!やっぱり七支刀こそが日本最強の剣なんだなぁ。


『君の名は。』を完コピ

ここで『君の名は。』を完コピしたシーンが!
https://pbs.twimg.com/media/DA2BF3YUQAEY5wW.jpg
神代とヒロインが、この画像みたいに青空の前で横向きで見つめ合って、そして光の部分にエル・カンターレ(教祖)が出て来るのがクライマックス!映画館で信者に囲まれた状態で笑いこらえるの大変だったぜ。

そしてヒロインの正体はこの世界を正すためにやってきたエル・カンターレが遣わした天使だったのだ。主人公がヒロインをストーカーしていると見せかけて、実は天使であるヒロインがずっと主人公をストーカー的な意味で見つめ続けていた(そしてエル・カンターレも)。これが『君のまなざし』の意味だった。

しかしここで衝撃の事実、この映画は主人公と巫女のラブストーリーではないのだ。一体主人公と誰のラブストーリーなのか?


3段妄想オチ

神代は病院のベッドで目を覚ます。実はオープニングで溺れて以来夏の間意識不明のまま入院していた。今までのシーンは全て夢落ちだったのだ。やっと眼をさましたかい。

  • 親友←実は幽霊だった
  • ヒロイン←実は天使だった
  • 主人公←実は夢オチだった

と、登場人物全員実態が無いというオチ。俺は全部のトリックに引っかかったのでかなり悔しい。


衝撃のラストシーン

退院した神代は夢の中で見たペンションを探しだす。そこにはペンションのオーナーと、息子の朝飛がいた!魂が救われた朝飛は自殺せずに、生き残っていたのだった。そして朝飛は神代のことも覚えていた。平安時代から続く神代と朝飛の物語が今繋がった。二人は笑いながら抱き合う…END。


ラストシーンの解説

というわけでまさかのボーイズラブ落ち!男と女の物語かと思いきや男と男で『君の名は。』だったでした。これは良い意味で驚いたし、見事なオチだ。ヒロインがヒロインの座を男に奪われているというのもいいね。

ノベライズ版だと、主人公が最後に抱き合うのはアサヒじゃなくてヒロイン。しかもお互い記憶が無いので、ラストにちょっとだけ相手を思い出すという終わり方。これだと『君の名は。』と全く同じなので、ボーイズラブオチの映画版のほうが良い。

森とスピリチュアル

日本は世界有数の森林国家なので「森とスピリチュアル」を題材にした映画が多い。「森とスピリチュアル」をメインに据えている映画といえば

  • 安倍晋三首相が推薦した『ライアの祈り』
  • EXILEが作った『たたら侍』
  • 幸福の科学が作った『君のまなざし』

と、これ以上権力を握って欲しくない人たちがよく森とスピリチュアルに手を出している(注:安倍晋三首相は母親に利用されただけ)。ただ『ライアの祈り』と『たたら侍』はスピリチュアル要素にガチで取り組んでいてドン引きするのに対して、一番怪しい幸福の科学がスピリチュアル要素をエンターテイメントとして割り切っている。だから『君のまなざし』が一番面白い。それでいいのかクールジャパン!



あ、撮影している本とかはちゃんと買ってるからね!
f:id:hakaiya:20170722111755j:plain


俺の名はギッチョ。

今回のオチ。俺には『君の名は。』を一緒に観に行って付き合い始めた運命的な彼女がいるんだけど、幸福の科学の本とか買っていたら彼女からこんなLINEが来た。
f:id:hakaiya:20170722105358p:plain
あと最近別れた。

『L.A.コンフィデンシャル』のわかりにくい点を解説

「90年代最高のアメリカ映画は?」と聞かれたら、一番多い答えは『ショーシャンクの空に』かな。俺の場合は『L.A.コンフィデンシャル』だ*1。大学生のときに劇場で観て衝撃を受けて、原作も読むほどハマってしまった。

L.A.コンフィデンシャル 製作10周年記念 [DVD]


でも『L.A.コンフィデンシャル』の公開当時の感想には

  • 普通の刑事ドラマじゃない?
  • 物語が複雑すぎてわからない!

というのが多かった。まあその通りだと思う。

L.A.コンフィデンシャル』の物語はとにかく複雑だ。どれくらい複雑かというと、この映画を観た人に劇中の強盗事件の真犯人は結局誰だった?と聞いても答えられる人は少ないと思う。ググってネタバレ解説サイトを何個か読んだけど、どれも真犯人のことは無視していた。

最近『L.A.コンフィデンシャル』のカーティス・ハンソン監督が死んでしまったので、久しぶりに『L.A.コンフィデンシャル』を再見した。せっかくなのでこの映画の物語を時系列で解説しよう。時系列で解説するため、すぐネタバレしちゃうので未見の人は気をつけて。

和名表

映画をわかりやすく説明するために、登場人物には俺が勝手につけた和名を使います。

正しい役名 演じた人 和名
ホワイト刑事 ラッセル・クロウ 暴力刑事
ヴィンセンス刑事 ケビン・スペイシー 汚職刑事
エクスリー刑事 ガイ・ピアース 出世刑事
ステンスランド刑事 グレアム・ベッケル 悪徳刑事
シド ダニー・デヴィート マスコミ
ピアス デヴィッド・ストラザーン 億万長者
マット サイモン・ベイカー イケメン俳優
スーザン アンバー・スミス リタ・ヘイワースに似た娼婦
パオロ・セガンティ アンバー・スミス 用心棒
エリス検事 ロン・リフキン 検事


時系列解説

血のクリスマス事件

  • 映画のオープニングはクリスマス。
  • 主人公の一人:暴力刑事のホワイトは酒を買いに行く途中で以下のメンツと会う。
  • 主人公の一人:汚職刑事はマスコミと組んでイケメン俳優を逮捕する。そしてイケメン俳優の手帳から「白ユリの館」の名刺を手に入れる。
  • 警察官たちがメキシコ人をリンチにする「血のクリスマス」事件が勃発する。
  • 主人公の一人:出世刑事はリンチに関わった警察官たちを告発してクビにする。おかげで彼は出世したが署内で嫌われて孤立する。
わかりにくいポイント


f:id:hakaiya:20161010072310p:plain
バズが黒幕の一人なのに序盤しか出てこないのがわかりにくいよね。


マフィア 対 警察

  • ミッキー・コーエン(実在のマフィア)が逮捕され、ロサンゼルスの縄張り争いが激化する。
  • ダドリー警部は地方からロサンジェルスにやってくるマフィアたちをリンチにすることでロサンゼルスを守ろうとする。リンチ担当は暴力刑事。
  • だがダドリー警部の真の目的はマフィアの商売を全て自分のモノにすることだった。
  • 殺し屋がマフィアの幹部を殺しまくる。殺し屋の正体はダドリー警部の命令を受けた暗殺部隊だ。
わかりにくいポイント


f:id:hakaiya:20161010073202p:plain
マフィアの幹部を殺しまくっている暗殺部隊の正体がはっきり描かれない。悪徳刑事、バズ、ブルーニング刑事、カーライル刑事の4人が暗殺部隊です(他にもいる)。ブルーニング刑事、カーライル刑事とはこの画像の左の二名。

マフィアのヘロイン

  • 暗殺部隊の一人のバズがマフィアのヘロインを奪う。
  • 悪徳刑事とリタ・ヘイワースに似た娼婦は恋人同士だった。彼女の家で悪徳刑事とバズはヘロインを巡って争い、悪徳刑事はバスを殺す。
わかりにくいポイント


f:id:hakaiya:20161010090017p:plain
ミッキー・コーエン→バズ→悪徳刑事→ダドリー警部の順序でヘロインの持ち主が変わっているのもわかりにくい。このセリフだけでバズと悪徳刑事の関係に気が付かなきゃいけないのも初見では厳しい。


ナイト・アウルの虐殺

  • 茶店ナイト・アウルで3人組の強盗が客を皆殺しにする。被害者には悪徳刑事とリタ・ヘイワースに似た娼婦がいた。
  • 真犯人はダドリーの部下のブルーニング刑事とカーライル刑事。強盗に見せかけて悪徳刑事を殺してヘロインを奪うのが目的だった。
  • ダドリー警部が用意した冤罪容疑者は黒人のチンピラ三人組だ。
わかりにくいポイント


f:id:hakaiya:20161010110255p:plain
ブルーニング刑事とカーライル刑事がナイト・アウルの真犯人。でも各種ネタバレサイトですら、このことは書いてない。


ナイト・アウルの虐殺の捜査(汚職刑事)

  • 汚職刑事は独自の捜査でチンピラ三人組の居場所を知る。
  • ブルーニング刑事とカーライル刑事はチンピラ三人組を冤罪にハメるために、彼らの車にナイト・アウル事件の証拠を置く。
  • ブルーニング刑事とカーライル刑事はチンピラ三人組を殺そうとするが、そこに汚職刑事が到着してしまう。チンピラ三人組は普通に逮捕される。

ナイト・アウルの虐殺の捜査(暴力刑事)

  • 暴力刑事は、クリスマスの夜に犠牲者のリタ・ヘイワースに似た娼婦を見かけたことを思い出した。彼女と一緒にいた億万長者を尋問する。
  • 億万長者の正体は女優に似た娼婦を集めた売春組織「白ユリの館」のオーナーだった。
  • 暴力刑事は億万長者の用心棒と会う。

ナイト・アウルの虐殺の捜査(出世刑事)

  • チンピラ三人組にレイプされていた被害者が「ナイト・アウル事件のときにチンピラ三人組たちは外出していた」と証言した。
  • チンピラ三人組は逃走し、銃撃戦になる。カーライル刑事は殉職、容疑者たちを射殺した出世刑事は英雄となる。
  • 死んだチンピラ三人組がナイト・アウルの容疑者であることが確定。ナイト・アウルの虐殺事件は解決した。
わかりにくいポイント


f:id:hakaiya:20161010091718p:plain
ここで真犯人の一人、カーライル刑事が死んでいるんだけど、俺も「あ、カーライルここで死んだのか」と最近気がついた


億万長者がロスを支配する

  • 億万長者はリンとマスコミを使って、政治家の淫行写真を撮る。
  • 億万長者はその淫行写真を使って政治家を脅迫。高速道路建設公共工事を牛耳ることに成功した。
わかりにくいポイント


f:id:hakaiya:20161010091551p:plain
億万長者、警察、マスコミがグルになって政治家をコントロールして公共事業を牛耳っている。


イケメン俳優の末路

  • 汚職刑事は政治家のパーティでイケメン俳優と再開する。イケメン俳優を誘導尋問して「白ユリの館」の元締めが億万長者であることを知る。
  • 汚職刑事とマスコミはイケメン俳優を騙して、ゲイの検事のスキャンダル写真を撮ろうとする。
  • 億万長者はスキャンダル写真を使ってゲイの検事を脅迫する。それをうっかり聞いたイケメン俳優は殺される。
  • 汚職刑事は行きつけのバーで自分の汚職っぷりに嫌気が指した。彼はイケメン俳優を止めようとするが既に死体になっていた。

頑張る暴力刑事

  • ブルーニング刑事と暴力刑事は相変わらずマフィアをリンチにかける。
  • 暴力刑事はナイト・アウルの真犯人がチンピラ三人組でないと気がついていた。しかし捜査せずにマフィアをリンチしてばっかりの自分に嫌気が指す。
  • 暴力刑事は娼婦リンに「あなたもやれば出来るわ」と励まされて、ナイト・アウルの現場写真を再度検証する。

真相に近づく(暴力刑事)

  • 暴力刑事は喫茶店で悪徳刑事が真っ先に殺されていることに気がつく。
  • さらに喫茶店の食べ物の位置から悪徳刑事とリタ・ヘイワースに似た娼婦が恋人同士だったことに気づく。
  • 暴力刑事はリタ・ヘイワースに似た娼婦の家に行き、バズの死体を発見する。
  • 暴力刑事は億万長者の用心棒を拷問してバズがヘロインを持っていたことを知る。
わかりにくいポイント


f:id:hakaiya:20161010110839p:plain
この映画で観客が一番混乱する原因は、重要人物のバズが死体になっているので、重要人物っぷりがイマイチわからないということ。


真相に近づく(出世刑事)

  • レイプ事件の被害者が「証言はレイプ犯たちを殺させるためのでっち上げ」と出世刑事に伝える。
  • 真犯人が別にいる可能性を疑った出世刑事はナイト・アウルの虐殺事件を再び捜査しようとする。
  • 出世刑事は汚職刑事にナイト・アウル捜査の助っ人を頼む。
  • 汚職刑事は出世刑事が自分の手柄をぶち壊そうとするのが理解できない。
  • 出世刑事はロロ・トマシについて語る。
逆にわかりやすいポイント


ここでは解説しないけど「ロロ・トマシ」は複雑な物語を一気にシンプルにする見事なトリック。

出世刑事と汚職刑事が手を組む

  • 汚職刑事は出世刑事に「白ユリの館」に関する情報を全て渡す。
  • 二人は用心棒を尋問しようとして、うっかりラナ・ターナー(実在の人物)を…。
  • 二人は億万長者を尋問する。空振りに終わるが、警戒した億万長者はマスコミに連絡する。
  • 出世刑事は娼婦リンの誘惑に引っかかり、セックスする。これをマスコミに撮られる。


f:id:hakaiya:20161010111715p:plain
劇中何度も登場している用心棒のジョニー・ストンパナートだけど、彼が事件にあまり関係ないのもわかりにくいポイント。実はジョニー・ストンパナートは実在の人物。ギャングの用心棒だが、ラナ・ターナーの愛人でもある。この知識が無いと「誰これ?」状態になる。


真相に近づく(汚職刑事)

  • 汚職刑事は警察署内の12年前の記録を調べて悪徳刑事とバズが手を組んでいることに気づく。
  • 汚職刑事は出世刑事をバーで待つが、出世刑事は女と遊んでいる。
  • しょうがないので汚職刑事は悪徳刑事とバズの上司だったダドリー警部に会いに行く。
  • ロロ・トマシが登場する。
わかりにくいポイント


f:id:hakaiya:20161010094626p:plain
12年前の記録がダドリー警部に繋がる記録だ。これがダドリー警部がわざわざ手を汚した動機。


ロロ・トマシの暗躍

  • ダドリー警部は12年前の記録を盗んで処分する。
  • ダドリー警部は暴力刑事にマスコミを拷問させる。でもこれはマスコミとダドリー警部の演技で、暴力刑事が娼婦リンを出世刑事に寝取られたことを気づかせるのが目的。
  • ダドリー警部とブリーニング刑事はマスコミを殺す。
わかりにくいポイント


f:id:hakaiya:20161010094326p:plain
ダドリー警部が12年前の記録が盗んで処分しているのは、初見ではまずわからない。


暴力刑事と出世刑事が組む

  • 12年前の記録は無くなったが、出世刑事は過去の業務日報を調べることでダドリー警部、悪徳刑事、バズがグルだったことに気づく。
  • 12年前、彼らは億万長者のピアスを取り調べておきながら不起訴にする。そしてこのときにピアスやマスコミともグルになった。
  • 暴力刑事は悪徳刑事とバズの関係を出世刑事に伝える。
  • 出世刑事は汚職刑事が持っていた情報を暴力刑事に伝える。
  • 全ての情報が出揃い、彼らは組む。
わかりにくいポイント


f:id:hakaiya:20161010071909p:plain
事件の真相である「刑事たちがグルになってマフィア化していた」という点にもうちょっと伏線貼って欲しかった…。でもロス市警とマフィアの癒着は有名な実話なので伏線がいらないのかも。


クライマックスへ

  • ゲイの検事が暴力刑事の拷問によって全ての情報を喋る。
  • 億万長者もダドリー警部に殺される。これで全てがダドリー警部のものになる。
  • そしてクライマックスへ…。
わかりにくいポイント


f:id:hakaiya:20161010112140p:plain
もう一人の真犯人:ブルーニング刑事は暴力刑事に撃たれて死ぬ。クライマックスのブルーニング刑事は一番ハッキリ顔が写っている画像でこの程度。リピートしないと気がつくのは無理。

最後に

この映画のわかりにくさは欠点では無いと思う。情報が極端に多いからこそ、3人の刑事がそれぞれの情報を持ち寄るシーンにミステリー的な興奮が発生する。そもそもこの映画を理解するために今回解説したポイントを抑える必要はない。理解すべきなのは三人の刑事の行動原理だ。

  • 出世刑事:出世をふいにしても真犯人を捕まえたい→やっぱり出世のために全て利用してやる
  • 汚職刑事:汚職に疲れた→ちゃんと捜査することで償いたい
  • 暴力刑事:マフィアをリンチするのが嫌だ、俺も捜査したい→やっぱりぶっ殺してやる!

名演技を見せる三人の行動が少しづつ真相に近づいていく。これが90年代最高クラスのアメリカ映画たる所以だ。



アウトバーン 組織犯罪対策課 八神瑛子 (幻冬舎文庫)
L.A.コンフィデンシャル』の汚職刑事と暴力刑事を足して割らなかった女性警察官が主人公の作品。米倉涼子で映像化された。

*1:IMDBの映画史上最高の100本にもランクインしている

三重構造のカルチャーギャップ『キンダガートン・コップ2』

キンダガートン・コップ 2 [DVD]

幼稚園に刑事再び!

キンダガートン・コップ』と言えば1990年に作られた大ヒットコメディ映画だ。アーノルド・シュワルツェネッガー演じるコワモテ刑事が、幼稚園に教師として潜入捜査。凶悪犯相手でも平然としているシュワちゃんが、園児にタジタジになる姿が面白い。

それが26年後の今になって続編が作られた。主役はドルフ・ラングレンに交代、アメリカでも日本でも劇場公開されていない低予算映画だ。低予算すぎて、FBI本部がどう見てもFBIには見えないし、クライマックスはそこらへんの公園だった。

カルチャーギャップ

キンダガートン・コップ2』の海外での評判は散々で、俺もイマイチだと思っている。しかし、この映画が持つ三重構造のカルチャーギャップだけはメッチャ面白かった。この映画には三つのカルチャーギャップがあるのだ。一つはコワモテ刑事と園児のカルチャーギャップ。まあこれは解説しなくてもわかるだろう。


f:id:hakaiya:20160902110347p:plain
キンダガートン・コップ1』の画像だけど、コワモテ刑事のシュワちゃん

f:id:hakaiya:20160902110351p:plain
幼稚園に行くカルチャーギャップ。

リベラルと保守

もう一つはリベラルと保守のカルチャーギャップだ。以前も紹介したけどアメリカ映画は
「リベラルな主人公が保守派の一家と会ってタジタジになる」
というパターンがめっちゃ多い。ところが『キンダガートン・コップ2』は逆のパターンで、保守派の主人公が超リベラルな幼稚園に入るというカルチャーギャップコメディなのだ。


f:id:hakaiya:20160902111046j:plain
幼稚園の読書会で、園児相手にマジ切れする保守派のドルフ・ラングレン先生。

f:id:hakaiya:20160903093618p:plain
リベラル幼稚園では、キリスト教的なイベントは変更対象。

キンダガートン・コップ2』に出てくる幼稚園&園児たちはこんな感じ。

  • エコロジーや安全なプラスチック製品に異常にこだわっている
  • 肉食禁止の日があって、砂糖は危険と教えられる
  • グルテンフリー(小麦粉を取らないようにしている)に取り組んでいる子供もいる

主人公はステーキとサンドイッチが大好きで「子供でも小学生になったら銃を撃っていい」という考えなので、リベラル幼稚園は異世界だ。


f:id:hakaiya:20160904210538p:plain
主人公は、この幼女に豆腐を温めるようにお願いされて驚愕する。アメリカ映画における豆腐は「エリート層のリベラル」を意味する比喩表現だ。

この映画は教育現場で徹底されるポリティカル・コレクトネスを題材にしたギャグもある。ドルフ・ラングレンが園児たちに「あぐら」で座らせるために
「Indian style(インド式)」
と発言して怒られるシーンがある。政治的に正しい「あぐら」の英語表現は「Criss Cross Applesauce(すりおろしリンゴのお菓子)」なのだ。ちなみに「sitting Indian style」で検索すると「この言葉は政治的におかしいの?」って議論がたくさん登場してくる。

また『キンダガートン・コップ1』のヒロインは犯人の元妻だったけど、『キンダガートン・コップ2』のヒロインは行き過ぎたリベラルにウンザリしている女性教師だ。ドルフ・ラングレンとヒロインは意気投合し、保守的なカウボーイテイストの店でデートする。

1990年と2016年のカルチャーギャップ

そして三つめのカルチャーギャップは、俺が勝手に感じているだけなんだけど、1990年と2016年のカルチャーギャップだ。『キンダガートン・コップ』の1と2を比べるとポリティカル・コレクトネス(政治的正しさ)の追求が強くなっている。一番感じたのは虐待する親への接し方だ。

キンダガートン・コップ1』では虐待する親に対してシュワちゃんが鉄拳制裁するだけ。


f:id:hakaiya:20160904210657p:plain
しかも生徒たちの目の前で!

対して『キンダガートン・コップ2』では、ドルフは暴力的な親に優しく接して一緒に問題を解決しようと提案する。


f:id:hakaiya:20160904210939p:plain
政治的には正しくてもドルフが人を殴るシーンが見られないのが残念!


また子供たちの指導方法もだいぶ変わっている。

キンダガートン・コップ1』のシュワちゃんは園児たちを指導できず学級崩壊を起こしてしまう。そこでシュワちゃんは、笛の音を使って命令することで園児たちをおとなしくさせる。劇中の校長先生はこの指導方法を評価する。


f:id:hakaiya:20160904211359p:plain
園児相手に警察学校式教育を取り入れるというコメディシーン。

キンダガートン・コップ2』でもやはりドルフは防災ホーンの音を使って子どもたちを従わせようとするんだけど、これは校長先生に「暴力的な方法」として批判される。


f:id:hakaiya:20160904211732p:plain
リベラレル派の校長先生に「子どもたちに良い環境を提供して」と怒られるドルフ。


キンダガートン・コップ1』は全体的に軍隊チックな教育方法で成功する物語だったのに対して、『キンダガートン・コップ2』はドルフ・ラングレンが最新の教育方法を学んでいく物語なのだ。


f:id:hakaiya:20160904221130p:plain
キンダガートン・コップ2』より。「才能を褒めるんじゃなくて努力を褒めろ!」というシーン。

他にも『キンダガートン・コップ1』では「男の幼稚園の先生なんて変人!」という扱いだったのに、『キンダガートン・コップ2』では「男女の区別なし」をやたら強調していた。26年の間に状況がだいぶ変わったのか。


最後に

やたらリベラルを強調していた『キンダガートン・コップ2』だけど、クライマックスはネタバレなので、リベラルとか政治的正しさとか気にしていると思いっきり裏切ってくる作品だ。というか酷いクライマックスだな。まあとにかく「リベラルは正しいけど、最近行き過ぎていてちょっとウンザリ」という風潮が透けて見える映画だった。


ディクテーター 身元不明でニューヨーク ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray]
リベラルと保守のカルチャーギャップの決定版!

小悪魔はなぜモテる?! [Blu-ray]
リベラルすぎる両親に辟易する女子高生の物語でもある

自転車に乗って

「この映画はいったい誰が観に行くんだ!?大賞」で取り上げるために観た日本映画がとても面白かった!というのが沢山ある。今までで一番衝撃だったのは『余命1ヶ月の花嫁』だ。去年だと『さよなら歌舞伎町』『娚の一生』がとても良かった。ぜんぶ廣木隆一監督で、どれも自転車に乗るシーンがある。

廣木隆一監督は自転車映画の名手なのだ。今回は廣木隆一監督の自転車シーンについて解説する。ネタバレな部分はすべてリンクにしてある。



『さよなら歌舞伎町』のオープニング

f:id:hakaiya:20160415092330p:plain
前田敦子と染谷将太が駅前を自転車で疾走する。超人気俳優がゲリラ撮りにチャレンジ!。染谷将太はこの撮影のことを

転んだら全国のファンに殺される!

と語っていた。そりゃそうだ。

こういうのでイチイチ「道交法違反だ!」と騒がないのが映画ファンの良いところ。

『さよなら歌舞伎町』の後半

f:id:hakaiya:20160415092457p:plain
歌舞伎町を自転車でうろつく染谷将太。このシーンは(リンク先ネタバレ

『さよなら歌舞伎町』のクライマックス

リンク先画像ネタバレ
二人乗りで女性が自転車を漕ぐのは珍しいパターン。このシーンは(リンク先ネタバレ)。希望への疾走をコミカルに表現している。

『娚の一生』の序盤

f:id:hakaiya:20160415092834p:plain
自転車で移動中の榮倉奈々に、地元のボンクラ議員(←榮倉奈々に惚れている)が話しかける。ボンクラ議員は車をずっとバック中。町の男たちは榮倉奈々の家にヨソモノ(トヨエツ)が転がり込んできたことを心配している。面倒臭くなった榮倉奈々は「ヨソモノは殺人鬼!」と叫びながら自転車で疾走する。田舎の面倒臭さとノンビリさを表現したシーンだ。

『娚の一生』の中盤

f:id:hakaiya:20160415092951p:plain
夏祭りを経て榮倉奈々とトヨエツが仲良くなったことを表現するシーン。奥に見えるのが祭り会場。日本の恋愛映画は「夏祭りで男女が仲良くなる」という展開が超あるあるなんだけど、このシーンはしんみり感が出ていてとても良い。しんみびりだけどセッチャリだ(自転車泥棒)。いや、あとで返すけどね。

『娚の一生』の中盤

f:id:hakaiya:20160415093002p:plain
自転車に乗りながらケンカするシーン。「ケンカするけど仲が良い」を表現している。

『800 TWO LAP RUNNERS』の中盤

f:id:hakaiya:20160415225900p:plain
青春映画の傑作『800 TWO LAP RUNNERS』。高校生同士が自転車に乗りながらセックスについて語る。俺も高校生の時にこの映画を観たので「えええ!みんな普通にセックスしているの!俺はしていないのに!」って感じで衝撃だった。二人乗りは肉体関係の暗喩なのか?(たぶん違う)

『余命1ヶ月の花嫁』の序盤

f:id:hakaiya:20160415093358p:plain
瑛太と榮倉奈々が自転車に乗って街を疾走する2分間の長回しカット。ゲリラ撮影でセリフもアドリブと思われる。二人の仲の良さをしんみりと表現する名シーンだ。まだヒロインのガンが発覚していないので、この後に起きる悲劇を盛り上げる効果もある。

ちなみにこの画像は榮倉奈々が歩行者にぶつかりそうになったので、瑛太が後ろを向いて謝るところ。榮倉奈々が自転車で突っ込んでくるだけでも驚くのに、謝ってくるのが瑛太!この歩行者は死ぬほどビックリしたのではないだろうか。

道交法が変わった今だったら「歩道を自転車で走るとは危険だ!」ってクレームがつきそう。世間はクレームつけないで欲しい。

『余命1ヶ月の花嫁』の中盤

f:id:hakaiya:20160415230040p:plain
『余命1ヶ月の花嫁』は、クライマックスの結婚式よりも中盤の余命告知シーンのほうが遥かに感動できる。解説すると(リンク先ネタバレ)。もちろん妄想のはずなのに、この映画はハッキリと妄想だとは描かない。
独り残される瑛太の絶望と、残りの余命を前向きに突っ走る榮倉奈々を表現する最高の名シーン。


廣木隆一は自転車を使って饒舌に語ってくる。俺は廣木隆一のたくさんあるフィルモグラフィーのうち、1割くらいしか観ていない。だから他にももっとあると思う。


俺の高校は自転車通学が盛んだった。自転車通学している男女の雰囲気でその二人の親密さが何となくわかった。だから自転車を使って人間関係を表現する映画には懐かしさを感じる。

ターミネーターシリーズの最高傑作がT3なのは何故か?

日本記念日協会によって5/25が「ターミネーターの日」になったので、ターミネーターシリーズの最高傑作について語ろう。
f:id:hakaiya:20150524090242j:plain

最近話題になった新連載マンガ『木根さんの1人でキネマ』というのがある。その第一話は、ヒロインが『ターミネーター3』を褒めるとネット上で「『ターミネーター2』を観て下さい」というレスがついて、ヒロインが悔しさで悶絶するというエピソードだ。

(画像のリンク先で最新話が読めます)

このヒロインの気持ちはよくわかる。知識を披露したいだけの人に補足コメントを書かかれると何故かくやしくなってしまう。自分も他人に対しては同じコトをしょっちゅうやってるクセに。ブロガーなら誰しも経験あることだろう。
「それわかっているから!わかっててあえて言及していないんだから!」
って反論するとカッコ悪いのでたいていは泣き寝入りだ。

そしてそれ以上にわかるのは『ターミネーター3』が大好き!という気持ちである。俺もターミネーター・シリーズの最高傑作は『T3』だ!という誤った感性の持ち主だ。『T3』を褒めると『T2』ファンがメッチャ食いついてくるんだけど、それでも『T3』好きとして言い訳がしたい。

その前に『ターミネーター』を観たことが無い人に、このシリーズの設定とネタバレを簡単に説明する。

基本設定

未来の地球で人工知能スカイネットが反乱(審判の日)を起こし、人類は絶滅の危機になる。しかし英雄ジョン・コナーの活躍によって人類は救われる

ターミネーター1(T1)の設定

スカイネットは英雄ジョン・コナーの出生を無かったことにするために、タイムマシンを使って1984年にターミネーターを送り込んで、ジョン・コナーの母親を殺害しようとするが失敗する。
ターミネーター [Blu-ray]

ターミネーター2(T2)の設定

スカイネットは1994年にターミネーターを送り込んでジョン・コナーを暗殺しようとする。だがジョン・コナーたちの反撃によって、逆にスカイネットの誕生を食い止めた。そして「審判の日」は回避された
ターミネーター2 特別編(日本語吹替完全版) [Blu-ray]

それではT3が傑作な理由を説明します。

『T3』が傑作の理由1:ジョン・コナーがヘタレ

1984年に『ターミネーター』が登場してからの20年間、我々人類は「ジョン・コナーが英雄」という基本設定を信じて生きてきた。そしてコレが『T3』のオープニングなんだけど。

http://hakaiya.com/img/460seq.jpg
崩壊した近未来で人類のリーダーとなって戦うジョン・コナー!

http://hakaiya.com/img/461seq.jpg
単なる妄想だった。

http://hakaiya.com/img/462seq.jpg
まあ世の中そんなもんですよね。

http://hakaiya.com/img/463seq.jpg
肉体労働で日銭を稼ぐジョン・コナーだが、このあとケガをする。でも病院に行けないので動物病院に行ったところ獣医のおねーちゃんに捕まる

『T3』ではジョン・コナーがヘタレになっている。この設定の改変はアメリカでは酷評されたらしいが、俺の胸には突き刺さった。俺もガキのときは「未来の人類の英雄」というジョン・コナーの設定をカッコいいと思ったけど、大人になった今では「実はダメ人間に育ったジョン・コナー」に完全感情移入している。

『T3』のオープニングはジョン・コナーがひたすらグチった挙句に交通事故を起こす。『T2』の名エンディング「未来は先の見えないハイウェイだ!」とか言っておいて、ハイウェイの先がコレだったのだ。

ジョン・コナーがヘタレになってしまうと「でもコイツは人類のリーダーになれるハズでしょ?」という疑問が生まれてくる。『T3』で断片的に描かれる情報から判断するに、未来社会で凄かったのはジョン・コナーの奥さんっぽい。納得!ちなみに獣医が奥さんになるの。



『T3』が傑作の理由2:ラストが感動的

『T3』のラストは、人類が自分たちの核兵器によって滅亡。核シェルター内に逃げたジョン・コナーが、わずかに生き残った人々に「ボクはジョン・コナーです」と声をかけて終わる。何も出来ないジョン・コナーが「人類の英雄」への一歩を踏み出す感動的なシーンだ。
このラストシーンは2001年のNY同時多発テロが明らかに関係している。悲劇は避けられないけど、生き残った者は辛くても立ち上がらなければならない。そして生き残った者同士で声を掛け合っていく。当時のアメリカ人たちの心情を表現していて泣ける。

『T3』が傑作の理由3:ドラえもんっぽい

未来からやってきた中古ロボット、ダメ人間の主人公と将来の奥さん。とくれば連想するのは『ドラえもん』だ。『STAND BY ME ドラえもん』にノスタルジーを感じなかった俺だけど、『T3』には何故かドラえもん的ノスタルジーを感じてしまう。
ジョン・コナーはロボット(ターミネーター)に精神的に依存していたんだけど、ラストでロボット無しでも生きていく決意をするところも『さようなら、ドラえもん』っぽい。
ここでターミネーターはロボットじゃなくてアンドロイド/サイボーグだよ!」とツッコミ入れる人はまだまだターミネーター中級者。『T3』ではジョン・コナーはターミネーターのことを「ロボット」と呼んでいる。


f:id:hakaiya:20150524103609p:plain
大人になってもロクな格好していないので未来の奥さんに説教されるジョン・コナー。そこでターミネーターが「彼は人類のリーダーだ」とフォローしてくれるシーン。泣ける。

『T3』が傑作の理由4:ターミネーターっぽい演出がいっぱいある

『T3』は『T1』『T2』を徹底研究して作ってある。細かいセリフ、細かい演出が全て前二作と同じなのだ。例えば「バイクに乗る」「車を奪う」といったシーンは全てセルフパロディになっている。『T1』と『T2』を公式に真似した結果、すごくターミネーターな映画になったのだ。『T1』の頃にあったB級映画感が出ているのも良い。

『T3』が傑作の理由5:矛盾に対して説明がついている

ターミネーターシリーズには有名な矛盾が存在する。それは
ターミネーターのコンピューターチップを壊して審判の日を無かったことにできるなら、そもそもターミネーターも存在しないだろ!
というもの。『T3』ではこの矛盾に対して
「審判の日は絶対に回避できない」
という説明をつけている。そうすると今度は逆に
「何で回避できないの?『T2』でみんな頑張っていたじゃん」
という疑問が出てくるけど、そこには
スカイネットはシステムじゃなくてネット上のソフトウェアなので壊しようが無い
という説明がつく。これは20年前だったらほとんどの人が理解できない概念だった。時代の変遷によって矛盾が解決されたのだ。


他にもT3が傑作の理由は色々ある。T-Xがカワイイとか、上映時間が短いとか、全裸のアーノルド・シュワルツェネッガーが服を調達するシーンが超楽しいとか。ファミリー向けの要素を入れた『T2』とは違って『T3』は「ターミネーターとは抹殺者」という基本設定を重要視している点も良い。
俺は『T2』がそんなに好きじゃないので、『T2』を否定している感もある『T3』が余計に好きになってしまうのだ。

というわけで『ターミネーター3』の素晴らしさを分かって頂けただろうか?ちなみにこれがエイリアンシリーズになると俺の態度は真逆になる。コアなファンは『エイリアン4』を最高傑作って評価しているんだけど、俺はその話を聞く度に「えー1と2が至高じゃん」と思ってしまうのだ。

オマケの豆知識

f:id:hakaiya:20150524103428p:plain
『T3』でジョン・コナーに車をぶつけられるこの男性は、アーノルド・シュワルツェネッガーボディ・ダブル(影武者)の人。

追記

いや、もう『T2』ファンを色々怒らせてしまった模様で、『T2』ファンには何か凄く申し訳ないです。そして少数派だと思っていた『T3』好きが多いということもわかってとても嬉しい。