俺がこのブログで利用しているのは「はてな」というサービスだけど、はてな界隈には3人の有名な小説家がいる*1。
深町秋生は警察小説の第一人者で、この秋に何と3ヶ月連続で新作小説が発刊されてファンとしては嬉しい限り。全部読んだがどれも面白い。
3冊とも警察小説。
警察官がロリ動画収集家や不倫している人を追い詰めるお話。
ついでに著者ご尊顔↓
週末の朝日新聞広告にも「高利貸しと化した金正男」みたいな風貌で登場したのです。「書影よりおれのツラを載せるってなんだろう」と疑問に感じたのですが、新聞読んでる人は「なに、このあやしいおっさん」と、広告に目を向けるだろうなと思い返しました。往復ビンタもいくらでも貰いますのでどうか。 pic.twitter.com/0IqU9jFIJG
— 深町秋生・八神5作目「ファズイーター」3/24刊行予定。 (@ash0966) 2017年9月4日
今や警察小説というのは出版界の一大ジャンルだ。
警察小説は質量ともに充実し、いまや完全に専門分野と化している。単なる「警察が出てくるミステリー小説」と「警察小説」は違うのだ。警察小説を主戦場とする書き手たちの知識と描写は、きわめて濃密でハイレベルだ。門外漢が一朝一夕で追いつけるものではないし、ヘタに手を出せば火傷する。
ようやく本題の葉真中顕の話。上記の段落の文章は俺が書いたのではなくて、葉真中顕の『政治的に正しい警察小説』の一節です。
『政治的に正しい警察小説』は、葉真中顕をモチーフにした小説家ハマナコアキが警察小説にチャレンジするというメタ小説。警察小説の門外漢であるハマナコアキが、どうして警察小説に勝機を見出すのか?それはポリティカル・コレクトネスを徹底することだ。
ポリティカル・コレクトネスとは政治的な正しさを意味する。わかりやすい例だと白人が日本の着物を着ると「文化の盗用」だと大騒ぎになる。俺は着物を着た白人を見ると
「えーステキじゃん!日本の文化に触れてくれるなんて嬉しいよ!」
と思うので、ツイッターでそうコメントしたりするともう大変。
「ギッチョさん、これは文化の盗用なんです」
「白人はマジョリティなんですよ!白人にアジア人の活躍の場が奪われて居るんです!」
「あなたには理解できないんですね」
といった政治的に正しいコメントを頂く。彼らは政治的な正しさを追求すべく、着物を着た白人をサーチ・アンド・デストロイする。俺みたいに
「別にいいじゃん」
と思う人間がいたら
「無自覚な差別だ」
「怒らないこと自体が差別」
と叩く。差別主義者と言われるのは、ネット上で最大級の屈辱なため俺もそれを避けたい。割りと叩かれたので、俺も着物を着ている外国人がいると、コイツは白人なのか?白人じゃない非アジア人なのか?アジア人だとしても中東系や南東系なのか?とマジで気になるようになってしまった。
「こういう人種判断の思考って本当に政治的に正しいのかな?」
と思いつつ。
ハマナコアキがチャレンジするのは徹底した政治的な正しさだ。登場人物の名前や、犯人の動機に至るまで徹底する。作中
「ポリティカル・コレクトネスじゃない」
と指摘されたハマナコアキがうっかり
「差別の意図はない」
と説明して炎上する様は、ネットでも毎月のように見る。『政治的に正しい警察小説』は政治的な正しさを追求する今の時代に生まれた………コメディ小説なので全身の力を抜いて読むように!
『政治的に正しい警察小説』は中編ミステリー集で、表題作の『政治的に正しい警察小説』以外は…
秘密の海
児童虐待を題材としたミステリー。1ページ目からトリックを仕掛けてくる。
神を殺した男
将棋界が題材。20年前に神のごとく強かった棋士が殺された。20年振りにその真相が明かされるのだが、意外と現代的な理由で…。傑作ミステリーだった。
推定冤罪
冤罪が題材。グロっぽいマンガを描いていたマンガ家が冤罪で逮捕されて…。というお話。
カレーの女神様
カレーが題材。ふらりと入ったカレー屋さんが何故か思い出のカレーの味と全く同じだった。レシピに込められた秘密は…。
「あれ?このカレーの話ってヤンジャンの『華麗なる食卓』で読んだような…それとも『美味しんぼ』だっけ?」
と思っていたら、そうくるか!
史上最強のカレーといえば『包丁人味平』のブラックカレーだけど、『カレーの女神様』はブラックカレーを越えた!
*1:他にもいるが