破壊屋ブログ

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日本で○○捜査官!『ヘルドッグス』鑑賞前の雑知識

今回のエントリ、ネタバレはありませんが完全に知らない状態が良いという人はこれ以上読まないでください。

映画『ヘルドッグス』が9月16日に公開されますが、基本設定を知りたい人はまずは漫画版『ヘルドッグス』の第一話だけ読んでください。ちょっと驚くと思います。
comic-walker.com



というわけで『ヘルドッグス』は日本では珍しい潜入捜査官モノなんですね。今回はヘルドッグス周りの雑学ネタを書いていきます。

潜入捜査について

日本で潜入捜査ってあるの?

あります。詳細は『ハコヅメ 交番女子の逆襲』の奥岡島事件編を読んでください、ってマンガを例えに出すのはよくないですね。現実の潜入捜査で私が一番驚いたのは2014年の「駐日ガーナ大使の闇カジノ開帳事件」です。以前から都市伝説みたいな扱いだった大使館カジノですが、摘発されたのはこれが初でした*1
ガーナ大使の闇カジノには五人の警察官が客として潜入、二人の男性警察官は正体がバレて追い出されたそうです。そして潜入捜査官の一人は何と女性警察官でした(だから驚いた)。というか戦後の時代は容姿を基準に選ばれていた女性警察官が、その実力を認められたのは闇市への潜入捜査でした。
若い警察官が大学生を装って過激派に潜入するのも昭和の時代によくあった捜査です。潜入捜査とはちょっと違いますが、皇族の警備なんかも若い警察官が友人を装っているという噂話があります。

あと警察官ではなくて麻薬取締官ですが、おとり捜査の基準最高裁によって2004年に定められました↓
[解説] おとり捜査の適法性(捜査) : 最高裁平成16年7月12日第一小法廷決定 – Legal Introducer

何で日本で潜入捜査官って流行らないの?現実で

これは作者の深町秋生が解説していますが、潜入捜査官を送り込むよりも組織内のメンバーを裏切らせて情報源にするほうがてっとり早いからです。じゃあ何で『ヘルドッグス』は潜入捜査官やってるんだ?という話になりますが、これはネタバレ要素なので本編をお楽しみください。ちなみに深町秋生の別シリーズ『ドッグ・メーカー』は卑怯な手を使いまくって情報源の人材を集める警察官の物語です。
ドッグ・メーカー―警視庁人事一課監察係 黒滝誠治―(新潮文庫)

何で日本で潜入捜査官って流行らないの?フィクションでも

世界中で大量生産されている「潜入捜査官モノ」ですが、日本だけやたら少ないですね。これは私の推測ですが

  • 日本では「おとり捜査=違法」という認識が強い。
  • 海外のように潜入捜査官が退官後に自伝を出版したりしないので、原作本が無い*2

だと思っています。

ヘルドッグスシリーズって?

ヘルドッグス三部作

ヘルドッグスシリーズ【3冊合本版】『ヘルドッグス 地獄の犬たち』『煉獄の獅子たち』『天国の修羅たち』 (角川文庫)
警察と暴力団との抗争を描いた三部作完結のシリーズです。暴力団を潰すためならどんな卑怯な手でも使う警察側と、超絶凶悪暴力団「東鞘会」との抗争です。刊行順に並べると

  • ヘルドッグス 地獄の犬たち(今回映画化された部分、潜入捜査モノでブロマンス要素強し)
  • 煉獄の獅子たち(前日譚、前半はまさかの恋愛モノ)
  • 天国の修羅たち(完結編、女性刑事モノ)

となります。刊行順で読むか?時系列順で読むか?ですが、刊行順で読んでください。前日譚の『煉獄の獅子たち』は『ヘルドッグス 地獄の犬たち』を先に読んでいるのが前提のどんでん返しトリックがあります。

頂上作戦

ヘルドッグスシリーズが描いているのは警察のいわゆる「頂上作戦」です。詳細はWikiを読んだほうが早いでしょう↓
ja.wikipedia.org

Wikiには書いてありませんが、抗争している暴力団があった場合、警察は暴力団を潰すために片方の暴力団に肩入れし、もう片方の極秘情報(組長の潜伏先など)を暴力団に密告する。というのは日本の警察が現実に使っていた作戦です。『ヘルドッグス』でも同様の作戦が登場します。


殺人描写について


『ヘルドッグス』の発売当初のタイトルは『地獄の犬たち』というタイトルでした(後に改題)。発売当時のキャッチコピーは
「警察官の俺に、人が殺せるのか!?」
でした。

「潜入捜査官モノあるある演出」をやらない

世界中の潜入捜査官モノがほぼ確実にやる「潜入捜査官モノあるある演出」があります。それは
主人公の潜入捜査官が潜入先で殺しを命じられて大ピンチに陥る。覚悟をキメて殺そうとすると
「はっはっは!オマエを試したんだよ」
と言われたりとか
「こいつを殺すのは俺だ!」
って別の人が殺してくれるとか
何だかんだで潜入捜査官の主人公はクライマックスまで人を殺しません。ところが『ヘルドッグス』の主人公はバンバン人を殺します、女子供も拉致します、警察官なのに。同じ岡田准一主演作のザ・ファブル』が人を殺さない殺し屋を描いていますが、その逆ですね。人を殺しまくる警察官です。
潜入捜査官モノの最大の疑問点である
「主人公の警察官が潜入先で、何でそんなにアッサリ出世しているんだよ!」
というのがありますが、ヘルドッグスの場合は明確です。単に誰もやらない殺人仕事を主人公が積極的にやっているから出世するのです。

警察官が人殺していいの?

ヘルドッグスシリーズでは主人公のキルカウントがハッキリと描かれていて14件の殺人事件に直接的に関わっています。この治安大国日本において、人を二人以上殺したらほぼ死刑です。この当たりの落とし前については『天国の修羅たち』でハッキリと描かれます。

オマケ:原作の国木田事件について

ヘルドッグスシリーズの原作では「国木田事件」というのが重要な要素になっています。これは現実に起きた事件なので、今からそれを解説しますが、映画版は「国木田事件」とは全くの無関係です。なので現実の事件と無関係の映画を結び付けられるのも困るので、伏せ字が多めの解説になります。

塩の民が祐ける総て森

みなさん昔ネットで大流行した「お○語録」って覚えてますかね?お○はご存知のようにラブホテルでセックスドラッグを使って女性を錯乱させ119番通報せずに死なせました。裁判では最高裁まで争って何と「保護責任者遺棄致死罪」は適用されませんでした。この事件では、お○以外にもう一人現場に男性がいたのでは?という説があります。その人物が自□党の政治家の△喜氏(故人)です。これが事実ならお○は人生を掛けて△喜氏を庇ったのです(『煉獄の獅子たち』では別人が出頭する)。ちなみに出所後のお○は自□党系の事務所で働いていました。
そして△喜氏の父親は今東京五輪絡みの収賄で話題になっている●理経験もある□さんです。この□親子がヘルドッグスシリーズの国木田親子のモデルです。△喜氏は現役政治家のときに飲酒運転でコンビニに突っ込む大事故を起こしていますが、何故か現行犯逮捕されず通常逮捕になりました(『煉獄の獅子たち』でも、この事故は登場します)。

あとヘルドッグスは宗教団体二世の殺し屋が登場しますが、原作が執筆されたのは2015年なので、完全な偶然です。

完全な余談ですが、ヘルドッグスシリーズはKADOKAWAの本だったりしますが、この記事書いている時に京五輪絡みの収賄KADOKAWA会長が逮捕されました。

*1:ちなみに映画『アウトレイジ』のモデルになったのは2009年のコートジボワール大使館の闇カジノ事件で、別モノなので注意

*2:検索したら、日本でも潜入捜査官の自伝本ありましたが