ハッシュタグ『#女性主人公映画ベスト10』を集計しました!有効投票857名が選んだ最高のヒロイン映画は『羊たちの沈黙』でした!
1位:羊たちの沈黙(1991年)
セクハラやトラウマに晒されつつも連続女性殺人鬼に立ち向かうFBI捜査官のクラリス。彼女の姿は世界中の人々に大きな感銘を与えました。
後続の作品に与えた影響も大きく「プロファイリング」は一般用語になり、プロファイリングモノの作品が大量に生産されました。日本に与えた影響も絶大で『踊る大捜査線』から『グラップラー刃牙』までジャンルを超えて様々な作品が『羊たちの沈黙』を真似しています。
ジョディ・フォスターが1位になった記念に当時の日本車のCM動画貼っておきます。
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2位:エイリアン2(1986年)
映画史上最高の名台詞の一つとして名高い「Get Away from her, you bitch(彼女から離れろ、このビッチ!)」は、リプリーがクイーン・エイリアンと対決する人類最強女性VS宇宙最強雌の決戦開始の台詞です。それまでの精神的に強いヒロインではなく物理的に強いヒロインが生まれました。
3位:テルマ&ルイーズ(1991年)
英語版のWikipediaでは「フェミニスト映画の記念碑的作品」と紹介されています。男性による性加害とそこからの反抗を描いた作品です。そして荒野を駆け抜けながらアメリカ的な男性社会を銃と車で打ち破るヒロイン二人の姿もまた実にアメリカ的です。
4位:グロリア(1980年)
組織に狙われる子供を守るために孤独な戦いを挑むヒロイン。『レオン』など多くのフォロワー映画を生み出しました。オシャレな服にふわふわなパーマ、常にカバンを持ち歩き、女性用の小型拳銃で戦う姿はそれまでのハリウッドの男性主人公像を完全否定するものでした。
5位:プロミシング・ヤング・ウーマン(2020年)
ここまでの上位4本は女性映画の定番中の定番ですが、ここからは意外な映画が次々と登場します。本作はヒロインが性犯罪者を罰する典型的なレイプ・リベンジと思わせといて、実際は性加害の意識(男女問わず)との闘争を描いた作品です。そしてこの企画で最高順位の女性監督作品です。
6位:マルホランド・ドライブ(2001年)
このTOP100にはレズビアン映画が多数ランクインしていますが、いわゆる「過激なラブシーン」で同性愛を描いた本作は、このジャンルを大きく発展させました。難解映画ですが手がかりが非常に多いので、とっつきやすさもあるのが魅力的です。
7位:女神の見えざる手(2016年)
今回の集計で一番意外な結果なのは『女神の見えざる手』がTOP10に入ったことです。「銃の規制を実現する、どんな手を使ってでも!」という政治工作を描いた本作はアメリカでは賛否両論でした。しかし銃規制問題が無い日本から見ると、女性が男性的政治社会をぶち壊す点が純粋に評価されるのでしょう。
8位:エイリアン(1979年)
シガニー・ウィーバーとリドリー・スコット監督がTOP10に再登場。男性の性器をモチーフにしたエイリアンに、下着姿のシガニー・ウィーバーが対決するシーンは性犯罪との戦いを連想させます。
ちなみに『エイリアン4』もTOP200に入っています。映画史上最強ヒロインはリプリーで間違いなさそうです。
9位:アトミック・ブロンド(2017年)
「強い女性」が溢れまくっている現代ハリウッドにおいて「最強」の座にいるのは、間違いなくシャーリーズ・セロン!女性のアクション映画はカットを細かく切る傾向がありますが、本作の長回し格闘シーンは圧巻です。
9位:キャロル(2015年)
1950年代の女性同士の同性愛を描いた映画です。魅力的なファッションや、美しい情景、俳優たちの微妙な感情表現の虜になる人が続出。海外では「キャロルカルト*1」と呼ばれるほど熱烈なファンを多数生み出しました。
女性の主人公映画ベスト100
順位 | タイトル | 得点 |
1 位 | 羊たちの沈黙 | 126 |
2 位 | エイリアン2 | 94 |
3 位 | テルマ&ルイーズ | 89 |
4 位 | グロリア(ジーナ・ローランズ) | 83 |
5 位 | プロミシング・ヤング・ウーマン | 75 |
6 位 | マルホランド・ドライブ | 67 |
7 位 | 女神の見えざる手 | 61 |
8 位 | エイリアン | 59 |
9 位 | キャロル | 55 |
9 位 | アトミック・ブロンド | 55 |
11 位 | お嬢さん | 54 |
12 位 | ドリーム | 50 |
13 位 | 燃ゆる女の肖像 | 48 |
14 位 | プラダを着た悪魔 | 47 |
15 位 | オーシャンズ8 | 46 |
15 位 | スリー・ビルボード | 46 |
17 位 | アメリ | 45 |
18 位 | ニキータ | 43 |
18 位 | ジャッキー・ブラウン | 43 |
20 位 | はちどり | 40 |
20 位 | バグダッド・カフェ | 41 |
22 位 | ベイビーわるきゅーれ | 39 |
22 位 | ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー | 39 |
22 位 | マッドマックス 怒りのデス・ロード | 39 |
22 位 | ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語 | 39 |
26 位 | 母なる証明 | 38 |
26 位 | 天使にラブ・ソングを… | 38 |
28 位 | ドラゴン・タトゥーの女 | 37 |
29 位 | キャリー(ブライアン・デ・パルマ) | 36 |
29 位 | ラストナイト・イン・ソーホー | 36 |
31 位 | あのこは貴族 | 35 |
31 位 | この世界の片隅に | 35 |
33 位 | エリン・ブロコビッチ | 33 |
34 位 | ハッピー・デス・デイ | 32 |
34 位 | シェイプ・オブ・ウォーター | 32 |
34 位 | バウンド | 32 |
37 位 | The Witch/魔女 | 31 |
37 位 | 下妻物語 | 31 |
39 位 | 透明人間(リー・ワネル版) | 30 |
39 位 | 風の谷のナウシカ | 30 |
41 位 | 親切なクムジャさん | 29 |
41 位 | ブラック・スワン | 29 |
41 位 | レディ・バード | 29 |
44 位 | ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 Birds of Prey | 27 |
45 位 | ガンパウダー・ミルクシェイク | 26 |
45 位 | ピアノ・レッスン | 26 |
45 位 | ワンダーウーマン | 26 |
45 位 | フランシス・ハ | 26 |
45 位 | 百円の恋 | 26 |
45 位 | キル・ビル Vol.1 | 26 |
51 位 | ゼロ・グラビティ | 25 |
51 位 | ミッドサマー | 25 |
51 位 | デス・プルーフ | 25 |
54 位 | ローマの休日 | 24 |
54 位 | ザ・ハント | 24 |
54 位 | 風と共に去りぬ | 24 |
54 位 | サウンド・オブ・ミュージック | 24 |
54 位 | コーダ あいのうた | 24 |
54 位 | キャプテン・マーベル | 24 |
54 位 | 17歳のカルテ | 24 |
61 位 | ファーゴ | 23 |
62 位 | ゴーストワールド | 22 |
62 位 | マルサの女 | 22 |
62 位 | メッセージ | 22 |
62 位 | サスペリア(ダリオ・アルジェント版) | 22 |
66 位 | フライド・グリーン・トマト | 21 |
66 位 | アデル、ブルーは熱い色 | 21 |
66 位 | ハスラーズ | 21 |
66 位 | 勝手にふるえてろ | 21 |
66 位 | ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー | 21 |
71 位 | ミリオンダラー・ベイビー | 20 |
71 位 | 海街diary | 20 |
73 位 | クルエラ | 19 |
73 位 | ウィッチ(2015) | 19 |
73 位 | ブラック・ウィドウ | 19 |
73 位 | TITANE/チタン | 19 |
73 位 | 女王陛下のお気に入り | 19 |
73 位 | バベットの晩餐会 | 19 |
73 位 | サニー 永遠の仲間たち | 19 |
80 位 | ゴーン・ガール | 18 |
80 位 | 疑惑 | 18 |
80 位 | フラガール | 18 |
80 位 | チョコレート・ファイター | 18 |
80 位 | マリグナント 狂暴な悪夢 | 18 |
85 位 | 女囚701号 さそり | 17 |
85 位 | ダンサー・イン・ザ・ダーク | 17 |
85 位 | ミツバチのささやき | 17 |
85 位 | 人魚伝説 | 17 |
85 位 | ドッグヴィル | 17 |
90 位 | フェノミナ | 16 |
90 位 | ブリジット・ジョーンズの日記 | 16 |
90 位 | チェンジリング | 16 |
90 位 | ゴースト・バスターズ(2016) | 16 |
90 位 | バイオハザード(2002) | 16 |
90 位 | マダム・イン・ニューヨーク | 16 |
90 位 | ヘアスプレー | 16 |
97 位 | (秘)色情めす市場 | 15 |
97 位 | チャーリーズ・エンジェル(2000) | 15 |
97 位 | 時をかける少女(大林宣彦) | 15 |
97 位 | 何がジェーンに起ったか? | 15 |
97 位 | リンダリンダリンダ | 15 |
97 位 | めぐりあう時間たち | 15 |
97 位 | ノマドランド | 15 |
97 位 | ロング・キス・グッドナイト | 15 |
97 位 | Swallow/スワロウ | 15 |
ベストテン総評
というわけでベストテン全てがアメリカ映画でした*2。TOP3の作品は1990年前後の映画で「強い女性」を象徴する作品です。しかしハリウッドはこの後にバックラッシュみたいな現象が発生し、インテリヒロインが野性的な男性主人公に助けてもらう、というパターンの娯楽映画が増えました(野性的な男性主人公を虜にするような「圧倒的美人」な女優がもてはやされていた)。
これは現代でも起きています。現代は女性像を提示するときにポリコレという概念が強くなっていますが、2022年の映画『シニアイヤー』は「ポリコレの時代に90年代のエロエロJKチアリーダーをあえて復権させるヒロイン」を描いています。
「何が悪い」「何が正しい」というよりも現状の価値観に立ち向かう姿こそが映画のヒロインに求められているのです。
ベストテン以降の注目作
- 公開当時は微妙な評価だった『ジャッキー・ブラウン』が18位と大健闘、タランティーノは集計企画では圧倒的強さを見せます。
- 『スター・ウォーズ』からは『ローグ・ワン』がランクイン。レイア姫でもなく、レイ・スカイウォーカーでもなく、無名の一般女性が選ばれたことになります。
- ミラ・ジョヴォヴィッチの『バイオハザード(2002) 』がTOP100に入ったのも注目です。ジョディ・フォスターとミラ・ジョヴォヴィッチは子役時代のロリコン人気が大爆発した女優ですが、ジョディ・フォスターが孤高の高みに登っていったのに対して、ミラ・ジョヴォヴィッチは変なオトコたち(リュック・ベッソンとポール・W・S・アンダソーン)と結婚し、ゲーム映画で体当たりアクションとヌードを披露、海外ではオタクのディーバとして人気あります。
- 「インテリヒロインが野性的な男性主人公に助けてもらう」と書きましたが、そのような90年代ハリウッドにおいて『ロング・キス・グッドナイト』は堂々と「強い女性の大爆発アクション」を描きました。
- 海外で評価高い『リンダリンダリンダ』ですが、2022年夏はこの映画に影響を受けたアメリカのガールズパンクバンド『リンダリンダズ』が初来日します。彼女たちのライブの一曲目はもちろん『リンダリンダ』!
- ロマンポルノからは大傑作『(秘)色情めす市場』がランクイン。ロマンポルノへの投票も多かったです。
非英語の外国映画
- 非英語の外国映画ではフランス映画と韓国映画が強かったです。
アメコミ
アメコミと非アメコミの区分けは難しいところですが(アトミック・ブロンドもアメコミに近い)、世間に広く認知されているアメコミキャラという意味では下記になります。
- ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 Birds of Prey
- ワンダーウーマン
- キャプテン・マーベル
DCがマーベルを下しています。マーベルは映画を通じて多様性を表現しています。ただマーベルヒロインたちのスーツが似たような装甲型タイツばっかりでスーツに多様性を感じられず、露出のあるDCヒロインのほうに自分の意志で生きていくパワーを感じます。
日本の実写映画
- 「日本の実写映画限定」にしてこの企画をやり直したいくらい、面白い投票が沢山ありました。
奮わなかった映画
Top 10 Heroine Movies(in Japan)
- 1: The Silence of the Lambs (1991)
- 2: Aliens (1986)
- 3: Thelma and Louise (1991)
- 4: Gloria (1980)
- 5: Promising Young Woman (2020)
- 6: Mulholland Drive (2001)
- 7: Miss Sloane (2016)
- 8: Alien (1979)
- 9: Atomic Blonde (2017)
- 9: Carol (2015)
集計の苦労
女性映画は再映画化が多い
- 『グロリア』『ドラゴン・タトゥーの女』『若草物語』『キャリー』『透明人間』など再映画化作品が多くランクインし、集計でだいぶ苦しめられました。『若草物語』なんて8回も映画化されていますからね。
- 旬の女優を売り出すために誰もが知っているあの作品を再映画化!という企画が多いのでしょう。
- 私の中では集計企画殺しとして悪名高い『時をかける少女』と『美女と野獣』の両方が登場するのも頭が痛かったです。同じタイトルで4回も映画化されているの。
マッド・マックスはシリーズ映画
マッド・マックスがシリーズ映画だということを知らない人が多いのか、『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』を『マッド・マックス』と略す人も複数いました。第一作の『マッド・マックス』は男性映画の決定版みたいな作品なのに。
もっとも誤字が多い映画
類似語検索機能を使って集計しているので苦労はしていないのですが、『何がジェーンに起ったか?』は誤字が多かったです。
○○ガール
逆に類似後検索機能が仇になったのが「○○ガール」というタイトルでした。あと「ウィッチ」という単語を含む映画も色々あった。
得点調整
『キル・ビル』シリーズへの得点は「Vol.1」「Vol.2」に分割して足しています。『時をかける少女』『チャーリーズ・エンジェル』のようにどの作品への投票か分からない場合は、今までの慣例に従い0.5点として大林宣彦版やキャメロン・ディアス版に加点しました。