破壊屋ブログ

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日本と韓国が悪い意味で仲良かったKT事件

私は日韓関係にトラブルが起きるたびに映画『KT』を見返しているほど政治サスペンス邦画『KT』が超好きな映画です。日韓関係が過去最悪になったので、折角なので未見の方に『KT』の内容を紹介します。

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あの頃、日本と韓国は別の意味で仲良かった。

『KT』の内容を紹介します

映画の後半には触れませんが、日本で金大中(キム・デジュン)が誘拐されるという実際の事件の映画化なのでネタバレもクソもないです。金大中事件は自衛隊が協力したのでは?という説があって、その説を元に『拉致-知られざる金大中事件』という本が書かれました。『KT』はその本の映画化です。
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映画はフィクションだと言い張ってますが、実名や実名をちょっと変えただけの名前がバンバンでます。

主人公1:自衛官

佐藤浩市演じる自衛官の富田(坪山晃三がモデル)は、左翼マスコミに鉄拳制裁を食らわす生粋の隊員。
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彼は自衛隊陸幕の別班(自衛隊で諜報活動する人、正式には認められていない)の人間で、任務は日本国内でスパイ活動する在日朝鮮人を張り込むことだった。張り込みの最中に彼はある韓国人女性に恋をしたりする。
そんなある日、彼に自衛隊の上官から
「興信所(ミリオン資料サービスがモデル)を作って韓国のKCIAに協力しろ」
という指令が下る。なぜそんな指令が下るかというと(ネタバレ)


主人公2:金東雲

駐日本国大韓民国大使館一等書記官の金東雲(実在の人物)は、金大中殺害こそが韓国のためになると信じている愛国者だ。
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だが日本にいる金大中は在日韓国青年同盟(実在の組織)などに守られ居場所すらわからない。金東雲は富田が経営する興信所に金大中の捜索を依頼する。富田と金東雲は
「パチンコ屋が金大中に感銘を受けて資金提供を申し出ている」
という嘘まで作るが金大中の捜索は上手くいかない。北朝鮮との南北統一を悲願とする金大中の政治思想は、北朝鮮が嫌いな富田と金東雲にとっては憎むべき思想。共闘する彼らの間には不思議な絆が生まれていく。

主人公3:在日韓国人

在日韓国人の青年キムは日本で生まれ育ち日本語しか喋れない。恋人も日本人だ。
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家の外に出れば
「チョンのくせに!」
と韓国人差別に晒され、家に帰れば
「日本人との結婚だけは許さないからね!」
と日本人差別に晒される。
だけど漫画『テコンダー朴』のように差別主義者の日本人たちを一蹴するほどの腕っぷしのキムくん。彼は在日韓国青年同盟から金大中のボディーガードとして抜擢される。日本と韓国の狭間で苦しむ青年は、民族統一のために戦う金大中に傾倒していく。青年は金大中の言葉が分からないので、韓国語を勉強するようになる。



という風に映画『KT』は一部フィクションを混ぜながら、KT事件を描いていきます。
他に劇中の激ヤバシーンもご紹介します。

激ヤバシーン:在日ヤクザ

これは、KCIAが在日ヤクザに金大中暗殺を依頼するという激ヤバシーン。でも実話。
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右翼側の人たちがこのシーンを描いたら間違いなく差別扱いされる。作り手たちが左翼側だからこそ描けるシーンだ。私はこういうのを左翼の良きアドバンテージだと思っています。ちなみに白竜演じるヤクザのモデルは山口組系列の組長である柳川次郎(梁元錫)。

激ヤバシーン:靖国神社の前で憲法議論

靖国神社の前で自衛官の富田と左翼マスコミ(原田芳雄)が憲法改正について語り合うシーン。
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主人公は愛国者だからこそ腑抜けな日本が大嫌いになる。左翼マスコミは戦争で酷い目に遭った特攻崩れだからこそ今の状況を「万々歳だ!」と言い放つ。現代だったら日本大好きの右翼VS日本大嫌いな左翼なので、現代の感覚と逆になっているのが面白い。
分かりやすくするために「左翼マスコミ」って書いたけど、劇中の記者は共産党にも失望しているので右でも左でも無かったりする。

激ヤバシーン:大使館員の指紋

事件当時に大問題となった金大中誘拐現場に韓国の大使館員の指紋が残っていた件ですが、劇中ではわざと残したことになっています。
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激ヤバシーン:自民党が怒られる

自民党がアメリカから
「おまえら金大中が誘拐されたのに、何スルーしとんじゃ!早く止めろ!自民党が潰れるぞ!」
って怒られるシーン。
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「与党」でもなく「民自党」でもなくハッキリと「自民党」って言ってる。日本はほとんど長期政権の社会なんだから、フィクションの世界でもバンバン「自民党」って言葉を使っても良いと思うけどな。



この映画の政治思想について

脚本を書いたのは戦う極左の脚本家:荒井晴彦です。戦争を題材にした映画が作られるたびに「日本の戦争加害を描いていない!」と怒り出す人で『この世界の片隅に』にも怒ったので有名。そんな左寄りの作り手が右寄りな男たちを主人公にしているので政治的にバランスが取れた作品になっています。

この映画で意味不明な点

この映画を観た人の多くが疑問に思う点があります。それは佐藤浩市演じる自衛官が、日本に逃げてきた韓国人女性と恋に落ち、さらに韓国の工作員に絆を感じる理由がイマイチ分からない点。実はこの映画のトラブルが関係している。元々の脚本では自衛官の母親はソ連の共産党員に強姦されて殺されており、それが主人公の共産党嫌いにつながっている。だからこそ暴行を受けて日本に逃げてきた韓国人女性を守ろうとして恋に落ち、共産主義と戦う韓国の工作員に絆を感じる。だけど監督の阪本順治が脚本を書き替えて母親のエピソードを削った。私としては凄惨さを無くそうとした阪本順治の気持ちがよく分かるけど、荒井晴彦は激怒。荒井晴彦は雑誌上で『KT』の悪口を書きまくり大きなトラブルとなった(後に和解して二人は大傑作『大鹿村騒動記』を作っている)。

最後に

最悪の日韓関係ですが、私のSNS上では「とにかく日本が悪い!」と言い張る左側と「とにかく韓国が悪い!」と言い張る右側による、罵倒合戦と引用合戦が繰り広げられています。ここは一つ日本も韓国も悪い映画でも観てみんな落ち着きましょう。
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参考エントリ

dot.asahi.com

『KT』について以前書いた記事↓
hakaiya.hateblo.jp