破壊屋ブログ

ネタ系映画ブログです。管理人はこの人→http://hakaiya.com/giccho

サマソニ雑感

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サマソニに20年通い続けています(実際は行ってない年もあるけど)。今回はサマソニ2019の雑感。

スマホ

スマホの性能アップを痛感しました。バラード曲の時にみんなでライトアップすると普通に本が読める明るさです。↓
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昔はコレ、火をつけるライターでやっていたのがもう信じられないですね。
(注:今の若い人へ。昔は男性はたいていライターを持っていたし、誰もライブ中の禁煙を守っていませんでした。)

最近の若者

前二日は普通のサマソニで三日目がクラブミュージックの日だったんですが、三日目の若い客たちはサマソニ慣れしていませんでした。三日目のエントランスでは水筒を持ち込んで取り上げられる人が多数発生。その一方で若い客たちはマナーが良い!昔のサマソニなんか柵を乗り越えるなんて当たり前だったのに、三日目はそんな光景ありませんでした。
あと若い女性たちがみんな左手にスマホ、右手に携帯ファン持っていたのが印象的でした。

ABBAの公式そっくりさん

ABBAの公式そっくりさんのBJORN AGAINが凄く良かったんだけど、驚いたのは日本人がみんな『マンマ・ミーア』と『ダンシング・クイーン』を歌えることだった。観客が合唱していた。
あとABBAの公式そっくりさんがボン・ジョヴィを歌い出したのは最高に楽しかったが意味不明。まるで日本のモノマネ業界だ(山下達郎のそっくりさんが歌うDA・PUMPの『U・S・A』みたいな)。

ブラックピンク

本当に日韓関係最悪なの?と思うほどK-POPのブラックピンクが大人気でした。でもファンたちがガリガリに痩せていたのが気になっていたんですが、登場した本人たちもガリガリだった。ああいうのは健康上良くないのでは?と思った。実際ブラックピンクの時が担ぎ込まれる人が多かった。

盛者必衰

入場規制の常連だったベビーメタルとPerfumeが満席じゃなかったのがかなりショック…。それでも十分に多いけど。そして何故かゼブラヘッドが大復活!マウンテンステージの客を埋めていました。次のサマソニはもっとミクスチャーロックを増やしてほしいな。

その他

  • ベストアクトはザ・インターラプター。コーチェラのライブ映像見てファンになったのでサマソニ楽しみにしていた。伝説的名曲のSound Systemのカバーやって、観客が発狂したかのように熱狂していた
  • シカゴのパンクバンド:アリスターがスピッツの『チェリー』やったのがうれしかった。https://www.youtube.com/watch?v=WyLQOHbtw5Q
  • 日本のフェスはXperiaがスポンサーなのが嬉しい。Xpreiaファンなので。

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  • 猛暑の中スパイダーマンやって疲れた俺の顔。俺が今犯罪犯すとこの写真が使われるのか…。

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日本映画とアメリカ映画は音楽の使い方が違う(2018年の映画あるある)

日本映画とアメリカ映画は音楽の使い方が違います。おおざっぱに説明すると

アメリカ映画

既存曲を十数秒だけ使う。歌詞や曲の背景が映画のシーンを説明している。

日本映画

新曲を3分使う。歌詞にはあまり意味がなく、曲の背景はタイアップ目的。

という違いです。一応言っておきますがタイアップが悪いというわけじゃないです。それに安易なタイアップなら90年代から00年代にかけてのアメリカ映画とロック業界のタイアップのほうが酷かったです。

で、アメリカ映画で流れる曲には意味があります。ところが最近はその傾向が強すぎて、違う映画で同じ曲が同じ意味で使われることが多くなってきました。2018年に使われた音楽を解説します。

エロを使わずにエロを表現するときに『スーパー・フリーク』

『ボヘミアン・ラプソディ』で『スーパー・フリーク』が使われていました。リック・ジェームスの『スーパー・フリーク』は歌詞がかなり卑猥なので、映画の中でエロを使わずに卑猥を表現するときに使われます。曲の意味を知っていると
「ああ、ここはフレディの乱れた性生活を表現しているんだなぁ」
とわかります。

他の映画だと『リトル・ミス・サンシャイン』で子供がいるシーンで『スーパー・フリーク』が流れるので周囲の大人が激怒するシーンがあります。

愛国心を歌うシーンで『カントリー・ロード』

日本だと『耳をすませば』で使われた曲、くらいの認識の『カントリー・ロード』ですが、2018年は『キングスマン:ゴールデン・サークル』と『ローガン・ラッキー』の両方で、愛国心を奮い立たせるシーンで『カントリー・ロード』が歌われました。この件はこちらを参考に↓
hakaiya.hateblo.jp


前向きなシーンで『オン・トップ・オブ・ザ・ワールド』

日本には無い概念ですが「Feel Good Movies」というジャンルがあります。観ていて良い気分になれる映画のことです。Feel Good Movies系の作品や予告編ではイマジン・ドラゴンズの『オン・トップ・オブ・ザ・ワールド』がよく使われます。前向きな歌詞とメロディが気に入られているのでしょう。

2018年では『ライフ・オブ・ザ・パーティー』が『オン・トップ・オブ・ザ・ワールド』をオープニングに使っていましたが、『俺たちスーパーマジシャンズ』でも同じ使われ方しています。違う映画で同じ曲が同じシーンで使われる現象もここまで来たか!と驚きました。

80年代ソング

80年代ブームなので2018年の映画では80年代ソングがよく使われました。ニュー・オーダーの『ブルーマンデー』とかヴァン・ヘイレン『ジャンプ』が80年代を表現するために使われていました。でも2017年でも『ブルーマンデー』は映画『アトミック・ブロンド』、『ジャンプ』は『怪盗グルーのミニオン大脱走』で同じ目的で使われていました。正直「またか…」という気分になります。

AC/DCと移民の歌

マーベル映画がAC/DCというバンドの曲を使って大成功しているので、それにあやかってかAC/DCを使うアメリカ映画が増えています。あとレッドツェッペリンの『移民の歌』の歌詞の意味は戦闘と侵略の開始なので、いろんな映画で戦闘シーンが始まるときによく流れます。

日本映画の場合

日本映画は映画とタイアップ曲の内容がてんでバラバラということがあります。2018年では『去年の冬、君と別れ』がちょっと酷かったです。歌詞も曲調も映画の内容にまるで合っていないのでエンディングでガックリ来ます。


でも日本映画でも歌詞とシーンが密接に関係あるシーンがあります。それはカラオケです。日本映画はカラオケのシーンがめっちゃ多いんですね。そのときに歌っている歌詞は登場人物の心情を上手く表しています。

猫は抱くもの

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ハード・コア

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刃牙と末堂の対格差はどれくらい酷いのか?

今回は刃牙ネタ。
グラップラー刃牙 1 (少年チャンピオン・コミックス)

週刊チャンピンで『グラップラー刃牙』の第1話リメイクがあったけど、気になるのは刃牙がキック一発で末堂を倒すというオチだ。でもこの二人は体重差メッチャあるよね。あり得なくない?刃牙と末堂の対格差がどれくらい酷いのか計算してみた。

末堂の体重 130kg
刃牙の体重 71kg
末堂と刃牙の比率 55%
成人男性の平均体重 65.5Kg
成人男性の平均体重×比率 36Kg

36Kgは小学校高学年の平均体重だ。つまり日本の平均的な成人男性が、小学校高学年の少年にキック一発で倒されたことになる。現実的にはこんな事ねーよ!と思ってしまう。ただ現実でも身長180センチの男性が30センチ低い女性に襲い掛かり、格闘術で瞬殺されたというエピソードがあるのだ。だから刃牙VS末堂も絶対にあり得ないとは言えないだろう。襲った俺が言うエピソードなんだから間違いない

『天気の子』に似ているアメリカのホラー映画

君の名は。』が公開されたときには
「映画『イルマーレ』に似ている!」
という声が多かったけど、今回の『天気の子』にも似ている映画を見つけた。ちなみにパクった可能性は絶対ゼロ。私が勝手に共通点を見出しているだけだ。

その映画は2012年のアメリカのホラー映画『キャビン』だ。

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↑『キャビン』には日本ネタが多い


キャビン(字幕版)



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↑『キャビン』では今や超有名俳優になったクリス・ヘムズワースマイティ・ソー)が死亡フラグ立ちまくりの男を演じている。

今から『キャビン』のネタバレを書くわけだけど、一点困ったことがある。私はこの映画の公開時に応援コメントを書く名誉に預かっている。その時のコメントがコレ↓

つまりネタバレを知らずに観たほうが絶対に楽しめる映画なのだ。なのでこの先はあまり読まないほうが良いかもしれない。なるべく短く書くけどラストシーンはバラす。


ヒロインは普通の女子大生。男はいつもマリファナ吸っているオタクくん。彼らは友人たち合計5人で森の小屋(キャビン)で休暇を楽しむという内容だ。
で、映画の後半で真相が明らかになる。『天気の子』とは性別が逆だけど、オタクくんを生贄にしないと世界の形が決定的に変わってしまうのだ。

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世界を守るためにオタクくんを生贄にしようとするヒロイン。チャカが出てくる辺りも『天気の子』と同じですね!(アメリカだから珍しくない)

ここでRADWIMPS最凶ラブソング『ます。』の歌詞を思い出してほしい。

あなた一人と 他全人類
どちらか一つ 救うとしたらどっちだろかな?
迷わずYOU!!!!


『キャビン』のヒロインも『天気の子』と同じ判断をした。RADWIMPSと同じ判断をした。オタクくんを本気で殺そうとはするけど、結局生贄に捧げなかったのだ。こうして世界が変わってしまうのでラストシーンで二人はとりあえずマリファナを吸うのだった…。




「世界の形が変わりました!終わり!」という映画は昔から何度かあるけど、何度かあるのに観るたびに「そんなバカな!」と衝撃を受ける。『キャビン』や『天気の子』の後半の展開にも凄まじい衝撃を受けた。
ただ私は『君の名は。』を一緒に観に行った恋人が別の男と結婚して「あ、結婚するのね?新しい君の名は?」って思わず思考した秒速5センチメートル側の男なので、『天気の子』のような純愛に感情移入できなかったのが、ちょっと残念。



『キャビン』の内容はだいぶ端折って書いたけど、実際はホラー映画のアベンジャーズみたいな豪快な作品です。アベンジャーズキャプテン・マーベルマイティ・ソーみたいな最強キャラがいるように、『キャビン』では日本に最強系キャラがいる!それは観てのお楽しみ。
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長瀬の「ジャニーさんは地獄行き」発言を解説

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分かりにくいですが『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』のオープニングの長瀬智也


ジャニー喜多川氏が亡くなってTOKIO長瀬が

ジャニーさんはカッコ良すぎるのでたぶん地獄行きです。

僕も地獄を目指している男なのでまた地獄で会いましょう。

それまでゆっくりお休みください。

と発言したことが話題になっている。今回はこの発言の元ネタ解説です。

天国

まず天国を解説します。私は過去に宗教映画コラムを2回書いていて(ネットにはありません)、その関係で大量の宗教映画を見ている。宗教映画を見ていていつも気になるのは「天国よりも地獄のほうが楽しそうじゃね?」という点です。基本的に天国のメリットって

  • 神様と一緒になれる
  • 食料に困らない
  • 穏やかに生活できる

だけなんですね。これはたいていの宗教が食料事情が極端に悪かった時代に形成されているからです。だから宗教映画内の天国はいつも古代の生活を送っています。すっげーつまらなそうな描写です。

地獄

で、宗教映画は地獄描写をメッチャ頑張るんです。天国の描写は決まり切っているけど、地獄の描写は好き勝手に描ける。幸福の科学映画なんかは地獄で大冒険するという展開が定番で、地獄のシーンが楽しくて天国のシーンがつまらないのも鉄板です。
だから私はずっと「天国よりも地獄のほうが楽しそうじゃね?」という疑問に思ってました。それにハッキリと答えを出した映画があります。それがジェイ・ストーム(ジャニーズ専門の映画会社)が製作してTOKIO長瀬と神木隆之介がW主演した映画『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』です。

以下は完全ネタバレです。

中盤までの展開

神木隆之介演じる主人公が事故で死んでしまい地獄に行くと、長瀬智也演じる地獄の鬼キラーKと出会う。キラーKも元は人間のミュージシャンだったが超ダメ人間。恋人(尾野真千子)に散々迷惑をかけた挙句事故で死んだ。キラーKは恋人のためにラブソングを作った直後に死んだので、恋人の目の前でラブソングを演奏できなかったことをずっと後悔している。キラーKは地獄の鬼になったので転生もできない。

(地獄から現世に転生した人一覧↓)
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主人公には目標ができた。現世に転生して、キラーKの恋人の前でキラーKの代わりにラブソングを歌うことだ。で、十何年もかけて何度も転生するけど動物にばっかり転生するのでラブソングが歌えない。そしてある日、その恋人も事故で死ぬ。

後半からラストシーン

恋人は天国に行った。地獄の住人たちである主人公たちには、もう絶対にラブソングを届けることはできない。地獄のロックフェスティバルで優勝して天国に転生する方法以外には。こうして主人公たちは地獄のロックミュージシャンたち(マーティ・フリードマンROLLY)に戦いを挑むのだ!

で、この映画のオチなんだけど主人公は天国に転生できる。キラーKの恋人の前でラブソングを演奏もできる。そして主人公は天国で生活することになるんだけど…。
ひたすら穏やかに生きていく天国の生活がつまらなさすぎて激怒。主人公は自分の意志で地獄に落ち、キラーKと再会して地獄で楽しく暮らす。地獄に落ちるのはカッコいい人。ジミヘンもランディ・ローズゲイリー・ムーアもみんな地獄にいるのだから。

天国よりも地獄

冒頭の長瀬智也の追悼発言は、明らかに映画『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』の内容を受けたものだ。だから長瀬の「僕も地獄を目指している男」の意味は「俺はカッコよく生き続ける」という意思表示であって、TOKIO山口やジャニー喜多川のように性的な事件をやらかすという意味でありません。

『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』はあまり評判良くない映画だけど私は非常に高く評価している。長年宗教映画を観てきてずっと疑問だった。
「天国よりも地獄のほうが楽しそうじゃね?」

「その通り!地獄のほうが楽しいよ!」
とハッキリと明確な答えを出しているから。これは宗教的観念が適当な日本人だからこそ出せた答えだ。

余談1


オープニングとエンディングに流れる「カッコ良すぎて地獄に落ちた」の曲。歌っているのは長瀬智也、曲を作ったのは何とマッド・カプセル・マーケッツのKYONOである。

余談2

大ヒットした創価学会の宗教映画『人間革命』も死後の世界を否定している。戸田城聖池田大作の師匠)が
「君たちは極楽や地獄を信じるかね?私は嫌だね、酒も飲めないしネエちゃんもいない」
と説教する名シーンがあったりする。

余談3


星野源最高の名曲。このPVは日常生活よりも地獄の楽しさを歌っている。

隠語をそのままの意味で受け取っていませんか?

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トム・クルーズ(右)の出世作『卒業白書』で出前を頼むシーン。もちろん出前ではありません。



『ザ・ファブル』と日本映画で暗躍する組織について - 破壊屋ブログを書いてネット上の反応調べたら
「ファブルに出てくる花屋って風俗だったの?」
という意見が複数あって驚いた。もしかして隠語をそのままの意味で受け取りながら映画や小説や漫画を読んでいる人って多いの?

ゴルゴ13

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女性に花をプレゼントするために、ゴルゴ13が花屋に電話するシーンではありません。

機動警察パトレイバー

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スーパー銭湯でジェットバスに浸かろうとするシーンではありません。

のたり松太郎

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トルコアイスをたらふく食べてきたシーンではありません。

上記は全部性風俗のシーンです。アメリカでは自宅派遣型の買春がメジャーでした。日本でも買春は違法だけど「特殊なお風呂屋さん」という建前で運用しているんですね。特殊なお風呂屋さんは昭和の時代には「トルコ風呂」と呼ばれていました。

こんなエントリ書いている私も性風俗を意味する赤線の意味をずっと知らなかったです。『ゴルゴ13』の↓のシーンは「赤線業者」をイギリスの鉄道関係の業者だと思っていました。
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(ちなみにクリスティーン・キーラーとは実在の高級娼婦で、冷戦時代にイギリスとソ連の大物要人たちの客となり大スキャンダルになりました)



それどころか学生時代の私は赤線を見ても気づいていませんでした。高校大学と私はずっと伝説的映画館の横浜日劇に通っていました。あの一帯は映画館が有名でしたが、それ以上に有名な赤線地帯でした。赤線は1階がバーカウンターで2階が風俗なんですね。建前上はスナックというわいけです。学生の私の目に入っていたのは1階だけなので、エロい恰好した外国人女性たちがズラーっと並んでいるのを見ても
「すごいスナックだらけだ…でも客が飲んでいるのを見たこと無いなー」
と数年間思ってました。あれが赤線だと知ったのは社会人になって先輩社員の会話から察した時です。

『ザ・ファブル』と日本映画で暗躍する組織について

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という記事タイトルにしたけど、何のことはない。映画『ザ・ファブル』を観ていたら、原作にあった単語

  • ヤクザ

といった言葉が全て

  • 組織
  • カンパニー

に置換されていた。これは日本映画あるあるで、やたら「組織」という曖昧な単語を使いたがる。日本映画では「恐ろしい組織」というのがよく出てくるけど何の組織かはよくわからない(注:ファブルは原作でも「組織」という曖昧な言葉が連発されているので、映画が悪いわけではない)。実在する企業や団体名をバンバン出して悪口を言うアメリカ映画とは大きく違う。そして「組」以外にもう一つ消えていた単語があった↓

デリヘル

ザ・ファブル』では「デリヘル」という単語が一切登場しなかった。すべて「花屋」に置換されていた。映画館では私の後ろの席に小学生高学年くらいの男の子がいたんだけど、怖い人たちが花屋を開くというシーンで男の子は本当の花屋だと思ったらしく
「ぶわはは!花屋だって!」
と大声を出して、映画館内の雰囲気をずいぶんと気まずくしてくれた。

デリヘルが無くなった影響

派遣型売春を「花屋」と表現するのは今も昔も日本でも世界でも同じなので言葉の置換としては問題ない。ただ原作にあったデリヘルを巡る攻防も大幅に無くなっているので、ヤクザがなぜ争っているのか分からなくなっている。出所した小島はデリヘルを始めたいのだが、同じ組で既にデリヘルをやっている。このデリヘルの経緯が分からないと、小島が刑務所から出てすぐ人を殺す理由も分からないし(既存デリヘルの社長なので邪魔だった)、小島がヒロインにまとわりつく理由も分からない(デリヘル嬢が欲しい)。
とはいえ脚本が上手く機能しているので、デリヘル要素が無くなっていても話の筋には問題なかった。原作にあった盗撮やエロ仕事の描写は生温くなる一方で、死体の数は桁違いに増えているので映画的には正しい選択をしている。

最近の日本映画の傾向

ザ・ファブル』は面白かった。原作再現度が高いし、アクションは楽しいし、原作エピソードのまとめ振りが見事だった。数年前までは漫画が実写化されると「これだと原作かんけーねーじゃん!」という怒りの声が渦巻いたこともあって、最近のマンガ実写化は「原作マンガをいかに実写で再現するか」という点に全力で尽くしている。

ただ一方で日本映画ならではの欠点もあった。私が気になったのは

殺人者(福士蒼汰柳楽優弥)が「ギャハハ」と笑いながら人を殺す

⇒これは日本映画で大量発生している殺人鬼像だ。もちろん原作とかけ離れている。福士蒼汰のキャラなんて原作だと寡黙だ。イケメン俳優が殺人鬼を演じるときは、なぜかサイコパスになるんだよね。ガチの殺人者はマズいという、事務所の判断なのかな。

主題歌の歌詞と映画の内容がまるで合ってない

レディ・ガガの『ボーン・ディス・ウェイ』が流れたときはズッコケそうになったけど、Twitter検索かけると「ガガが流れるからファブル観に行く!」という意見がメッチャ多いんだよね…。

でもまあ、こういう改変があるからこそ『ザ・ファブル』は小学生でも観に行ける大ヒット作になったのだ。
ちなみに原作だと手作り銃の製作過程を細かく描くのですが、これも映画だと大幅カット。真似されたら大変だからね...。