顔面を塗ってアジア人のフリをして、黒人差別発言をするエディー・マーフィー。ただこれは「黒人だと養子の貰い手が少ないから俺が父親になってこの子を育ててやる」という意味も含まれる。
大晦日の『笑ってはいけない』で、顔を黒塗りしてエディー・マーフィーのコスプレをするギャグが議論になっているけど、俺もあのギャグは問題だと思っている。しかしあの議論には大事な観点が抜けていると言わざるをえない。
その観点とは…
顔面ペイントで他の人種のフリをするのってエディー・マーフィーの持ちネタじゃん!
どうしてこの観点が抜けているのかというと、それはもちろん関係無いからだ。そしてもう一つ大事な原因がある。それはみんなエディー・マーフィーのことをすっかり忘れているということだ。
『星の王子 ニューヨークへ行く』のエンド・クレジット。劇中気づかなかった人もエンド・クレジットで「あの白人はエディー・マーフィーだったのか!」と気づくようになっている。
エディー・マーフィーの主演作が当たり前のように公開されていたのは昔の話。エディー・マーフィーが白人のフリをしていた『星の王子 ニューヨークへ行く』が30年前、特殊メイクでアカデミー賞を取った『ナッティ・プロフェッサー クランプ教授の場合』が20年前か、そりゃみんな覚えてないね。そういえば2002年に『チャーリーと14人のキッズ』が公開されたときに、映画批評サイト管理人のM@stervisionさんが
「タイトルよりも観客が少なかった」
という批評を書いていた。同じ2002年のエディー・マーフィー主演のSF超大作『プルート・ナッシュ』は、歴史的失敗作なのに歴史的失敗作をまとめたサイトにも登場しないほど忘れ去られた失敗作だ。その後エディー・マーフィーは『シュレック』の声優と『ドリームガールズ』で復活すると思いきや、隠し子スキャンダルで致命的ダメージを負っていた。
どんどん落ちていったエディー・マーフィーが2007年に作った映画『マッド・ファット・ワイフ』。このポスターを見ればわかるように、エディー・マーフィーとエディー・マーフィーのラブコメである。これが駄作だらけのエディー・マーフィーの作品群の中でもトップを争う駄作だ。
黒人が主役のコメディ映画って女性への性的な罵詈雑言ギャグが酷かったりするんだけど、『マッド・ファット・ワイフ』はそれが臨界点を越えるレベルで笑えない。これはアメリカ公開時でも問題になった。ただよりによってエディー・マーフィーが演じるアジアの老人を演じるキャラクターが面白い。
『マッド・ファット・ワイフ』で顔を肌色に塗ってアジア人に変装したエディー・マーフィーだ。このキャラクターは変な喋り方と変な動作をしていて(志村けんの変なおじさんにソックリである)、子どものペットを料理の食材にする。あとクジラをぶっ殺すのが好き。まあアジア人男性への偏見が結実しているキャラクターだが、怒る気はない。
他の人種のフリをする、というのは黒人であるエディー・マーフィーだからこそできるギャグだけど、これからの時代はそれも難しいと思う。
オマケ:サタデー・ナイト・ライブの動画。白人になったエディー・マーフィーが「黒人がいないので白人たちが嬉しがっているバス」や「白人だとローンの審査が通りやすい」といった状況を体感している。見事な反差別ギャグだ。
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