『鬼滅の刃』や『ジョジョの奇妙な冒険』といった能力者バトル漫画モノがありますが、その原点が忍者モノだというのはよく知られた話です。で、その忍者モノの頂点である白土三平が亡くなりました。白土三平の忍者モノが異色だったのはとんでもない忍法でもちゃんと原理が存在したことです(注:無いのも多いけど)。
↑昭和マンガあるあるの解説ページ
今回はその中でも特に
「いや、その原理はちょっとおかしいだろ!」
と思った忍法ベスト3を紹介します。出典は『忍者武芸帳』と『カムイ外伝』です。
違いすぎる忍法1位:八本しめじ
別名「八つ身の術」です。高速移動による分身ではありません、影丸が編笠を地面に投げると、地面からもう一人の影丸がニョキニョキと生えてくる。こんな凄まじい忍法はどうやって出来るのか!
手順1:まずシングルファーザーになる
時は戦国の時代なので、赤ん坊や胎児を抱えたまま瀕死になる女性がたくさんいます。そんな女性から赤ちゃんを預かり、シングルファーザーになります。
手順2:普通に子育てする
子育てが始まります。子供に忍者だということがバレないように、常に変装し、普通の仕事にもつきます。
手順3:子供にカミングアウトする
子供が成長したら、暗殺者の忍者が襲ってくるようになります。返り討ちにしましょう。このタイミングで全てをカミングアウトし、親子で忍者として生きていくことを伝えます。
手順4:ループする
手順1から手順3を繰り返します。8本しめじのためには7人子供が必要です。
違いすぎる忍法2位:病葉(わくらば)の法
病葉の法とは「死んだフリをしてやり過ごす」という日本の漫画界ではメジャーすぎる頻出トリックですが、白土三平の「死んだフリ」描写は他の漫画とは次元が違います。
手順1:殺しまくる
死んだフリをするんだから死体が無いと始まりません。そこらへんのゴロツキ勢力を2つ雇って殺し合いさせます。
手順2:死ぬほどの大怪我をする
ゴロツキの中の一人が実は暗殺者です。殺し合いの最中に死なないくらいの大怪我します。
手順3:治療しないで耐える
死んだフリなんだから、大怪我しても一切治療しません。ずっと死体のフリをします。
手順4:動物に喰われるけど耐える
死体として放置されているので、野犬やネズミに喰われますが反応してはダメです。されるがままです。
手順5:腐るけど耐える
怪我した箇所の肉が腐ってきて蛆虫が湧いてハエだらけになりますが、反応してはダメです。
手順6:ターゲットが死体を片付けにくる
腐ってきてハエだらけになると、近くに住むターゲットが「死体埋めなきゃ」と近づいてきます。そしたら隠していた刃物でターゲット殺しましょう!
↑都合よく死体(暗殺者)に近づくターゲット
違いすぎる忍法3位:九の一
白土三平がもっとも多用したトリックは
「一緒に暮らしていた人が自分を殺しに来た暗殺者だった」
です。多用と言ってもあの手この手で表現したので、毎回驚愕させられます。その中でも一番驚かされたのが九人がかりで殺す!前に九人で一緒に暮らす「九の一」です。暗殺のターゲットは最強の忍者カムイです。
手順1:会社を作る
まず九人で材木業を営んで、ターゲットが自分の会社に就職してくるのを待ちます。
手順2:生活を共にする
ターゲットが入社しました。山の中で暮らす仕事なので、仕事も食事も睡眠も全部一緒です。でもターゲットを殺さずにチャンスを待ちます。
手順3:雑用係を虐待する
合計十人の男が暮らすわけですが、炊事・洗濯・湯沸かし・宴会の手配・三助(風呂で体を洗わせる係)、全て一人の雑用係の少女です。重労働を通り過ぎて虐待です。三助までやらせていますが、少女は器量が悪く九人の男は性的には興味無しです。ただ殴る蹴るで言うことを聞かせます。
手順4:ターゲットと雑用係が仲良くなる
そんな虐待だらけの生活の中でターゲットと雑用係は少しづつ仲良くなっていきます。
手順5:返り討ちに遭う
チャンスだ!とばかりに九人がかりでターゲットに襲いかかります。しかし相手は最強の忍者カムイ。たったの1ページで九人全員皆殺しの返り討ちになります。
手順6:雑用係は実は美女だった
男たち九人が全員死んだので雑用係の少女が正体を見せます。実は少女はレイプされないように自分を醜く見せていた美女だったのです。
手順7:一緒に逃げる
ターゲットと少女は一緒に逃げる愛の逃避行にでかけます。
手順8:雑用係も暗殺者だった
ここまで来ればターゲットも完全に油断しています。少女と九人の男たちは実は仲間でした。九人の男が一人の暗殺者を隠す。これが忍法「九の一」です。
解説
ここまで手の込んだトリックなのにあっさり失敗、少女は死んでカムイは生き残ります。
「一緒に暮らしていた人が自分を殺しに来た暗殺者だった」
は毎回どれも驚かされはするのですが
「一緒に暮らしているんだから、いつでも暗殺のチャンスはあるだろう!」
というツッコミも毎回です。しかも今回は十人の暗殺者と一緒に暮らしていたんだから。
とはいえ前述の通り、カムイは普通に戦っては絶対に勝てない相手なのです。
余談
私は白土三平の大ファンですが、その出会いは中学生のときに極左な社会科の先生に
「白土三平を読め!」
と強く勧められたからです。この先生はご年配で、あの年代には漫画を意味もなく毛嫌いする人が多かったはず。そんな先生が漫画を勧めてくるというのが不思議で、興味を持ったのがきっかけでした。昭和のマンガは反体制の精神的拠り所の側面もあったのです。
最後に
タイトルの冒頭に気を付けてください。