破壊屋ブログ

ネタ系映画ブログです。管理人はこの人→http://hakaiya.com/giccho

はたらく悪役

「弁護士が役に立たないアメリカ映画」というのが話題になっているので、補足説明。訴訟大国のアメリカの弁護士は銭ゲバな職業として有名で嫌われています。弁護士が企業不正に手を貸し、弁護士が市民生活のトラブルを金儲けの手段としているからです。数々の映画で悪役として消費されてきました。

有名なのは『ジュラシック・パーク』第一作の弁護士でしょうか。この弁護士の死に様↓ですがアメリカ公開時ではこのシーンで拍手喝采でした。そして弁護士たちが連名で抗議するという騒動もありました。
www.youtube.com

韓国映画だと「検察官が悪役」というのが多いですが、これも韓国社会で検察が嫌われているからです。フランス映画だと「移民が悪役」というのが多くて、移民に配慮しているアメリカ映画に慣れているとギョッとする描写も多いです。

日本ではアメリカや韓国ほどの職業悪役の極端な傾向はありません。ただ2016年に「地方創生のために東京からやってきた社長が黒幕」という映画が同時に多数作られたことがあります。地方を食い物にする現状を反映していたのでしょう。

他に日本では「ワガママなクライアント」というのが非常に多いです。アメリカだと「ワガママな上司」が非常に多い。どっちも普段困っている存在が可視化されていて面白いです。

私がよく「?」と感じるのは欧米映画で風俗業従事者の扱いが酷いこと。去年の映画で主人公がうっかり娼婦を殺すシーンがあるのですが「何じゃそりゃ」と思いました。殺された人が他のサービス業だったら成立しない展開です。

『窓ぎわのトットちゃん』と南京陥落は関係無い

今回の記事は、この2つの素晴らしいツイート↓をちょっと補足するだけです。


検索かけると

『窓ぎわのトットちゃん』のオープニングは南京陥落を描いている

といった要旨の投稿がいくつか出てきますが、前述のツイートの通り南京陥落ではありません。皇紀2600年記念行事のほうです。

ja.wikipedia.org


ただ間違える人が続出するのは分かります。実は私も映画鑑賞時は
「あ、南京陥落だ*1
同じ勘違いしていました。どちらにしろ提灯行列をきちんと描いてくれたのは珍しいですね。

昭和の映画やドラマでヒロインモノでは提灯行列はよく出てきましたが、もう今はほとんど無い描写でしょう。

*1:南京陥落の時の日本では提灯を持って行列を作って奉祝していました。そのために日本中の学校がお休みになりました。

2023年の邦画アニメで一番面白かった作品を決めよう!

今年も始まりました!詳細はリンク先で確認してください。

https://hakaiya.com/houani/notice/2023

  • 締め切りは2月19日(月)です。
  • X(Twitter)を使って投票するか、このブログのコメント欄に投票してください。

↓これとかコピペして使ってください。











#邦アニベストテン2023

投票開始の告知ツイート


2023年は長編アニメの公開本数がだいぶ減った年です(今年もリストを作って頂いたmohnoさん、ありがとうございます!)。十本投票できる猛者は少ないと思います。今年から新ルールとして

  • 二本から集計対象

としたので
「アイドルマスター ミリオンライブの第1幕、第2幕しか観てない!」
という方でもジャンジャン投票してください。

また特定の作品に投票を呼びかける組織票も大歓迎です。



画像は2023年の邦アニのAIコスプレです。

『名探偵コナン』のジン


『ゲゲゲの鬼太郎』の猫娘


『君たちはどう生きるか』の夏子


『SPY×FAMILY』のヨル・フォージャー

https://hakaiya.com/houani/img/2023/92.png

2023年の映画ベスト100 ネット投票を集計しました

X(Twitter)上のハッシュタグ『#2023年映画ベスト10』を集計しました!有効投票4457名が選んだ2023年最高の映画は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』でした!

1位:ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3


ジェームズ・ガン監督がベスト1を獲得するのは2021年の『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』以来、アベンジャーズなどを描くMCUの映画がベスト1を獲得するのは2019年の『アベンジャーズ/エンドゲーム』以来です。そして本作はGOTGシリーズ3作目で、MCUシリーズ32作目でもあります。ここまで作品数が多いとついていけない人が多そうですが、本作は動物キャラを主役にして、心動かされる悲しいストーリーを主軸にしたのが勝因です。
またジェームズ・ガン監督の「悪趣味で不健全だけど道徳は守る」という絶妙なバランス感覚も、映画ファンにはピッタリきたのだと思います。ちなみにジェームズ・ガン監督はMCUを離脱して、ライバルのDCの共同CEOとなりました。2025年からスーパーマンたちの新シリーズが始まります。

2位:スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース

スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース
ベストテンにスパイダーマンが入るのは、もはや毎年恒例。本作は前編で、後編の『スパイダーマン:ビヨンド・ザ・スパイダーバース』が現在製作中です。

アメコミあるあるなのですが
「主人公は親しい人が亡くなることで成長する」
って、それじゃあ親しい人は主人公を成長させるための都合良い生贄じゃん!という
「そこにツッコミ入れてもしょうがないだろ*1
にツッコミ入れた衝撃的な展開です。マルチバース(並行宇宙)という世界観を、作品の設定を根本から覆すために使うというのが斬新です。スパイダーマンが無限に登場し続ける後半は圧巻です。

3位:ゴジラ-1.0


我々日本人には「ズタボロの戦後から復興した」という経験があるので「復興に希望を託す」という敗戦国かつ災害国ならではの映画が多いのですが、本作は「戦後復興が始まった日本をゴジラが破壊する」というキャッチコピー通りの「無から負へ」の展開。30年以上前の『ゴジラvsキングギドラ(1991)』の「日本が強すぎてアメリカ・ソ連を超えるようになる」というトンデモ設定*2を考えると、まさに日本がマイナスの時代に突入したことを反映していると言えます。
しかし本作は日本映画史上初の「全米NO.1大ヒット!」となり、世界中で大絶賛を受けその評価は今も拡大中、マイナスどころか超プラスです。
「全米NO.1大ヒット!」
このフレーズを日本映画に使う日が来るとは思いませんでした。

4位:aftersun/アフターサン

aftersun/アフターサン [DVD]
イギリスの小作品が、まさかの四位!TOP3が全てフランチャイズ映画なので、裏ベスト一位は本作だと思います。父親と娘の過去の旅行を描いた本作は、意味の違う三つの映像が組み合わさった作品です。

  • 家庭用カメラ*3の映像→過去に実際に撮影した娘と父の客観的な映像。
  • 普通の映画フィルムの映像→娘が父を思い出して描く補完的な記憶。
  • レイヴの映像→娘が父に会おうとする妄想。

観客はこの三つの映像を観ることで、父親への追憶を体験するという映画です。
毎年似たようなことを書いていますが、今は動画配信の時代なので「映画鑑賞=体験に金を払う行為」になっています。観客に追憶を擬似的に体験させる本作は、まさに現代の映画です。

5位:ジョン・ウィック:コンセクエンス


毎回高順位ながらベストテンに入らなかった『ジョン・ウィック』シリーズの最新作がついにランクイン!
ミッション・インポッシブルと同じで新作が出るたびに「一体どこまでパワーアップし続けるんだ?もう無理だろ?」と鑑賞前の観客を不安に落とし、「まさか期待を超えるとは…」と鑑賞後の観客を呆然とさせてきたシリーズです。
日本最強のアクションスター:真田広之と宇宙最強のアクションスター:ドニー・イェンが対決するというアクション映画ファンにはたまらないキャスティングも最高です。

6位:怪物


今のSNSはちょっと事件が起きれば私達は自分の正しさを信じて「◯◯が悪い!◯◯するべきだった!」と悪い何かを攻撃しています。それが正しいから。
本作はこのような攻撃に晒される側を視点を変えながら描くことで、私達の持つ正義感がいかに人々を傷つけるかを描きます。SNSで正しい発言をしている皆さんを対象とした映画です。絶対に出来ないミステリーのトリックとして有名な「観客が犯人だった」ですが、本作は「あなたも加害者」ということを疑似体験させてきます。

7位:BLUE GIANT

BLUE GIANT

邦画アニメが大豊作と呼ばれた2023年で邦画アニメを制したのは、他アニメに比べると知名度でずいぶんと劣る『BLUE GIANT』です。
秀才型のライバルの前に天才型の主人公が現れる。ライバルは努力によって主人公に立ち向かうが、主人公はさらなる才能を開花していく。という日本のマンガが得意とする成長モノのパターンがあり、本作はその変形版です。
音楽映画にとって最大の難問である「心奪われる演奏」の表現が、アニメなら想像以上の形で実現できるというアニメの特性を活かした映画です。

8位:鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎


戦争帰りで今は血液銀行に勤める会社員:水木が、地方の村で起きる犬神家の一族チックな殺人事件の謎に挑むというミステリー。そこに謎の妖怪男が現れて『ゲゲゲの鬼太郎』へと繋がっていく。

『ゲゲゲの鬼太郎』の原点的存在で『鬼太郎の誕生』という怪奇漫画の大傑作があります。この『鬼太郎の誕生』のさらに前日譚が本作『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』!という説明だとピンと来ない人も多いでしょうね。ここは映画サイトなのでスター・ウォーズで例えます。『ローグ・ワン』のラストシーンは1977年のスター・ウォーズ第一作のオープニングに繋がりますが、アレと同じことをやってのけたのです。戦地帰りの水木しげるだからこそ彼がマンガで描いてきた日本の闇を取り込んだ怪作です。

9位:エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(字幕/吹替)

今は新旧スパイダーマンや新旧バットマンが一つの映画に出演する凄い時代です。こんな企画が通るのも世間に「マルチバース(並行宇宙)」という概念が流行っているからです。そのマルチバースで「普通のおばさん」が戦うのが本作『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(全てのこと、全ての場所が、一つになり)』です。
平行宇宙で別の人生を歩む自分から、異世界転生モノのように能力を手に入れる。例えば視界を奪われたら、失明した人生を歩む並行宇宙の自分の力が助けてくれる。まさに何でもアリの大冒険ですが「人々は色んな人生を歩んでいる」という当たり前のことをテーマにした普遍性のある作品です。

10位:ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り

ダンジョンズ&ドラゴンズ アウトローたちの誇り

伝説的TRPG、というかあらゆるRPGの原点である『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の映画化です。2000年にも『ダンジョン&ドラゴン』のタイトルで映画化されているのですが、アレは歴史的大駄作です。今回の映画化が凄いのは大失敗作の前作と同じ路線だということ!泥棒を主人公にし反権力要素を強め、古臭いファンタジー世界とは真逆の世間ウケを狙ったギャグをてんこもり。前作から大きく改善したのは人種的多様性かな。
演出も演技もセリフも、とにかく楽しさを重視し、観客の意表を付き続けるサービス精神に溢れた娯楽映画です。

Top 10 Movies of 2023 in Japan

  1. Guardians of the Galaxy Vol. 3
  2. Spider-Man: Across the Spider-Verse
  3. Godzilla Minus One
  4. Aftersun
  5. John Wick: Chapter 4
  6. Monster
  7. BLUE GIANT
  8. Kitarō Tanjō: Gegege no Nazo
  9. Everything Everywhere All at Once
  10. Dungeons & Dragons: Honor Among Thieves

2023年日本十大电影

  1. 星際異攻隊3
  2. 蜘蛛俠:飛躍蜘蛛宇宙
  3. 哥吉拉-1.0
  4. 晒后假日
  5. 捍衛任務4
  6. 怪物
  7. BLUE GIANT 藍色巨星
  8. 鬼太郎誕生 咯咯咯之謎
  9. 媽的多重宇宙
  10. 龍與地下城:盜賊榮耀

2023年の映画ベスト100

順位 タイトル 総合得点
1 位 ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3 8778.5
2 位 スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース 8421.0
3 位 ゴジラ-1.0 7069.5
4 位 aftersun/アフターサン 5562.5
5 位 ジョン・ウィック:コンセクエンス 5242.5
6 位 怪物 4862.5
7 位 BLUE GIANT 4576.5
8 位 鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 4246.5
9 位 エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス 4192.5
10 位 ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り 3672.0
11 位 フェイブルマンズ 3658.0
12 位 キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン 3560.0
13 位 TAR/ター 3457.0
14 位 グリッドマン ユニバース 3365.5
15 位 PERFECT DAYS 3316.5
16 位 イニシェリン島の精霊 3162.5
17 位 グランツーリスモ 3145.5
18 位 ザ・フラッシュ 2881.0
19 位 ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー 2852.5
20 位 バービー 2837.5
21 位 窓ぎわのトットちゃん 2802.5
22 位 君たちはどう生きるか 2521.0
23 位 シン・仮面ライダー 2322.5
24 位 ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE 2269.5
25 位 バビロン 2110.0
26 位 2062.5
27 位 イコライザーTHE FINAL 1962.5
28 位 ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー 1936.5
29 位 福田村事件 1926.5
30 位 ザ・ホエール 1918.0
31 位 AIR/エア 1819.0
32 位 Pearl パール 1790.0
33 位 別れる決心 1789.0
34 位 マイ・エレメント 1731.5
35 位 ベネデッタ 1683.0
36 位 リバー、流れないでよ 1668.5
37 位 市子 1599.0
38 位 ヴァチカンのエクソシスト 1512.0
39 位 枯れ葉 1465.0
40 位 ザ・クリエイター 創造者 1413.5
41 位 CLOSE/クロース 1373.0
42 位 コンパートメントNo.6 1329.0
43 位 正欲 1311.5
44 位 ザ・キラー 1283.0
45 位 名探偵コナン 黒鉄の魚影 1226.0
46 位 SHE SAID/シー・セッド その名を暴け 1213.5
47 位 逆転のトライアングル 1197.5
48 位 少女は卒業しない 1195.0
48 位 ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック! 1195.0
50 位 エゴイスト 1183.5
51 位 ウォンカとチョコレート工場のはじまり 1162.5
52 位 イノセンツ 1161.5
53 位 RRR 1097.0
54 位 愛にイナズマ 1096.5
55 位 エンパイア・オブ・ライト 1088.0
56 位 キリエのうた 1052.0
57 位 長ぐつをはいたネコと9つの命 1012.0
58 位 対峙 985.5
59 位 レッド・ロケット 973.0
60 位 アステロイド・シティ 970.5
61 位 オオカミの家 942.5
62 位 THE FIRST SLAM DUNK 909.5
63 位 オオカミ狩り 881.0
64 位 ファースト・カウ 880.5
65 位 TALK TO ME トーク・トゥ・ミー 856.0
66 位 ウーマン・トーキング 私たちの選択 853.5
67 位 映画 プリキュアオールスターズF 849.0
68 位 トランスフォーマー/ビースト覚醒 848.0
69 位 search/#サーチ2 846.0
70 位 ワイルド・スピード/ファイヤーブースト 817.0
71 位 聖地には蜘蛛が巣を張る 802.5
72 位 M3GAN/ミーガン 793.0
73 位 FALL/フォール 768.5
74 位 SISU/シス 不死身の男 751.0
74 位 いつかの君にもわかること 751.0
76 位 アリスとテレスのまぼろし工場 742.0
77 位 SAND LAND 739.0
78 位 インディ・ジョーンズと運命のダイヤル 722.0
79 位 マッシブ・タレント 721.5
80 位 カード・カウンター 719.5
81 位 ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい 704.0
82 位 Winny 698.0
83 位 ハント 692.5
84 位 最後まで行く 685.0
85 位 あしたの少女 676.5
86 位 EO イーオー 671.5
87 位 668.0
88 位 雄獅少年/ライオン少年 662.5
89 位 バイオレント・ナイト 648.0
90 位 MEG ザ・モンスターズ2 615.5
91 位 ボーンズ アンド オール 608.0
92 位 帰れない山 589.0
93 位 アンダーカレント 583.0
94 位 マーベルズ 582.0
95 位 北極百貨店のコンシェルジュさん 579.0
96 位 オットーという男 573.0
97 位 ほつれる 558.0
98 位 パリタクシー 557.5
99 位 バーナデット ママは行方不明 552.0
100 位 大いなる自由 525.0

解説

日本映画、2023も強し!

今回も日本映画が強くて嬉しいです。ゴジラ、ゼルダ、スーパーマリオ、井上尚弥、大谷翔平、YOASOBI。そして数々のマンガとアニメ!2023年は衰退する日本の現状とは裏腹に、日本のコンテンツが世界中で目覚ましい活躍をした年です。しかしこれがいつまで続くかは分かりません。2023年のアメリカ映画はストの影響で多くの作品が製作延期になっていましたが、これから意欲的な新作が次々に公開されます。日本が得意なアニメやゲームは中国が投資に力を入れているコンテンツです。数年前まで日本映画を圧倒していた韓国映画はあっという間に不振に陥っていますが*4、またすぐに逆転される可能性はあるでしょう。
何にせよ、これからも日本は世界中のコンテンツが楽しめる良い国であり続けてほしいです。

フランチャイズ映画の明暗

TOP5のうち『aftersun/アフターサン』以外の四本がフランチャイズ映画(シリーズもの)です*5。フランチャイズ映画は最高!というわけでもなくて、今まで絶大な人気を誇っていたフランチャイズ映画の最新作が失敗していったのも2023年の特徴です。今のフランチャイズ映画は良くも悪くも資本主義を象徴する巨大システムになっており、批判意見も毎年増え続けています。
でもこれって過去にも同じ状況があって、70年代末から始まったブロックバスター映画(都市を破壊するような大ヒット映画)とか90年代のメガバジェット映画(製作費が1億ドルを超える映画、別名ビッグバジェット)とかありました。そして飽和状態となったハリウッド大作映画に小作品が挑んで勝利する、という歴史を繰り返してきました。だからこそ映画は面白いのです。そういえば日本のコンテンツが世界でウケている理由の一つとして、アメコミ疲れがあるという海外批評がありました。

アメリカ映画強し!

フェイブルマンズ (字幕版)

前述の通り、アメリカ映画はストの影響で大きく失速したはずですし、アメリカ映画が日本の興行で苦戦する状況も年々酷くなってきましたが、それでも傑作を連発して多くの映画がTOP100にランクイン。特に11位『フェイブルマンズ』は「映画は夢である」という忘れかけていたことを再確認させ、12位『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』はアメリカの負の歴史を暴き、13位『TAR/ター』は業界内の権力を描くというジャニーズ&吉本問題に直面した日本にピッタリという作品。非フランチャイズのこれらから、相変わらずのアメリカ映画のパワーを感じます。

賛否両論

このランキングのあるある現象の「本国で評判悪い映画がなぜか高評価になる」について。

フランチャイズ映画
  • マーベルズ
  • ワイルド・スピード/ファイヤーブースト
  • インディ・ジョーンズと運命のダイヤル

といったフランチャイズ映画の最新作は本国で叩かれたにも関わらずTOP100に入りました。フランチャイズ映画は過剰に叩かれる側面があるため、公開時のバッシングとファン達の評価が正反対なのはよくあります。

日本映画

むしろ日本映画の

  • シン・仮面ライダー
  • 君たちはどう生きるか

が公開時には戸惑いの声が多かったにも関わらずTOP30に入っています。映画における「賛否両論」が以前のような単純な状況ではないという事ですね。

ディズニー

製作体制の見直しを発表するほど苦境に陥ったディズニーは『マイ・エレメント』が34位と好調で、『ウィッシュ』『リトル・マーメイド』も130位代とTOP100圏外。それでも本国の評判の悪さに比べればまあまあといった順位です。『ホーンテッドマンション』は233位でした。

マルチバース

2023年のキーワードでもあった「マルチバース」という概念に取り組んで盛大に失敗した『ザ・フラッシュ』は18位。劇中のマルチバースネタは私個人の感想ですが、ここ数年の映画体験の中でも最大級の衝撃を受けました。あの大失敗扱いには悔しい思いをしていたので、この高順位は嬉しいです。

奮わなかった映画

日本映画の大作の『沈黙の艦隊』『レジェンド&バタフライ』『東京リベンジャーズ2』など、どれも300位前後でした。 『レジェンド&バタフライ』は豪華すぎる撮影規模や戦国時代の残虐さから逃げない真面目さなど、個人的には高く評価している映画です。ただジャニーズ問題もあって数年後には「何だったんだあの映画」みたいな扱いになりそうです。また興行収入が50億前後の大ヒットとなった『ミステリと言う勿れ』『キングダム 運命の炎』は130位代、『劇場版TOKYO MER ~走る緊急救命室~』は206位でした。ここに挙げた日本映画たちはどれも大作で良作ですが、世間でヒットするだけではこのランキングには載らない厳しさも感じます。
洋画ではシリーズ最高の大ヒットとなり、シリーズ第四弾かつフランチャイズ10作目の製作が決まっている『クリード 過去の逆襲』が290位と意外すぎる低順位でした。

非英語の外国映画


アキ・カウリスマキの影響か北欧系が上位に来ました。

  1. 別れる決心(韓国)
  2. 枯れ葉(フィンランド)
  3. コンパートメントNo.6(フィンランド)
  4. イノセンツ(ノルウェー)
  5. オオカミの家(チリ)

『逆転のトライアングル』はスウェーデン映画ですが、英語なので除外。英米合作なので除外しましたが、イギリス映画(aftersun/アフターサン、イニシェリン島の精霊)が好調だったのも2023年の特徴です。

旧作と二年連続ランクイン

さらば、わが愛/覇王別姫(字幕版)

2022年公開の

  • RRR
  • THE FIRST SLAM DUNK

は2023年もTOP100に入りました。また2023年はリバイバル公開が多かったため、旧作も多く投票されていました。旧作で一番順位が高かったのは『さらば、わが愛 覇王別姫』の175位、1992年の中国の歴史的大傑作です。

雑ネタ

ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー

ブルックリンまで眠らない

2023年はビースティ・ボーイズの超名曲『No Sleep Till Brooklyn』が2つの超ヒット映画

  • ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3
  • ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー

で使われているのが印象的でした。歌詞の意味は「本拠地であるブルックリンに辿り着くまでは、眠らずに大暴れしながら移動するぜ!」という感じ、映画本編でもその意図で使われています。

殺し屋モノ

2015年頃はスパイ映画が人気でしたが、ここ数年は殺し屋映画が増えています。『ジョン・ウィック:コンセクエンス』は「殺し屋が大集合して真田広之のいる日本で大暴れ」という、2022年の『ブレット・トレイン』と同じ系統ですね。『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』も29位と高順位でしたし、もう「日本が治安良いのは殺し屋たちが悪人を殺しているから」というのを世界共通の設定にすれば良いと思います。あ、それだとフィリピンのほうがリアルか。


集計エピソード

集計の苦労

パーフェクト問題

「パーフェクト」という単語を持つ上に文字列の一致率が高い映画が3本あったため、類似後検索機能が上手く判断できなかったです。他に「キングダム」という映画が四本あるのがネックでした。

  • パーフェクト・ドライバー
  • パーフェクト・デイズ
  • パーフェクト・ブルー(去年リバイバル公開された)
ター問題

「ター」という文字列だけで投票されると、類似後検索機能が他の映画と区別がつかない問題がありました。「ター」の検算が一番大変でした。

表記揺れ

表記揺れが一番多い映画は『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』でした。略称が

  • ATS派
  • ATSV派

の二種類に分かれてました。

誤字だ

無から負へ、負から少数へ

誤字が多い映画はブッチギリで『ゴジラ -1.0』です。

  • 正:ゴジラ -1.0
  • 誤:ゴジラ -0.1

「-0.1」だとゴジラの破壊力が全然大したことない印象を受けますね。『ゴジラ -0.1』と書く人が多すぎるので「そういうパロディ映画があるのか?」と疑ったほどです。

正解はコンセクエンス

二番目に誤字が多い映画は『ジョン・ウィック:コンセクエンス』でした。↓の画像は全部誤字です。でも難しいよね、コンセクエンスって。

忘れられた人気映画

『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』を

  • インディ・ジョーンズ5

と書く人が多かったのですが、

  • インディ・ジョーンズ4

と書く人も数名いました。『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』はシリーズ第五弾です。シリーズ第四弾はみんなが忘れている『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』ですぜ。

イーロン・マスク問題

当初はTiwtterAPIを使って投稿者アカウントの人気度を分析して
「映画沼アカウント千名が選ぶ!」
と集計者を千名だけに絞る予定で機能も開発済みでした。ところがイーロン・マスクのせいでAPIが使えなくなったので、この企画は断念。さらにAPIが使えないのでツイートの自動取得も出来なくなり、Togetter経由で集計しました。

得点調整

今回はTOP100に絡む得点調整は無しです。

有効投票数

この手の企画は「有効投票数が多いほど、知名度が高い作品が有利になる、でも有効投票数は一人でも増やしたい」というジレンマがあります。だからこそ「有効投票数を千人に限定する!」という機能を開発したのですが断念。私のところの企画はもう逆に「有効投票数をとことん増やす!」という方向に舵を切りました(検算がすごく大変ですが)。ですから私以外の2023年ベスト企画も是非チェックしてください。

最後に

Jsonデータ

集計用に作ったJsonです。類似企画を実施する方、是非ご活用ください。

次回は邦画アニメ!

2023年は邦画アニメがTOP25に五本も入るという邦アニ大豊作の年でしたが、これは映画ファンが選んだランキングです。別途邦画アニメのベストを決める邦アニベストテンが現在準備中です。邦アニを三本以上観た方は是非参加してください。去年は一位と二位のアニメが1点差という衝撃の結末でした。

*1:「冷蔵庫の女」のようにアメコミ界隈が長年指摘されていた問題でもあります

*2:バブル経済末期だったので微妙な説得力があった

*3:MiniDV

*4:赤字映画が多いため新作への投資が減った、日本ではあまり感じないが韓国国内では問題になっている

*5:ゴジラは世界で最も長いフランチャイズ映画でギネス認定されています

映画『ナポレオン』の補足説明

ナポレオンのタイトルまとめ

『ナポレオン』という作品が多すぎる上に改題も多いので、今後の私の人生では下記のように表現します。

  • 『ナポレオン -獅子の時代-』『ナポレオン -覇道進撃-』→長谷川ナポレオン
  • 『エロイカ』『栄光のナポレオン-エロイカ』→池田ナポレオン
  • 2023年の映画『ナポレオン』→リドスコナポレオン


今回はリドスコナポレオンの補足説明です。

黒人の将軍は三銃士の父親

「もしかして」と思ってX検索しましたが、いるわいるわ。黒人の将軍がポリコレ的配慮だと思い込んでいる人たちが↓


黒人の将軍はハイチ出身のデュマ将軍です。エジプト遠征に参加していたので、映画に出さないほうが不自然です。*1

日本ではデュマ将軍の息子が書いた小説『三銃士』や『巌窟王(モンテ・クリスト伯)』が有名でしょう。ちなみに画像のようなツイートへの批判で「デュマ将軍を知らないなんて、これだから日本人は…」みたいのも複数ありましたが、デュマ将軍をポリコレ配慮だと思い込む現象は海外でも起きています

デュマ将軍を知らないのはしょうがないと思う。ただ黒人を見ると「ポリコレ!」と反応するのは、控えたほうがいいです。

ショタ美少年はその後も登場している

映画の序盤でナポレオンに「父のサーベルを返してください」と訴えるジョゼフィーヌの息子の美少年。サーベルの返却のお礼をきっかけにジョゼフィーヌとナポレオンが急接近する史実です。あの少年はウジェーヌという名前で、劇中では青年となってその後も登場し続けています。ジョゼフィーヌが登場するシーンで、若い男性と女性がセットで登場しますが、男性がウジェーヌ(ジョゼフィーヌの息子)で女性がオルタンス(ジョゼフィーヌの娘)です。ジョゼフィーヌがナポレオンと結婚したことにより、ウジェーヌはナポレオンの養子になります。
史実ではエジプト遠征からロシア遠征まで参加するバリバリの軍人です。またウジェーヌの血筋はノルウェー、スウェーデン、デンマーク、ギリシャの各王家の先祖です。

ラストシーンのワインに蝿がいる意味

あれは比喩的な表現ではなくて(たぶん)、ナポレオンがセントヘレナ島で腐ったワインを飲まされていたという史実です。画面的に「腐ったワイン」を表現するのが難しいので、蝿を使って表現したのだと思います。

拳銃自殺に失敗するのはロベスピエール

映画の序盤で拳銃自殺に失敗するのはロベスピエールです。ロベスピエールはフランス革命後に権力を握り、恐怖政治(テルール)で大量の死刑を実行。「テロ」の語源となりました。フランス史的には超重要人物なのですが、ナポレオンとロベスピエールは一度も会ってないので、ナポレオンを描くときにロベスピエールを出すかどうかは判断が分かれるところです。
長谷川ナポレオンではロベスピエールは重要人物ですが、池田ナポレオンではほぼ出てきません。リドスコナポレオンがロベスピエールを出したのは意外でした。逆にリドスコナポレオンはフーシェの出番がほぼありません。

序盤の謎の女性の正体はジョゼフィーヌ

ロベスピエールが死んだあとに監獄から人々が解放されるシーン。一人だけ顔が見えない謎の女性がいますが、おそらくジョゼフィーヌです。なぜ顔を隠す演出にしたのかは不明です。
史実ではジョゼフィーヌは恐怖政治によって投獄されており死刑寸前でしたが、監獄の中でも男性と恋愛関係になっていました。

浮気を勧めるのはナポレオンの母親

ジョゼフィーヌに子供が出来ないため、ナポレオンに浮気相手をあてがうのはナポレオンの母親です。史実ではナポレオンの妹が浮気相手を調達しましたが、登場人物を減らして話をシンプルにするための良い改変です。

戴冠式で絵を描いているのはダヴィッド

戴冠式で絵を描いているのはジャック=ルイ・ダヴィッドです。有名な絵も多いです。

年金は支払われてない

退位したナポレオンが年金について説明されるシーンがあります。が、史実ではこの年金は支払われませんでした。そのため資金難(兵士の給料やエルバ島の開発資金が足りなくなった)に陥ったことが、ナポレオンの帰還の大きな原因です。

太った王様はルイ18世

後半で太った王様が出てきますが、これが退位したナポレオンに代わってフランスの王となったルイ18世です。フランス革命で王政を打倒したのにルイ18世が復活してしまったことでパリ市民が怒り、これもナポレオンの帰還の要因となります。

おまけ:AIナポレオン

AIで女性のナポレオンを生成してみました。
ナポレオンは女性だった!ジョゼフィーヌと子供が出来なかったのは女性だから。背が低くて渾名が小伍長だったのは女性だから。喋り方が変だったのは女声を隠すため。というフィクションがあったら、史実と違っても余裕で受け入れますよね。

*1:ナポレオンの戴冠式に出ていた黒人のほうが謎で(戴冠式の時はデュマは失脚していた)、そっちは議論になっている

チバユウスケの名曲TOP50(集計しました)

ハッシュタグ『#チバユウスケ名曲ベストテン』を集計しました!有効投票57名が選んだ結果は…。


GEAR BLUES


チバユウスケの名曲TOP50

順位 タイトル バンド名 総合得点 投票人数
1 位 世界の終わり
TMGE
209.0 30
2 位 シャロン
ROSSO
163.0 29
3 位 ダニー・ゴー
TMGE
133.5 21
4 位 なぜか今日は
Birthday
112.0 17
5 位 リリィ
TMGE
93.5 16
6 位 バードメン
TMGE
90.0 18
7 位 ドロップ
TMGE
85.5 14
8 位 1000のタンバリン
ROSSO
83.5 12
9 位 リボルバー・ジャンキーズ
TMGE
73.0 13
10 位 ゲット・アップ・ルーシー
TMGE
67.5 12
11 位 涙がこぼれそう
Birthday
58.5 14
12 位 G.W.D
TMGE
58.0 9
13 位 星のメロディー
ROSSO
56.5 11
14 位 キャンディ・ハウス
TMGE
55.5 10
15 位 ジェニー
TMGE
54.5 8
16 位 BABY YOU CAN
Birthday
54.0 8
17 位 赤毛のケリー
TMGE
48.5 8
17 位 エレクトリック・サーカス
TMGE
48.5 10
19 位 ブギー
TMGE
47.0 8
20 位 爪痕
Birthday
46.5 8
21 位 さよなら最終兵器
Birthday
40.0 9
22 位 スモーキン・ビリー
TMGE
39.5 6
23 位 デッドマンズ・ギャラクシー・デイズ
TMGE
38.5 9
24 位 ジプシー・サンディー
TMGE
37.5 7
25 位 暴かれた世界
TMGE
37.0 8
26 位 GT400
TMGE
36.5 5
27 位 サニー・サイド・リバー
TMGE
36.0 7
28 位 武蔵野エレジー
TMGE
32.5 6
28 位 誰かが
Birthday
32.5 8
30 位 カナリア鳴く空
スカパラ
29.0 6
31 位 深く潜れ
TMGE
28.5 4
32 位 くそったれの世界
Birthday
27.5 4
33 位 太陽をつかんでしまった
TMGE
27.0 5
34 位 CISCO〜思い出のサンフランシスコ(She's gone)
TMGE
26.5 6
35 位 カレンダーガール
Birthday
24.0 4
36 位 スロー
TMGE
23.5 3
37 位 いじけるなベイベー
TMGE
22.5 5
38 位 フリーデビルジャム
TMGE
20.5 3
38 位 アウト・ブルーズ
TMGE
20.5 3
38 位 シャンデリア
TMGE
20.5 3
41 位 愛でぬりつぶせ
Birthday
20.0 4
41 位 キラービーチ
TMGE
20.0 4
43 位 ブラック・ラブ・ホール
TMGE
19.5 6
44 位 ハイ!チャイナ!
TMGE
18.5 4
44 位 青空
Birthday
18.5 5
46 位 I was walkin' & sleepin'
TMGE
18.0 3
46 位 発光
ROSSO
18.0 3
46 位 GIRL FRIEND
TMGE
18.0 5
49 位 KAMINARI TODAY
Birthday
17.5 3
50 位 カーテン
TMGE
17.0 2
50 位 ブラックタンバリン
TMGE
17.0 3

バンド名

  • TMGE:ミッシェル・ガン・エレファント
  • ROSSO:ROSSO
  • Birthday:The Birthday
  • スカパラ:東京スカパラダイスオーケストラ

Spotifyのプレイリスト

open.spotify.com

TOP4解説

TOP4にミッシェル・ガン・エレファント、ROSSO、The Birthdayの三つのバンドが入るという凄い結果になりました。改めて偉大なミュージシャンを亡くしたのだと気付かされます。

1位:世界の終わり

疾走感と寂寥感、という相容れない感情が同居しているのがチバユウスケの楽曲の魅力ですが、その中でも最高峰の曲です。これが一位になることは最初から分かっていましたね。

2位:シャロン

一位が鉄板なので今回のランキングは事実上の二位争いだったのですが、まさかのROSSOの『シャロン』でした!ミッシェルとブランキーのメンバーが合流して新バンドを作るというのは衝撃でした。

3位:ダニー・ゴー

邦楽ロック史上に残る名盤『ギヤ・ブルーズ』の最後を飾るこの曲が入りました。今となっては歌詞にどことなくチバユウスケへの追悼を感じます。

4位:なぜか今日は

The Birthday最高の名曲です。ミッシェル・ガン・エレファントしか知らない方も是非聴いてください。凄まじくカッコいいのに甘ったるさも感じさせる邦楽ロックの理想形の曲です。

全体の感想

投票者たちが濃い!

投票者たちがチバユウスケの熱心なファンだらけで、みなさんの投票を観ているだけで興奮してきました。というか私にも分からないマニアックな曲も多数です。
チバユウスケ名曲ベストテン - Togetter

アルバム曲が強い!

ミッシェル・ガン・エレファントはアルバム曲が強いです。3位の『ダニー・ゴー』はMVが作られてますが、シングル曲ではありません。また7位の『ドロップ』もアルバム曲です*1。『ギヤ・ブルーズ』からは『フリー・デビル・ジャム』『キラー・ビーチ』のアルバム曲もTOP50に入ってます。

登場アルバムが多い!

本当は曲ごとの収録アルバムを記載したかったのですが、アルバムが多すぎるので諦めました。どのアルバムにも素晴らしい曲が含まれています。名作アルバムを連発したのもチバユウスケの凄いところです。

奮わなかった曲

LOVE ROCKETS

チバユウスケのキャリア史上最大級のヒット曲で、Spotify上でもブッチギリで再生回数が多い人気曲ですが、まさかのTOP50に入らず。『青空』みたいに晩年の曲でもTOP50に入っているので『LOVE ROCKETS』だけがここまで奮わなかったのは意外です。とはいえチバユウスケは30年以上、常に曲をリリースし続けており今回投票してくれたファンたちはその歴史と共に歩んできました。『LOVE ROCKETS』も数年後には、その歴史の中に入ると思います。

アウト・ブルーズ

ミッシェル・ガン・エレファントのシングルのオリコンチャートでは二番目に順位が高いヒットシングル*2ですが、TOP50に入らず。アルバム未収録だった影響でしょうか。

集計続けます

これは本日時点のランキングです。もう少し有効投票数が増えればTOP100が発表できるので、集計は今後も続けます。乗り遅れた!という人も是非投票してください。

チバユウスケの楽曲リスト

今回作ったリストをJsonにしました。類似企画やりたい方、是非ご活用ください。
https://hakaiya.com/json/gwd.json

*1:ただし、映画『青い春』では主題歌として使われた

*2:一番はエレクトリック・サーカス

映画『ナポレオン』の批判ポイント

現在公開中の映画『ナポレオン』はフランスで「これは違う!」と大批判を浴びていて、リドリー・スコット監督が辛辣な言葉で反撃しているのが話題になっています。私自身は
「娯楽作品は事実を捏造しても構わない」
という危ない考え方の持ち主ですが、この映画『ナポレオン』に批判が発生する理由もちょっと分かります。というわけで映画『ナポレオン』の批判内容を解説します。


戦争シーン

戦争シーンが第一次世界大戦っぽい

歩兵の動きは第一次世界大戦っぽく、乱戦の描き方は逆に中世っぽく、随分とちぐはぐな戦争シーンらしいです。私はあまり気になりませんでしたが。フランスでは
「1815年と1915年を間違えているのでは?」
という皮肉な批判をされています。映画の作り手たちが戦争シーンにこだわった割には、ナポレオン戦争の再現がおざなりになっているのが批判要素となっています。

機動を描いていない

大陸軍(ナポレオンの軍隊)が常勝無敗の最強の軍隊だった理由は機動です。迅速な機動とそれを可能にした軍団構成こそがナポレオンの強みでした。ところが映画はこの要素を無視して大砲のみを描いています。

湖の罠は無かった

ナポレオンの最も名高い戦争である『アウステルリッツの戦い』です↓。予告編でもハイライトとして使われていましたね。

敵を凍った湖に誘い出して氷を割って溺れさせる!でもこのシーンは予告編の時点から私は「うーん」という感じでした。現代の研究では、フランスの勝利が決まった後に湖の上を逃げる敗残兵を数十人溺れさせた、というのが定説です(当時のナポレオンは戦果を印象付けるために「2万人を湖で溺死させた」と広報した)。
湖を砲撃して溺れさせるというのは画面的に面白いシーンなので、映画で再現したのはすごく良いです。しかし敵軍が凍った湖をわざわざ進撃して溺れる展開はちょっとバカバカしすぎます。またアウステルリッツの戦いは『戦争芸術の粋』とまで呼ばれるほど見事な作戦勝ちでした。フランス軍が不利な状態でもナポレオンが最高の作戦を生み出して勝利したのです。映画がそこをスルーているのはちょっと残念でしたね。例えば外国映画が「関ヶ原の戦いを再現した!」と言いながら落ち武者狩りの場面しか再現していなかったら、そりゃ批判されるでしょう。

どうしてこういう映画になったのか?

これは私の推測ですが、おそらくリドリー・スコットは
「ナポレオンは長年に渡って大砲を使って人を殺しまくったが、最後は失脚して自分の力で突撃した」
という構成にしたんだと思います。というか、そういう構成の映画です。物語的には意味があるような構成ですが、歴史的事実から見れば「?」としか言いようがない。ナポレオンが突撃していたのは若い頃です。逆に年取って総大将になったナポレオンが突撃なんてあり得ない描写です。映画は若い頃の突撃を描かずに、総大将になってから突撃するのでヘンテコな構成になってます。

ジョゼフィーヌの役割がおかしい

ジョゼフィーヌに政治的役割が無い

映画が「ナポレオンの妻であるジョゼフィーヌに焦点を当てた!」と言ってる割にはジョゼフィーヌの役割が恋愛のみになっているのが批判されています。ジョゼフィーヌは当時の社交界の花形であり、人脈の無い田舎者だったナポレオンが成り上がって行くのに重要な役割を果たしました。が、映画ではバッサリと無視されています。ただこれはしょうがないと思います。当時の社交界の人間関係やジョゼフィーヌの愛人関係を映画で描くのは難しいでしょう*1
ちなみにナポレオンとジョゼフィーヌの恋愛を徹底して描いた池田理代子の『エロイカ』は傑作です。ジョゼフィーヌがナポレオンの情熱的な恋を無視して浮気三昧する話です。それがナポレオンの激動の人生と共に力関係が逆転していく。

エジプトからの帰還の理由

エジプトから帰還した理由が「ジョゼフィーヌに会うため」って、これはかなり批判されてます。実際はフランスが外国から攻め込まれている状態を解決するための帰国でした。

エルバ島からの脱出の理由

エルバ島から脱出した理由が「ジョゼフィーヌに会うため」って超批判されてます。私も映画館で笑っちゃいました。実際はナポレオンがエルバ島にいる時にジョゼフィーヌは死んでしまい、ナポレオンはそれを新聞で知ります。映画では辻褄合わせのためにジョゼフィーヌが死んだ年まで変更します。そりゃ皇后が亡くなった日を変更したら怒られるよ。
いや変更はやっても良いんですよ。例えばナポレオン漫画の最高峰である『ナポレオン -覇道進撃-』では、エルバ島を脱出する理由が
「息子に会うため」
になっています。ただその一方で、『ナポレオン -覇道進撃-』ではブルボンの復活(パリ市民がブルボンの復活を嫌がったためナポレオンのエルバ島脱出の動機となった)や、ナポレオンがエルバ島での拉致・暗殺を恐れたこと、エルバ島で資金難に陥っていたこともきちんと描いています。嘘を描くためにはテクニックが必要なのです。

ナポレオンの功罪を描いていない

奴隷制の復活を描いていない

ナポレオン最大の愚行であるハイチの奴隷制の復活が描かれていません。これは現代でナポレオンを取り上げる時に必ず議論になる問題です。
現時点で映画がこれをスルーしたのは、私はしょうがないと思います。ただこれが批判ポイントになるのは我々日本人が
「オッペンハイマーを映画化するのに日本への原爆投下を描かないのはおかしい!」
と憤るのと同じ類のものです。

功績を描いていない

映画は戦争でしかナポレオンを描いていませんが、実際のナポレオンは近代国家の形成に貢献しました。フランス民法法典を始め、銀行や学校も整備しました。ここらへんの功績が一切描かれていません。

歴史的事実に反する

ナポレオンがマリー・アントワネットの処刑を見ている

いやぁ、これはやっちゃうよねー。フランス革命モノを作るときは「登場人物がマリー・アントワネットの処刑を目撃する」は絶対にやりたいシーンだよねぇ。とはいえ、実際のナポレオンはこの時「トゥーロン攻囲戦」に参加していました。トゥーロン攻囲戦はナポレオンの人生の中でも極めて重要な戦いなので、マリー・アントワネット処刑を観ていると大きな矛盾が発生してしまう。

ピラミッドに大砲をぶち込む

ナポレオンがピラミッドに大砲をぶち込むシーンも
「そんな事してねーよ!」
と批判されています。ナポレオンのエジプト遠征は学術調査の意味合いもあるので、ピラミッドに大砲をぶち込むのはありえません。ただナポレオンはヤッファ攻囲戦のように略奪と強姦でエジプトを蹂躙した側面もあるので、その凶暴性を表現する代替手段としては有りかも。

ナポレオンがジョゼフィーヌをぶつ

これは私も「?」となりました。ナポレオンとジョゼフィーヌの離婚の際にナポレオンがジョゼフィーヌを平手打ちするんですよね。実際の離婚式ではジョゼフィーヌがショックで立ち続けることが難しくオルタンス(ジョゼフィーヌの娘)に支えながら離婚式を続行しました。映画だとこれがナポレオンがジョゼフィーヌをぶつ演出になっています。

ホアキン・フェニックス

これはキャスティングの発表の時点で批判されましたね。ジョゼフィーヌはナポレオンよりも6歳年上だったのですが、ヴァネッサ・カービー(ジョゼフィーヌ)はホアキン・フェニックス(ナポレオン)よりも14歳年下です。ハリウッドが年配の男性俳優を優遇する一方で年配の女性俳優は軽んじている悪習は長年に渡って批判されています。本作はその悪習をやってしまった。

逆に褒められているシーン

「ヴァンデミエールの反乱」「皇帝を撃て!」のシーンはフランスでも高く評価されています。実際に素晴らしいシーンでした。

ヴァンデミエールの反乱

「ヴァンデミエールの反乱」は映画の序盤で、ナポレオンが大砲をぶっ放してパリ市民を殺すシーンです。当時としてはあり得ない行動で、この反乱の鎮圧でナポレオン人気は高まります(ナポレオンがフランス人ではなくてコルシカ人だからこそ出来たという説もある)。ナポレオンの残虐さと、その残虐さがナポレオンを英雄へと導くエピソードで、映画ではごまかさずにキッチリと表現しています。

皇帝を撃て!

「皇帝を撃て!」はナポレオンが敵の目の前に出て自分を撃つように促すことで、逆に敵を寝返らせ自軍に取り込むシーンです。ナポレオンが異常なほど高いカリスマ性を持っていたことを表現するエピソードであり、数多のナポレオンモノでも重要視されているシーンです。本作はその中でも屈指の名シーンです。

ナポレオンはとにかく壮大な人生を送ってきたので、何を描いても批判が来ます。本作は158分の映画にまとめるために取捨選択をした作品です。
ちなみに漫画『ナポレオン -覇道進撃-』は娯楽的表現が多いのですが、解説ページを設けることで「本当のナポレオンはこうでした」ということを説明しています。でもその解説ページの文章が10ページにもなっていたりします。ナポレオンはそれほど難しいのです。映画ではある程度ヘンテコな描写があるのは許容すべきです。ただナポレオンの人生をダイジェスト的に表現した本作で、事実と食い違う描写が多いのは批判の的になるかな、と思います。あと、正直つまらなかった…。

まあ誰もが納得する映画なんてありませんが、それが戦争映画となると殊更酷くなります。アメリカの第二次世界大戦映画はソ連を描かない傾向あるし、日本の戦争映画は天皇のことを描かない傾向あるし(なぜか敗戦後に希望を託す作品が多い)、韓国が作る朝鮮戦争映画は韓国軍が米軍に頼りまくっていたことは描かない傾向があります。

*1:本作は未公開の4時間半バージョンもあり、そちらはジョゼフィーヌのシーンが多いらしいですが、ジョゼフィーヌがナポレオンと出会う前がメイン