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映画『Gメン』のキネ旬読者ベスト1位は組織票なのか?
今年もまた組織票ネタです。
まず大前提として、私はファンたちの自発的な組織票を好意的に捉えている人間です。これは組織票を批判するエントリではありません。
映画『Gメン』の快進撃
「キネ旬読者ベスト」で1位が映画『Gメン』になりました。ついでに言うと読者選出の監督賞も受賞、さらに日刊スポーツ映画大賞の「ファンが選ぶ最高作品賞」も『Gメン』が受賞しました。『Gメン』は元キンプリ(Number_i)の岸優太が主演する映画です。
キネ旬読者ベストとは
映画雑誌の老舗である「キネマ旬報」が実施している映画賞があって、これは世界最古の映画賞です。キネマ旬報ベストでは読者からも投票を募って「キネ旬読者ベスト」として発表しています。日刊スポーツ映画大賞の「ファンが選ぶ最高作品賞」も同じく一般投票です。
不審点
キネ旬の読者は相当な映画ファンなので「キネ旬読者ベスト」は大衆性と芸術性をちょうど良いバランスで持っている素晴らしい映画賞です(本家のキネ旬ベストだと大衆性が無い)。ただ人気男性タレントが出る映画が不自然に得票を集める現象は以前から指摘され続けていました。これは「キネ旬読者ベスト」に限らず、一般投票を導入しているあらゆる映画賞で発生しています。
この件については、映画ジャーナリストの斉藤博昭氏が詳しく解説しています。
この記事を要約すると「映画評論家が一票も入れていない映画が、一般投票の映画賞では一位になっている」ということを指摘しています。
news.yahoo.co.jp
この分析記事は完璧だと思いますが、もし
「映画評論家と映画ファンが選ぶ映画は違う」
と反論されたら再反論は難しい。
比較
ということで今回は映画ファンが選んだランキングと『Gメン』を比較してみます。比較対象に使うのはX(Twitter)上の投票を集計した有効投票数4457人の映画ベスト100(以降は「Web投票」と表記)のデータです。また表示されている順位は全て邦画限定です。
↓これが比較結果です。
映画のタイトル | 怪物 | ゴジラ-1.0 | 福田村事件 | Gメン |
---|---|---|---|---|
Web投票の順位 | 1位 | 2位 | 12位 | 101位 |
Web投票の投票人数 | 1173人 | 826人 | 359人 | 18人 |
キネ旬読者ベストの順位 | 4位 | 3位 | 2位 | 1位 |
Web投票だと18人しか投票していない『Gメン』が、1000人以上が投票した『ゴジラ-1.0』に逆転勝ちしています。そもそもWeb投票で『Gメン』より順位が高い邦画が100本もあるのに、それらを全てゴボウ抜きして「キネ旬読者ベスト」を受賞したことになります。
検証データ
Web投票の日本映画TOP75を載せます。
- 1位:ゴジラ-1.0
- 2位:怪物
- 3位:BLUE GIANT
- 4位:鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎
- 5位:グリッドマン ユニバース
- 6位:PERFECT DAYS
- 7位:窓ぎわのトットちゃん
- 8位:君たちはどう生きるか
- 9位:シン・仮面ライダー
- 10位:首
- 11位:ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー
- 12位:福田村事件
- 13位:リバー、流れないでよ
- 14位:市子
- 15位:正欲
- 16位:名探偵コナン 黒鉄の魚影
- 17位:少女は卒業しない
- 18位:エゴイスト
- 19位:愛にイナズマ
- 20位:キリエのうた
- 21位:THE FIRST SLAM DUNK
- 22位:映画 プリキュアオールスターズF
- 23位:アリスとテレスのまぼろし工場
- 24位:SAND LAND
- 25位:ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい
- 26位:Winny
- 27位:最後まで行く
- 28位:月
- 29位:アンダーカレント
- 30位:北極百貨店のコンシェルジュさん
- 31位:ほつれる
- 32位:戦慄怪奇ワールド コワすぎ!
- 33位:ガールズ & パンツァー 最終章 第4話
- 34位:BAD LANDS バッド・ランズ
- 35位:岸辺露伴ルーヴルへ行く
- 36位:世界の終わりから
- 37位:ミンナのウタ
- 38位:金の国 水の国
- 39位:ケイコ 目を澄ませて
- 40位:劇場版 Psycho-Pass サイコパス Providence
- 41位:ロストケア
- 42位:ちひろさん
- 43位:仕掛人・藤枝梅安
- 44位:駒田蒸留所へようこそ
- 45位:翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~
- 46位:ミステリと言う勿れ
- 47位:春に散る
- 48位:キングダム 運命の炎
- 49位:銀平町シネマブルース
- 50位:劇場版ポールプリンセス!!
- 51位:屋根裏のラジャー
- 52位:君は放課後インソムニア
- 53位:波紋
- 54位:ほかげ
- 55位:かがみの孤城
- 56位:わたしの見ている世界が全て
- 57位:658km、陽子の旅
- 58位:わたしの幸せな結婚
- 59位:アイカツ! 10th Story ~未来へのStarway~
- 60位:劇場版TOKYO MER ~走る緊急救命室~
- 61位:映画すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ
- 62位:そばかす
- 63位:まなみ100%
- 64位:リゾートバイト
- 65位:映画ドラえもん のび太と空の理想郷
- 66位:劇場版 SPY×FAMILY CODE: White
- 67位:せかいのおきく
- 68位:遠いところ
- 69位:1秒先の彼
- 70位:春画先生
- 71位:白鍵と黒鍵の間に
- 72位:先生!口裂け女です!
- 73位:Single8
- 74位:スクロール
- 75位:推しが武道館いってくれたら死ぬ
ここでハッキリ言いますが、『Gメン』が各映画賞で一位を取ったのは明らかに異変です。正当な映画の評価とは大きくかけ離れています。
「組織票」という言葉
今まで何度もあったけど「組織票」を使って映画賞を狙っている人たちは「組織票」という言葉への拒否感が強いです。今年だと『Gメン』ファンたちが「これは組織票ではない」と訴えています。実際、投票を広く呼びかけたわけでも無いので組織票扱いするのは酷かもしれない(本来の組織票はコッソリやるものだけど)。便宜上、私は今後も「組織票」という言葉を使うけど、これはもう組織票というよりも推し活の一環だと思ってます。
今まで何度も書いてきたけど、このような組織票には意味があると思います。『Gメン』で言えば、日本映画で絶大な力を発揮していたジャニーズが関わった映画としては最終作と言っても良い作品です(他にもあるけど)。嵐の後継者と呼ばれながらも空中分解してしまったキンプリメンバー岸の最初の主演作でもあります(『Gメン』は岸のジャニーズ退所一ヶ月前に公開)。この作品が1位を取るのはファン投票としては正しい形だと思っています。
映画の内容の評価とは違う形で映画賞の受賞作が決まることについては、これはもう主催者側の判断に任せるべきです。
映画『Gメン』について
日本映画界に大量に現れる(アメコミ映画並に多い)ことになったイケメン俳優たちの不良ケンカ映画です。私は小沢としおの原作漫画『Gメン』が大好きですが、主演の岸は小沢としお漫画の主人公たち(うるさい、ケンカ強い、頭悪い、友情を大切にするけど軽い、女好きだけどモテない、スケベだけど純情)に驚くほど似ています。
ギャグとアクションの連発な上に他の不良映画よりも「軽さ」を重視していて楽しいです。日本映画はギャグが少ないので『Gメン』のギャグの多さは嬉しいです。原作再現率も高いですが女性観客が感情移入しやすいように、女性視点を多めにしたのは良い原作改変です。
その一方で日本映画の悪習と言っても良い、ただひたすら感情を剥き出しにして大声で叫ぶシーンが何度も繰り返されます。これを「勢いがある」と思うか「ウザい」と思うかは人によりますが、俳優ファン以外にはちょっと厳しいかもしれません。
『Gメン』よりも凄い組織票
追伸。2023年最大級の組織票は『Gメン』ではありません。『劇場版アイドリッシュセブン LIVE 4bit BEYOND THE PERiOD』です。東京アニメアワードフェスティバルのアニメファン賞で30902票も集めて一位になりました(注:TAAFは今年から多重投票を禁止しています)。Web投票だと有効投票数4457人中たった3人しか投票してません。つまり三万人差です。『Gメン』の千人差が可愛く見えます。
はたらく悪役
「弁護士が役に立たないアメリカ映画」というのが話題になっているので、補足説明。訴訟大国のアメリカの弁護士は銭ゲバな職業として有名で嫌われています。弁護士が企業不正に手を貸し、弁護士が市民生活のトラブルを金儲けの手段としているからです。数々の映画で悪役として消費されてきました。
有名なのは『ジュラシック・パーク』第一作の弁護士でしょうか。この弁護士の死に様↓ですがアメリカ公開時ではこのシーンで拍手喝采でした。そして弁護士たちが連名で抗議するという騒動もありました。
www.youtube.com
韓国映画だと「検察官が悪役」というのが多いですが、これも韓国社会で検察が嫌われているからです。フランス映画だと「移民が悪役」というのが多くて、移民に配慮しているアメリカ映画に慣れているとギョッとする描写も多いです。
日本ではアメリカや韓国ほどの職業悪役の極端な傾向はありません。ただ2016年に「地方創生のために東京からやってきた社長が黒幕」という映画が同時に多数作られたことがあります。地方を食い物にする現状を反映していたのでしょう。
他に日本では「ワガママなクライアント」というのが非常に多いです。アメリカだと「ワガママな上司」が非常に多い。どっちも普段困っている存在が可視化されていて面白いです。
私がよく「?」と感じるのは欧米映画で風俗業従事者の扱いが酷いこと。去年の映画で主人公がうっかり娼婦を殺すシーンがあるのですが「何じゃそりゃ」と思いました。殺された人が他のサービス業だったら成立しない展開です。
『窓ぎわのトットちゃん』と南京陥落は関係無い
今回の記事は、この2つの素晴らしいツイート↓をちょっと補足するだけです。
「窓ぎわのトットちゃん」冒頭の提灯のカットを、南京陥落(昭和12年)時のものと解釈されているツイートを散見するが、映画内の時系列より三年ほど前ズレするので、皇紀二千六百年(昭和15年)記念行事の提灯行列と考えるのが自然だと思う。
— おしろい与力 (@oshiroiyoriki) 2023年12月14日
自分も南京だと思っていたけど、東京新聞の記事に皇紀2600年と明記されていました。 pic.twitter.com/raXmyhPLEs
— マヌルねこ (@Der_Manul) 2024年1月14日
検索かけると
『窓ぎわのトットちゃん』のオープニングは南京陥落を描いている
といった要旨の投稿がいくつか出てきますが、前述のツイートの通り南京陥落ではありません。皇紀2600年記念行事のほうです。
ただ間違える人が続出するのは分かります。実は私も映画鑑賞時は
「あ、南京陥落だ*1」
と同じ勘違いしていました。どちらにしろ提灯行列をきちんと描いてくれたのは珍しいですね。
昭和の映画やドラマでヒロインモノでは提灯行列はよく出てきましたが、もう今はほとんど無い描写でしょう。
*1:南京陥落の時の日本では提灯を持って行列を作って奉祝していました。そのために日本中の学校がお休みになりました。
2023年の邦画アニメで一番面白かった作品を決めよう!
今年も始まりました!詳細はリンク先で確認してください。
https://hakaiya.com/houani/notice/2023
- 締め切りは2月19日(月)です。
- X(Twitter)を使って投票するか、このブログのコメント欄に投票してください。
↓これとかコピペして使ってください。
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⑩
#邦アニベストテン2023
投票開始の告知ツイート
今年もこの時期がやってきました!みなさんが面白いと思った2023年の邦画アニメを教えてください!2/19締切です。
— 破壊屋ギッチョ (@hakaiya) 2024年1月27日
2023年は邦アニの公開本数が減った年です。十本投票できる猛者は少ないはず、二本以上投票すれば集計対象になります!
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⑤
⑥
⑦
⑧
⑨
⑩#邦アニベストテン2023
2023年は長編アニメの公開本数がだいぶ減った年です(今年もリストを作って頂いたmohnoさん、ありがとうございます!)。十本投票できる猛者は少ないと思います。今年から新ルールとして
- 二本から集計対象
としたので
「アイドルマスター ミリオンライブの第1幕、第2幕しか観てない!」
という方でもジャンジャン投票してください。
また特定の作品に投票を呼びかける組織票も大歓迎です。
画像は2023年の邦アニのAIコスプレです。
『名探偵コナン』のジン
『ゲゲゲの鬼太郎』の猫娘
『君たちはどう生きるか』の夏子
2023年の映画ベスト100 ネット投票を集計しました
X(Twitter)上のハッシュタグ『#2023年映画ベスト10』を集計しました!有効投票4457名が選んだ2023年最高の映画は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』でした!
1位:ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3
ジェームズ・ガン監督がベスト1を獲得するのは2021年の『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』以来、アベンジャーズなどを描くMCUの映画がベスト1を獲得するのは2019年の『アベンジャーズ/エンドゲーム』以来です。そして本作はGOTGシリーズ3作目で、MCUシリーズ32作目でもあります。ここまで作品数が多いとついていけない人が多そうですが、本作は動物キャラを主役にして、心動かされる悲しいストーリーを主軸にしたのが勝因です。
またジェームズ・ガン監督の「悪趣味で不健全だけど道徳は守る」という絶妙なバランス感覚も、映画ファンにはピッタリきたのだと思います。ちなみにジェームズ・ガン監督はMCUを離脱して、ライバルのDCの共同CEOとなりました。2025年からスーパーマンたちの新シリーズが始まります。
2位:スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース
ベストテンにスパイダーマンが入るのは、もはや毎年恒例。本作は前編で、後編の『スパイダーマン:ビヨンド・ザ・スパイダーバース』が現在製作中です。
アメコミあるあるなのですが
「主人公は親しい人が亡くなることで成長する」
って、それじゃあ親しい人は主人公を成長させるための都合良い生贄じゃん!という
「そこにツッコミ入れてもしょうがないだろ*1」
にツッコミ入れた衝撃的な展開です。マルチバース(並行宇宙)という世界観を、作品の設定を根本から覆すために使うというのが斬新です。スパイダーマンが無限に登場し続ける後半は圧巻です。
3位:ゴジラ-1.0
我々日本人には「ズタボロの戦後から復興した」という経験があるので「復興に希望を託す」という敗戦国かつ災害国ならではの映画が多いのですが、本作は「戦後復興が始まった日本をゴジラが破壊する」というキャッチコピー通りの「無から負へ」の展開。30年以上前の『ゴジラvsキングギドラ(1991)』の「日本が強すぎてアメリカ・ソ連を超えるようになる」というトンデモ設定*2を考えると、まさに日本がマイナスの時代に突入したことを反映していると言えます。
しかし本作は日本映画史上初の「全米NO.1大ヒット!」となり、世界中で大絶賛を受けその評価は今も拡大中、マイナスどころか超プラスです。
「全米NO.1大ヒット!」
このフレーズを日本映画に使う日が来るとは思いませんでした。
4位:aftersun/アフターサン
イギリスの小作品が、まさかの四位!TOP3が全てフランチャイズ映画なので、裏ベスト一位は本作だと思います。父親と娘の過去の旅行を描いた本作は、意味の違う三つの映像が組み合わさった作品です。
- 家庭用カメラ*3の映像→過去に実際に撮影した娘と父の客観的な映像。
- 普通の映画フィルムの映像→娘が父を思い出して描く補完的な記憶。
- レイヴの映像→娘が父に会おうとする妄想。
観客はこの三つの映像を観ることで、父親への追憶を体験するという映画です。
毎年似たようなことを書いていますが、今は動画配信の時代なので「映画鑑賞=体験に金を払う行為」になっています。観客に追憶を擬似的に体験させる本作は、まさに現代の映画です。
5位:ジョン・ウィック:コンセクエンス
毎回高順位ながらベストテンに入らなかった『ジョン・ウィック』シリーズの最新作がついにランクイン!
ミッション・インポッシブルと同じで新作が出るたびに「一体どこまでパワーアップし続けるんだ?もう無理だろ?」と鑑賞前の観客を不安に落とし、「まさか期待を超えるとは…」と鑑賞後の観客を呆然とさせてきたシリーズです。
日本最強のアクションスター:真田広之と宇宙最強のアクションスター:ドニー・イェンが対決するというアクション映画ファンにはたまらないキャスティングも最高です。
6位:怪物
今のSNSはちょっと事件が起きれば私達は自分の正しさを信じて「◯◯が悪い!◯◯するべきだった!」と悪い何かを攻撃しています。それが正しいから。
本作はこのような攻撃に晒される側を視点を変えながら描くことで、私達の持つ正義感がいかに人々を傷つけるかを描きます。SNSで正しい発言をしている皆さんを対象とした映画です。絶対に出来ないミステリーのトリックとして有名な「観客が犯人だった」ですが、本作は「あなたも加害者」ということを疑似体験させてきます。
7位:BLUE GIANT
邦画アニメが大豊作と呼ばれた2023年で邦画アニメを制したのは、他アニメに比べると知名度でずいぶんと劣る『BLUE GIANT』です。
秀才型のライバルの前に天才型の主人公が現れる。ライバルは努力によって主人公に立ち向かうが、主人公はさらなる才能を開花していく。という日本のマンガが得意とする成長モノのパターンがあり、本作はその変形版です。
音楽映画にとって最大の難問である「心奪われる演奏」の表現が、アニメなら想像以上の形で実現できるというアニメの特性を活かした映画です。
8位:鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎
戦争帰りで今は血液銀行に勤める会社員:水木が、地方の村で起きる犬神家の一族チックな殺人事件の謎に挑むというミステリー。そこに謎の妖怪男が現れて『ゲゲゲの鬼太郎』へと繋がっていく。
『ゲゲゲの鬼太郎』の原点的存在で『鬼太郎の誕生』という怪奇漫画の大傑作があります。この『鬼太郎の誕生』のさらに前日譚が本作『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』!という説明だとピンと来ない人も多いでしょうね。ここは映画サイトなのでスター・ウォーズで例えます。『ローグ・ワン』のラストシーンは1977年のスター・ウォーズ第一作のオープニングに繋がりますが、アレと同じことをやってのけたのです。戦地帰りの水木しげるだからこそ彼がマンガで描いてきた日本の闇を取り込んだ怪作です。
9位:エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
今は新旧スパイダーマンや新旧バットマンが一つの映画に出演する凄い時代です。こんな企画が通るのも世間に「マルチバース(並行宇宙)」という概念が流行っているからです。そのマルチバースで「普通のおばさん」が戦うのが本作『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(全てのこと、全ての場所が、一つになり)』です。
平行宇宙で別の人生を歩む自分から、異世界転生モノのように能力を手に入れる。例えば視界を奪われたら、失明した人生を歩む並行宇宙の自分の力が助けてくれる。まさに何でもアリの大冒険ですが「人々は色んな人生を歩んでいる」という当たり前のことをテーマにした普遍性のある作品です。
10位:ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り
伝説的TRPG、というかあらゆるRPGの原点である『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の映画化です。2000年にも『ダンジョン&ドラゴン』のタイトルで映画化されているのですが、アレは歴史的大駄作です。今回の映画化が凄いのは大失敗作の前作と同じ路線だということ!泥棒を主人公にし反権力要素を強め、古臭いファンタジー世界とは真逆の世間ウケを狙ったギャグをてんこもり。前作から大きく改善したのは人種的多様性かな。
演出も演技もセリフも、とにかく楽しさを重視し、観客の意表を付き続けるサービス精神に溢れた娯楽映画です。
Top 10 Movies of 2023 in Japan
- Guardians of the Galaxy Vol. 3
- Spider-Man: Across the Spider-Verse
- Godzilla Minus One
- Aftersun
- John Wick: Chapter 4
- Monster
- BLUE GIANT
- Kitarō Tanjō: Gegege no Nazo
- Everything Everywhere All at Once
- Dungeons & Dragons: Honor Among Thieves
2023年日本十大电影
- 星際異攻隊3
- 蜘蛛俠:飛躍蜘蛛宇宙
- 哥吉拉-1.0
- 晒后假日
- 捍衛任務4
- 怪物
- BLUE GIANT 藍色巨星
- 鬼太郎誕生 咯咯咯之謎
- 媽的多重宇宙
- 龍與地下城:盜賊榮耀
2023年の映画ベスト100
順位 | タイトル | 総合得点 |
1 位 | ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3 | 8778.5 |
2 位 | スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース | 8421.0 |
3 位 | ゴジラ-1.0 | 7069.5 |
4 位 | aftersun/アフターサン | 5562.5 |
5 位 | ジョン・ウィック:コンセクエンス | 5242.5 |
6 位 | 怪物 | 4862.5 |
7 位 | BLUE GIANT | 4576.5 |
8 位 | 鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 | 4246.5 |
9 位 | エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス | 4192.5 |
10 位 | ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り | 3672.0 |
11 位 | フェイブルマンズ | 3658.0 |
12 位 | キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン | 3560.0 |
13 位 | TAR/ター | 3457.0 |
14 位 | グリッドマン ユニバース | 3365.5 |
15 位 | PERFECT DAYS | 3316.5 |
16 位 | イニシェリン島の精霊 | 3162.5 |
17 位 | グランツーリスモ | 3145.5 |
18 位 | ザ・フラッシュ | 2881.0 |
19 位 | ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー | 2852.5 |
20 位 | バービー | 2837.5 |
21 位 | 窓ぎわのトットちゃん | 2802.5 |
22 位 | 君たちはどう生きるか | 2521.0 |
23 位 | シン・仮面ライダー | 2322.5 |
24 位 | ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE | 2269.5 |
25 位 | バビロン | 2110.0 |
26 位 | 首 | 2062.5 |
27 位 | イコライザーTHE FINAL | 1962.5 |
28 位 | ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー | 1936.5 |
29 位 | 福田村事件 | 1926.5 |
30 位 | ザ・ホエール | 1918.0 |
31 位 | AIR/エア | 1819.0 |
32 位 | Pearl パール | 1790.0 |
33 位 | 別れる決心 | 1789.0 |
34 位 | マイ・エレメント | 1731.5 |
35 位 | ベネデッタ | 1683.0 |
36 位 | リバー、流れないでよ | 1668.5 |
37 位 | 市子 | 1599.0 |
38 位 | ヴァチカンのエクソシスト | 1512.0 |
39 位 | 枯れ葉 | 1465.0 |
40 位 | ザ・クリエイター 創造者 | 1413.5 |
41 位 | CLOSE/クロース | 1373.0 |
42 位 | コンパートメントNo.6 | 1329.0 |
43 位 | 正欲 | 1311.5 |
44 位 | ザ・キラー | 1283.0 |
45 位 | 名探偵コナン 黒鉄の魚影 | 1226.0 |
46 位 | SHE SAID/シー・セッド その名を暴け | 1213.5 |
47 位 | 逆転のトライアングル | 1197.5 |
48 位 | 少女は卒業しない | 1195.0 |
48 位 | ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック! | 1195.0 |
50 位 | エゴイスト | 1183.5 |
51 位 | ウォンカとチョコレート工場のはじまり | 1162.5 |
52 位 | イノセンツ | 1161.5 |
53 位 | RRR | 1097.0 |
54 位 | 愛にイナズマ | 1096.5 |
55 位 | エンパイア・オブ・ライト | 1088.0 |
56 位 | キリエのうた | 1052.0 |
57 位 | 長ぐつをはいたネコと9つの命 | 1012.0 |
58 位 | 対峙 | 985.5 |
59 位 | レッド・ロケット | 973.0 |
60 位 | アステロイド・シティ | 970.5 |
61 位 | オオカミの家 | 942.5 |
62 位 | THE FIRST SLAM DUNK | 909.5 |
63 位 | オオカミ狩り | 881.0 |
64 位 | ファースト・カウ | 880.5 |
65 位 | TALK TO ME トーク・トゥ・ミー | 856.0 |
66 位 | ウーマン・トーキング 私たちの選択 | 853.5 |
67 位 | 映画 プリキュアオールスターズF | 849.0 |
68 位 | トランスフォーマー/ビースト覚醒 | 848.0 |
69 位 | search/#サーチ2 | 846.0 |
70 位 | ワイルド・スピード/ファイヤーブースト | 817.0 |
71 位 | 聖地には蜘蛛が巣を張る | 802.5 |
72 位 | M3GAN/ミーガン | 793.0 |
73 位 | FALL/フォール | 768.5 |
74 位 | SISU/シス 不死身の男 | 751.0 |
74 位 | いつかの君にもわかること | 751.0 |
76 位 | アリスとテレスのまぼろし工場 | 742.0 |
77 位 | SAND LAND | 739.0 |
78 位 | インディ・ジョーンズと運命のダイヤル | 722.0 |
79 位 | マッシブ・タレント | 721.5 |
80 位 | カード・カウンター | 719.5 |
81 位 | ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい | 704.0 |
82 位 | Winny | 698.0 |
83 位 | ハント | 692.5 |
84 位 | 最後まで行く | 685.0 |
85 位 | あしたの少女 | 676.5 |
86 位 | EO イーオー | 671.5 |
87 位 | 月 | 668.0 |
88 位 | 雄獅少年/ライオン少年 | 662.5 |
89 位 | バイオレント・ナイト | 648.0 |
90 位 | MEG ザ・モンスターズ2 | 615.5 |
91 位 | ボーンズ アンド オール | 608.0 |
92 位 | 帰れない山 | 589.0 |
93 位 | アンダーカレント | 583.0 |
94 位 | マーベルズ | 582.0 |
95 位 | 北極百貨店のコンシェルジュさん | 579.0 |
96 位 | オットーという男 | 573.0 |
97 位 | ほつれる | 558.0 |
98 位 | パリタクシー | 557.5 |
99 位 | バーナデット ママは行方不明 | 552.0 |
100 位 | 大いなる自由 | 525.0 |
解説
日本映画、2023も強し!
今回も日本映画が強くて嬉しいです。ゴジラ、ゼルダ、スーパーマリオ、井上尚弥、大谷翔平、YOASOBI。そして数々のマンガとアニメ!2023年は衰退する日本の現状とは裏腹に、日本のコンテンツが世界中で目覚ましい活躍をした年です。しかしこれがいつまで続くかは分かりません。2023年のアメリカ映画はストの影響で多くの作品が製作延期になっていましたが、これから意欲的な新作が次々に公開されます。日本が得意なアニメやゲームは中国が投資に力を入れているコンテンツです。数年前まで日本映画を圧倒していた韓国映画はあっという間に不振に陥っていますが*4、またすぐに逆転される可能性はあるでしょう。
何にせよ、これからも日本は世界中のコンテンツが楽しめる良い国であり続けてほしいです。
フランチャイズ映画の明暗
TOP5のうち『aftersun/アフターサン』以外の四本がフランチャイズ映画(シリーズもの)です*5。フランチャイズ映画は最高!というわけでもなくて、今まで絶大な人気を誇っていたフランチャイズ映画の最新作が失敗していったのも2023年の特徴です。今のフランチャイズ映画は良くも悪くも資本主義を象徴する巨大システムになっており、批判意見も毎年増え続けています。
でもこれって過去にも同じ状況があって、70年代末から始まったブロックバスター映画(都市を破壊するような大ヒット映画)とか90年代のメガバジェット映画(製作費が1億ドルを超える映画、別名ビッグバジェット)とかありました。そして飽和状態となったハリウッド大作映画に小作品が挑んで勝利する、という歴史を繰り返してきました。だからこそ映画は面白いのです。そういえば日本のコンテンツが世界でウケている理由の一つとして、アメコミ疲れがあるという海外批評がありました。
アメリカ映画強し!
前述の通り、アメリカ映画はストの影響で大きく失速したはずですし、アメリカ映画が日本の興行で苦戦する状況も年々酷くなってきましたが、それでも傑作を連発して多くの映画がTOP100にランクイン。特に11位『フェイブルマンズ』は「映画は夢である」という忘れかけていたことを再確認させ、12位『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』はアメリカの負の歴史を暴き、13位『TAR/ター』は業界内の権力を描くというジャニーズ&吉本問題に直面した日本にピッタリという作品。非フランチャイズのこれらから、相変わらずのアメリカ映画のパワーを感じます。
賛否両論
このランキングのあるある現象の「本国で評判悪い映画がなぜか高評価になる」について。
フランチャイズ映画
- マーベルズ
- ワイルド・スピード/ファイヤーブースト
- インディ・ジョーンズと運命のダイヤル
といったフランチャイズ映画の最新作は本国で叩かれたにも関わらずTOP100に入りました。フランチャイズ映画は過剰に叩かれる側面があるため、公開時のバッシングとファン達の評価が正反対なのはよくあります。
日本映画
むしろ日本映画の
- シン・仮面ライダー
- 首
- 君たちはどう生きるか
が公開時には戸惑いの声が多かったにも関わらずTOP30に入っています。映画における「賛否両論」が以前のような単純な状況ではないという事ですね。
ディズニー
製作体制の見直しを発表するほど苦境に陥ったディズニーは『マイ・エレメント』が34位と好調で、『ウィッシュ』『リトル・マーメイド』も130位代とTOP100圏外。それでも本国の評判の悪さに比べればまあまあといった順位です。『ホーンテッドマンション』は233位でした。
マルチバース
2023年のキーワードでもあった「マルチバース」という概念に取り組んで盛大に失敗した『ザ・フラッシュ』は18位。劇中のマルチバースネタは私個人の感想ですが、ここ数年の映画体験の中でも最大級の衝撃を受けました。あの大失敗扱いには悔しい思いをしていたので、この高順位は嬉しいです。
奮わなかった映画
日本映画の大作の『沈黙の艦隊』『レジェンド&バタフライ』『東京リベンジャーズ2』など、どれも300位前後でした。 『レジェンド&バタフライ』は豪華すぎる撮影規模や戦国時代の残虐さから逃げない真面目さなど、個人的には高く評価している映画です。ただジャニーズ問題もあって数年後には「何だったんだあの映画」みたいな扱いになりそうです。また興行収入が50億前後の大ヒットとなった『ミステリと言う勿れ』『キングダム 運命の炎』は130位代、『劇場版TOKYO MER ~走る緊急救命室~』は206位でした。ここに挙げた日本映画たちはどれも大作で良作ですが、世間でヒットするだけではこのランキングには載らない厳しさも感じます。
洋画ではシリーズ最高の大ヒットとなり、シリーズ第四弾かつフランチャイズ10作目の製作が決まっている『クリード 過去の逆襲』が290位と意外すぎる低順位でした。
非英語の外国映画
アキ・カウリスマキの影響か北欧系が上位に来ました。
- 別れる決心(韓国)
- 枯れ葉(フィンランド)
- コンパートメントNo.6(フィンランド)
- イノセンツ(ノルウェー)
- オオカミの家(チリ)
『逆転のトライアングル』はスウェーデン映画ですが、英語なので除外。英米合作なので除外しましたが、イギリス映画(aftersun/アフターサン、イニシェリン島の精霊)が好調だったのも2023年の特徴です。
雑ネタ
ブルックリンまで眠らない
2023年はビースティ・ボーイズの超名曲『No Sleep Till Brooklyn』が2つの超ヒット映画
- ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3
- ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー
で使われているのが印象的でした。歌詞の意味は「本拠地であるブルックリンに辿り着くまでは、眠らずに大暴れしながら移動するぜ!」という感じ、映画本編でもその意図で使われています。
殺し屋モノ
2015年頃はスパイ映画が人気でしたが、ここ数年は殺し屋映画が増えています。『ジョン・ウィック:コンセクエンス』は「殺し屋が大集合して真田広之のいる日本で大暴れ」という、2022年の『ブレット・トレイン』と同じ系統ですね。『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』も29位と高順位でしたし、もう「日本が治安良いのは殺し屋たちが悪人を殺しているから」というのを世界共通の設定にすれば良いと思います。あ、それだとフィリピンのほうがリアルか。
集計エピソード
集計の苦労
パーフェクト問題
「パーフェクト」という単語を持つ上に文字列の一致率が高い映画が3本あったため、類似後検索機能が上手く判断できなかったです。他に「キングダム」という映画が四本あるのがネックでした。
- パーフェクト・ドライバー
- パーフェクト・デイズ
- パーフェクト・ブルー(去年リバイバル公開された)
ター問題
「ター」という文字列だけで投票されると、類似後検索機能が他の映画と区別がつかない問題がありました。「ター」の検算が一番大変でした。
表記揺れ
表記揺れが一番多い映画は『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』でした。略称が
- ATS派
- ATSV派
の二種類に分かれてました。
誤字だ
無から負へ、負から少数へ
誤字が多い映画はブッチギリで『ゴジラ -1.0』です。
- 正:ゴジラ -1.0
- 誤:ゴジラ -0.1
「-0.1」だとゴジラの破壊力が全然大したことない印象を受けますね。『ゴジラ -0.1』と書く人が多すぎるので「そういうパロディ映画があるのか?」と疑ったほどです。
正解はコンセクエンス
二番目に誤字が多い映画は『ジョン・ウィック:コンセクエンス』でした。↓の画像は全部誤字です。でも難しいよね、コンセクエンスって。
忘れられた人気映画
『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』を
- インディ・ジョーンズ5
と書く人が多かったのですが、
- インディ・ジョーンズ4
と書く人も数名いました。『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』はシリーズ第五弾です。シリーズ第四弾はみんなが忘れている『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』ですぜ。
イーロン・マスク問題
当初はTiwtterAPIを使って投稿者アカウントの人気度を分析して
「映画沼アカウント千名が選ぶ!」
と集計者を千名だけに絞る予定で機能も開発済みでした。ところがイーロン・マスクのせいでAPIが使えなくなったので、この企画は断念。さらにAPIが使えないのでツイートの自動取得も出来なくなり、Togetter経由で集計しました。
得点調整
今回はTOP100に絡む得点調整は無しです。
有効投票数
この手の企画は「有効投票数が多いほど、知名度が高い作品が有利になる、でも有効投票数は一人でも増やしたい」というジレンマがあります。だからこそ「有効投票数を千人に限定する!」という機能を開発したのですが断念。私のところの企画はもう逆に「有効投票数をとことん増やす!」という方向に舵を切りました(検算がすごく大変ですが)。ですから私以外の2023年ベスト企画も是非チェックしてください。
最後に
Jsonデータ
集計用に作ったJsonです。類似企画を実施する方、是非ご活用ください。
次回は邦画アニメ!
2023年は邦画アニメがTOP25に五本も入るという邦アニ大豊作の年でしたが、これは映画ファンが選んだランキングです。別途邦画アニメのベストを決める邦アニベストテンが現在準備中です。邦アニを三本以上観た方は是非参加してください。去年は一位と二位のアニメが1点差という衝撃の結末でした。
映画『ナポレオン』の補足説明
ナポレオンのタイトルまとめ
『ナポレオン』という作品が多すぎる上に改題も多いので、今後の私の人生では下記のように表現します。
- 『ナポレオン -獅子の時代-』『ナポレオン -覇道進撃-』→長谷川ナポレオン
- 『エロイカ』『栄光のナポレオン-エロイカ』→池田ナポレオン
- 2023年の映画『ナポレオン』→リドスコナポレオン
今回はリドスコナポレオンの補足説明です。
黒人の将軍は三銃士の父親
「もしかして」と思ってX検索しましたが、いるわいるわ。黒人の将軍がポリコレ的配慮だと思い込んでいる人たちが↓
黒人の将軍はハイチ出身のデュマ将軍です。エジプト遠征に参加していたので、映画に出さないほうが不自然です。*1
日本ではデュマ将軍の息子が書いた小説『三銃士』や『巌窟王(モンテ・クリスト伯)』が有名でしょう。ちなみに画像のようなツイートへの批判で「デュマ将軍を知らないなんて、これだから日本人は…」みたいのも複数ありましたが、デュマ将軍をポリコレ配慮だと思い込む現象は海外でも起きています。
デュマ将軍を知らないのはしょうがないと思う。ただ黒人を見ると「ポリコレ!」と反応するのは、控えたほうがいいです。
ショタ美少年はその後も登場している
映画の序盤でナポレオンに「父のサーベルを返してください」と訴えるジョゼフィーヌの息子の美少年。サーベルの返却のお礼をきっかけにジョゼフィーヌとナポレオンが急接近する史実です。あの少年はウジェーヌという名前で、劇中では青年となってその後も登場し続けています。ジョゼフィーヌが登場するシーンで、若い男性と女性がセットで登場しますが、男性がウジェーヌ(ジョゼフィーヌの息子)で女性がオルタンス(ジョゼフィーヌの娘)です。ジョゼフィーヌがナポレオンと結婚したことにより、ウジェーヌはナポレオンの養子になります。
史実ではエジプト遠征からロシア遠征まで参加するバリバリの軍人です。またウジェーヌの血筋はノルウェー、スウェーデン、デンマーク、ギリシャの各王家の先祖です。
ラストシーンのワインに蝿がいる意味
あれは比喩的な表現ではなくて(たぶん)、ナポレオンがセントヘレナ島で腐ったワインを飲まされていたという史実です。画面的に「腐ったワイン」を表現するのが難しいので、蝿を使って表現したのだと思います。
拳銃自殺に失敗するのはロベスピエール
映画の序盤で拳銃自殺に失敗するのはロベスピエールです。ロベスピエールはフランス革命後に権力を握り、恐怖政治(テルール)で大量の死刑を実行。「テロ」の語源となりました。フランス史的には超重要人物なのですが、ナポレオンとロベスピエールは一度も会ってないので、ナポレオンを描くときにロベスピエールを出すかどうかは判断が分かれるところです。
長谷川ナポレオンではロベスピエールは重要人物ですが、池田ナポレオンではほぼ出てきません。リドスコナポレオンがロベスピエールを出したのは意外でした。逆にリドスコナポレオンはフーシェの出番がほぼありません。
序盤の謎の女性の正体はジョゼフィーヌ
ロベスピエールが死んだあとに監獄から人々が解放されるシーン。一人だけ顔が見えない謎の女性がいますが、おそらくジョゼフィーヌです。なぜ顔を隠す演出にしたのかは不明です。
史実ではジョゼフィーヌは恐怖政治によって投獄されており死刑寸前でしたが、監獄の中でも男性と恋愛関係になっていました。
浮気を勧めるのはナポレオンの母親
ジョゼフィーヌに子供が出来ないため、ナポレオンに浮気相手をあてがうのはナポレオンの母親です。史実ではナポレオンの妹が浮気相手を調達しましたが、登場人物を減らして話をシンプルにするための良い改変です。
戴冠式で絵を描いているのはダヴィッド
戴冠式で絵を描いているのはジャック=ルイ・ダヴィッドです。有名な絵も多いです。
年金は支払われてない
退位したナポレオンが年金について説明されるシーンがあります。が、史実ではこの年金は支払われませんでした。そのため資金難(兵士の給料やエルバ島の開発資金が足りなくなった)に陥ったことが、ナポレオンの帰還の大きな原因です。
太った王様はルイ18世
後半で太った王様が出てきますが、これが退位したナポレオンに代わってフランスの王となったルイ18世です。フランス革命で王政を打倒したのにルイ18世が復活してしまったことでパリ市民が怒り、これもナポレオンの帰還の要因となります。
おまけ:AIナポレオン
AIで女性のナポレオンを生成してみました。
ナポレオンは女性だった!ジョゼフィーヌと子供が出来なかったのは女性だから。背が低くて渾名が小伍長だったのは女性だから。喋り方が変だったのは女声を隠すため。というフィクションがあったら、史実と違っても余裕で受け入れますよね。
*1:ナポレオンの戴冠式に出ていた黒人のほうが謎で(戴冠式の時はデュマは失脚していた)、そっちは議論になっている